利央/あなたに白旗



「利央、なんで私が怒ってるかわかる?」

「はい」

「甲子園に連れて行ってくれるっていったじゃない」

「はい」

「3年待ったんだよ?」

「……ハイ」




この押し問答が約10分程続けられている。

先日、3度目の甲子園へ行くための地区予選が終わってしまった。
一年目はベンチで補欠。
二年目はスタメンとして準決勝。
三年目は決勝。


あと、もう少しだったのに。



名無しとは中学からの付き合いで、必ず甲子園に連れて行くと約束していた。


自分のベッドに座り、腕と脚を組んで不機嫌そうに眉間を寄せている女王様。
その下に正座して座らさせられている俺。
チラッと目線を上に上げると、綺麗に引き締まった脚が目に入る。
怒られているにもかかわらず、ちょっと欲情してしまった。


「来年は大学生で別々になっちゃうし」

「…ごめん」

「あ〜あ、あのアルプススタンドに座りたかったなぁ」

「…、ごめん」

「夢、叶わなかった」

「……本当に、ごめんなさい」


あの時。
最後の試合の9回の裏を思い出すと、今でも泣きそうになる。
それもそうだが、名無しの夢を叶えてあげられなかったことにも悲しくなる。

「じゃあ、次の夢は叶えてくれる?」


ちょこん、と俺の横に座り体を寄せ甘えるように上目遣いで俺を見上げる。


「利央にしかできないことよ?」

「っ、うん!絶対!!なんでもする」


次こそは、名無しの夢を叶えてあげたい。
俺にできることなら、なんでもしたい。
名無しの笑った顔がみたい。


「いい?よく聞いてね」

「っうん!!」


ずっと、私と一緒にいて。


それは俺の夢でもある。


それなら、必ず俺にでも叶えられそうだ。





あなたに白旗

END

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