歪んだ停止線
長男アカギと次男しげるのお話
※越境設定/しげる微裏
***
病に冒されている事を知りつつ夫婦になった。けれど運命は変わらず、遺されたのは年若い妻と血の繋がらない二人の息子。
「なまえ元気だしなよ」
「俺達がいるじゃない」
遺影を見つめるなまえはいつも寂しそうに笑う。わかっていても簡単に割り切れないのは当たり前だと思う。
「でも、やっぱり寂しい…」
彼の温もりがどんどん記憶から薄れていってしまう
「遠慮しないで、甘えなよ」
アカギは自分より幾らか年上の"義母"と呼ぶのにも気が引ける彼女を不憫に思った。同時に親父の事なんか早く忘れて新しい人生をやり直せば良いのに、とも。
***
「なまえさん」
食事の支度をするなまえの後ろ姿に抱きつくしげるが子猫のように甘えてくる。その仕草が可愛くて思わず笑みがこぼれた。
「しげるくん、もうちょっとでご飯できるから」
待っててね、と柔らかい白髪を優しく撫でるなまえの指先が髪を梳く度に擽ったくてぞわぞわする。そのままぎゅっと抱き締めるとそのふくよかな胸に顔をうずめた。
「どうしたの?学校で何かあった?」
心配そうに聞いてくるなまえにしげるは心の中で舌を出した。この人は何て無防備なのだろうか
「何もないけど…少し、甘えたくなった、だけ」
すりすりと頬を寄せてその感触を確かめたら背中に回っていた手が徐に胸へと伸びる。
「あ、っ」
手のひらがまろやかな膨らみを揉みしだくと自然と反応してしまい、艶やかな"女"の声が飛び出した事に自分でも驚いてしまった。
「フフ…なまえさん、可愛い声だね」
「や、ダメだったら」
「何で?息子が母親に甘えちゃいけないの」
「そうじゃ、なくて…ん、ッ」
エプロンの肩紐を外して薄いカットソーを捲るとレースとリボンのついた可愛らしい下着が露になった。
「しげるくん!やめて、お願い」
「なまえさんは俺のこと嫌い?」
「好きよ、だけど…こんな」
キッチンのシンクに凭れた彼女の乱れた姿に堪らなく興奮して白磁のような肌にちゅう、と吸いつくと赤い痕を残す。
(どうしてこんな事に…)
なまえはこんな状態にありながらも、もしかしたら母親の愛情が欲しくて確かめたいだけなのかもしれないと己の邪な思考を否定した。いや、そうであって欲しいと願った。
「俺の、って印つけた」
無邪気に笑うしげるが何を考えているのかなまえにはわからない。でもこれだけはわかる。このまま行けば、きっとお互い不幸になるだけだと。
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