前半の研修が折り返した頃、やっと期限に余裕で間に合うようになってきた切原くんのレポートというか、報告書を読んでいた時に聞こえたコロコロ〜という音と椅子の軋む音にそちらを向けば、


「今日飲みいきません?」

「おっさんくさいよ、その仕草」


 思わずつっこませる仕草をしていた。
 クイッと笑顔でおちょこを傾ける仕草をして見せるのは、キャスター付きの椅子ごとコロコロ〜っとわたしの横にやって来たコイツは宍戸。彼は一期下の隣の班に属する後輩で、席は私の斜め左後ろ辺り。飲みに誘う割にコイツ下戸なんだもん。そして、誘うときは敬語になるのである意味分かりやすい。


「いや、センパイがザルなだけっしょ、俺普通だし」

「私下戸な方だよ。同期のやつとか渡邉さんみたいな人をザルって言うんだよ」

「あの人たちはザル通り越してワクだろ…!」


 基準がちげえ…!と頭を抱えた宍戸はその直後、背後からすぱんと丸めた何かで叩かれた。叩いた本人を見上げれば、更に隣の班の一期下の真田で溜め息混じりに宍戸を見下ろしていた。あー何か、宍戸は切原くんと白石くんで、真田は鳳くんに近いかもしれないなぁなんて思う。因みにこの真田は、警察の方に3年間一般企業に勤めてこいと放り出されて、ここの会社に来た人。入社当初は私と同じ渡邉班にいて、渡邉さんが研修担当してたんだけど、その時も多忙だったから私に投げられたこともあったので…。4割くらいは面倒を見てた気がする。


「いってーな!」

「樋野さんの邪魔をするな」

「邪魔してねーし!あ、そうだ、真田も呑みに行かねえか?今日」

「私まだ承諾の返事してないんだけど」

「お前、また潰れる気か」

「お前が潰すんだろうが!ザルなの自覚しろよ!辛口の日本酒ばっか呑みやがって…!」

「黒霧島飲みたいわ」

「樋野さんは見た目に反して酒豪だな、本当に」

「黒霧島くらい軽くない?」

「ってか飲む気満々じゃん。じゃー今日飲み決定!」


 溜め息をつきながら不在の人の席から椅子を近くに持ってきて腰かける真田から丸められた書類を受け取る。相変わらず仕事が早くて助かる。それに字も綺麗だし。…言い回しは時々古めかしいけども。なんて思いながら捲っていれば、我らが渡邉さんが帰社してきた。


「おー、相変わらず仲ええなぁ、凸凹トリオ」

「あっお帰りなさい、渡邉さん!」

「アメちゃんあるか?スルメ切れてしもうてなぁ」

「あります!はい、どうぞ!」


 すかさずコーラ味のチュッパチャップスを差し出せば、ありがとぉと笑って受け取ってくれる。やばい、相変わらずかっこいいとご機嫌になれば、後輩二人からスルメなのに?と小声で突っ込まれる。
 何でこの二人は渡邉さんのかっこよさがわからないのかな、よし。今夜の飲みは渡邉さんの良さについて語ってあげよう。


「宍戸!!とっとと報告書出せ!!」

「げっ…はい!今出します!」

「…またか」

「大変だね、真田も」


 やっぱり宍戸は切原くん白石くんに似てるかもしれない。



2014/08/15 みっこん


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