重たすぎた愛に沈んだまま



ふらふらと宛もなくさ迷う俺を受け止める様に遮った小柄な女。

「見つけた」
「…誰だアンタ、」

言い終わらないうちにギュッと抱き着かれたら、その柔らかさと鼻を擽る甘い匂いに一瞬思考が停止した。

(いきなり何なんだ)

特に悪意は無さそうだが、その女が持つ独特の雰囲気に興味が湧いて次の言葉を黙って聞く。

「赤木しげるくんでしょ?私、貴方を探していたの」

にこやかに微笑む女は名をなまえといい、歳は18。透き通る様な白い肌と対照的な漆黒の艶髪がさらりと肩を流れ落ちて、しげるを見つめる可愛らしい瞳は燦々と輝きを放つ。

「一緒に居てもいい?」
「…好きにすれば」

なまえは手を差し出すと"繋いで"と言った。仕方なく手を取って緩やかに握ると恥ずかしそうに頬を染めて笑う。初めて会ったのに不思議と嫌な気はしなくて、自分でも驚くほど彼女を受け入れていた。

これがなまえとの出逢い。

「5つも年上なのに子供っぽいな」
「そう?じゃあ試してみてよ」

"身体は大人だから"と、いとも容易く自身を差し出す態度に戸惑った。会ってまだ数日しか経ってないのに、目的は何なのだろうか。金か?

「お金?ふふ…そんなものはいらない。私は、ただ」

貴方が欲しいだけ

「じゃあ、なまえさんが教えてくれるなら」

潤んだ瞳は白髪の少年を映す。熱を帯びた身体が触れて重なると溶け合ってひとつになったように感じた。

***

6年後

変わらない彼女と大人になった自分。

目を離すといつの間にか居なくなるから片時も気が抜けずにいる。そして気紛れに知らない男に身を委ねる彼女の事を考えるだけで腹の底がぐらぐらと煮えたぎる思いだった。これは所謂嫉妬というものなのか。一度聞いてみたら「妬いてくれるアカギくんが見たいから」と笑うその笑顔に骨抜きにされてしまう。

この6年間の年月で
俺は身も心も囚われてしまっていた

「なまえさんは俺がいらないんだ?」
「どうしたの急に」
「もう他の男の所に行くなよ」
「…っ、可愛い…妬きもちやいてくれてるの?」

アカギくん、大好き

蕩けるような口づけで俺を縛りつける。ずっと変わらないなまえの若さ特有の瑞々しく、きめ細やかで吸い付くような肌が触れて火傷しそうに熱い。

「なまえさん、名前で…呼んで」
「しげる、くん」
「もっと」
「しげる、しげる、あっ、ん」
「愛してるって言ってよ」
「あ、愛してる…っ」

もっと、もっと、俺を求めて。

「絶対離さないから」

ああ、愛しさに押し潰されそうだ




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