夜の兎 | ナノ


▼ 4

 お茶請け。


「夜野」


「ん」


 飲み物あるか、と尋ねる前に出てくる一杯の湯呑み。


 文書管理。


「夜野」


「はい、これ」


 資料取ってくれ、と言う前に出てくる資料の束。しかも、欲しかったものと、その関連のもの。


 情報収集。


「……」


「ん、これ敵情報。今、先生が追ってるのと似てない?」


 言う前に出てくる資料。たしかに追っていた敵の情報に近い。一体どこで仕入れてきたのか。相澤は疑問に思いながらも聞けばきっと面倒なことになりそうだという予感を感じ、ぐっと押し黙った。


 そして戦闘。
 

 バキィッ


「イレイザーさん、探してたのこいつだよね」


「ああ」


 ぐったりと地面に寝そべる男の後ろ襟を掴み上げる名前。それはここ数日追っていた敵だった。


 メディア対応。


「あの!!今日はオールマイトは学校にいらっしゃるんですか!!というかあなた本当にヒーローですか!?」


「……彼はいません」


 相澤の隣から一歩前に出た名前。


「ごめんね。今日はオールマイトお休みなんだって。この人もこれでも凄いヒーローなんだけどなぁ。あと、ここ学校だよ。勉強の邪魔になるから、学校には来ないでネ。次からは自分たちでオールマイトに直接取材許可取ってくれる?」
 

「なっ!」


「お願いね」


 口を挟む隙を与えずにこやかに笑った名前はそう言って記者の手をぐっと握った。


「だっっ、力つよっ」


 そして崩れ落ちる記者。



 ――ーーーーーーーーー


 ということがあり職員室では特別にスクールインターンをしている名前の話で持ちきりだった。


「相澤くんが不機嫌になったのを察してフォロー……。名前さん美人だし、手握ってお願いされちゃあ言うこと聞いちゃうわよねー。自分のコトばっちり理解してるわ」


 ミッドナイトがそう言えばプレゼントマイクもうんうんと同意する。


「……なぁイレイザー。もうあいつサイドキックにしちまえば?それか俺にくれ」


「何言ってんだお前。俺はサイドキックは取らんし、そういうのは本人に言え」


「だってめっちゃ優秀だし。ゴーイングマイウェイだとばっか思ってたが、意外な一面があるもんだよなァ。全方位隙なしって感じかァ?」


「あいつは元々、能力が高い。やらないだけでな。…まぁ、とはいえ俺も驚いてる」


 そう。相澤は正直、めんどくさがりで自分本位な名前の事だからと戦闘時にだけ乗り気なのではとばかり考えていた。それが意外な形で覆されたことに大変、驚いたのである。

 プレゼントマイクの言う全方位隙なしというのも確かに分かるような気がする。今回のインターンを取り付ける為の根回しといい、戦闘面で必要なあらゆるものの水準の高さ、座学も悪くはなく、人格に少しのクセはあるが大した問題はない。それに加えて今回、サポート業務でも有能だということが発覚したのである。この人間には欠点がないような気がしてしまうのは無理もない事だった。


「ふふ、先生達が褒めてる。ありがとー」


 いつも間に来ていたのか相澤とプレゼントマイクの間からひょこっと顔を出した名前がそう言って笑う。


「盗み聞きするんじゃない」


「”耳”が良くて」


「お前のは勘だろ」


「まぁそうだね。どっちもかな?」


 「マイクさんこんにちは」と言った名前にマイクは個性を発動しながら「俺のサイドキックにならねぇかァァァ??」と尋ねた。音の勢いで名前の髪が後ろに靡く。


「んー、マイクさんのサイドキックは耳やられるからなぁ。それに私自由にやりたいの。誰かのサポートは嫌」


「シビィイイイイ、そりゃ残念だぜ!!!」


ーーーー放課後ーーーー


 学校の業務を終えた2人の次の仕事は学校付近のパトロールだ。敵活性化に辺り新しく増えた業務に、もちろん名前もついていく。だが突然、相澤が視界から消えた。


ニャーーッ!!!!


「…先生。何やってんの」


「……」


 路地裏で名前に背中を向け、しゃがみ込む相澤が自分の武器である捕縛布の先を猫の前に垂らし、ちょいちょいと動かしている。猫は目を吊り上げ、その捕縛布をなんとしても捕まえんという気迫でシュパパパバと猫パンチを連打していた。


「(猫好きなんだ…)」


「お前もやってみるか」


「うん」


 相澤の隣にしゃがみ、捕縛布をちょろちょろと猫の前で動かす名前。


シャッ、シャーーーーーーー!!!!

 
 猫、ガチギレである。怖いのか耳をイカにし、体をブルブルと震えながら毛を逆立てる猫につい、相澤の肩が震える。


「……まぁ、なんだ。お前、俺のサイドキックになるか?」


「ねぇ、なんで今言ったの?同情??」


「冗談だ」


「猫が私よりちょっと懐いてるからってさァ!!」


 動物に好かれないだけで名前自身は動物好きである。動物の個性の人間でもいいから触らせてくれ、と常々思ってるぐらいには好きなのにこの嫌われよう。珍しくイラッとした顔を見せた名前を見て相澤は驚いた。その声にさらに怖がる猫。とうとう体を縮こめ、耳を横に倒し脱力して腹を晒す。降参のポーズである。あまりにも可哀想。


「ああ…、ごめんネ」


「お前にも出来ないことがあったんだな」


「そりゃねー。色々あるよ」


「例えばなんだ」


「料理とか裁縫も出来ないし、絵も描けない、戦うの以外なーんにも出来ないよ。まぁそれも完璧には出来ないけど。私は取りこぼしも多いからネ。先生もその口なんじゃないの?」


「……」


 相澤は何も答えない。背中を向けた名前が路地裏から一歩出る。相澤と名前の間を太陽が区切った。だが、太陽に当たる名前は傘の下にいて、相澤と同じ暗さの中に立っている。


「んー私は単純に個人の方が楽ってのもあるから、やっぱりちょっと違うかな」


「安心したよ」


 一歩、相澤が前に出た。そして名前の隣に並び、傘の下に入る。


「何が?」


「お前にも人間味があることが分かってな」
 

「ニンゲンミィ?私は天人だよ」
 

 相澤は口角を少し上げて名前の頭をワシャっと撫でた。


「ちなみにだけど、お茶淹れるのも苦手」


「美味かったぞ。…渋めで」


「やっぱり?実はカップも割っちゃったんだよね」


「あとで補充しとくか……」



―――週明け、朝!!―――――


 
「ふ、爆豪珍しいね、そんなボロッボロなの」


「笑ってんじゃねーぞクソ怪力女ァ!!!舐めプ野郎も一緒だろうが!!!」


 轟の前の席に座り、背もたれに肘を着きながら爆豪に視線を向ける名前。そして仮免補講でみっちり絞られているらしいガーゼだらけの彼にわざとボロッボロを強調しながら言い、同じくボロッボロな轟の頬に絆創膏をぺたりと貼った。特に抵抗せずに片目を瞑る轟の姿を見た芦戸が「ひょーー!」と声を上げる。


「イケメン台無し!!どうしたのさ!!」


「そんなひどいか?」


「んー、ケンカ少年って感じでいいと思うよ」


 首を傾げた轟の首に丁度いい、とばかりに持っていた湿布を貼り付ける。轟はその冷たさに一度ぴくりと体を震わせたが、すぐに「ありがとな」と少しだけ口角を上げて笑った。


「そうか」


「騙されるな轟!!そいつテキトーに言ってんぞ!!!」


 上鳴に言われ、「そうなのか?」と轟がまた首を傾げる。


「テキトーじゃないヨ」


 すーっと視線を外した名前。適当である。


「そうか」


「だから騙されてるって!!!顔見ろ顔!!カワイイし何でもいいじゃん?って顔してるぞ!!!」


「何で分かんだアイツ」


「轟も結構、名前肯定派だよな」


 2人の様子を見ていた瀬呂、切島はやれやれと首を振った。いつの間にこれほど信頼されるようになったのか。名前は少し不思議に思ったが悪い気はしなかった。


―――――放課後―――――


「カミナリー、ちょっと充電させて」


「またかよ。お前、部屋でやれよなぁ」


「だって上鳴の方が早いから」


「あの…、名前さん」


「んぁ?」


 共有スペースのソファで八百万にもたれ掛かり、上鳴と携帯ゲームに勤しんでいた名前の側に緑谷が立った。


「その…ちょっと聞きたいことがあって」


「なぁに」


「ここじゃちょっと…」


 神妙な顔をし、暗に人気のないところへと誘う緑谷に名前は首を傾げた。そういえば、今日の彼は一日中、様子がおかしかった。救助訓練で溺れかけ、教師に当てられても聞こえていないのか俯いたままブツブツと何かを唱える姿を思い出す。名前はきっとまた何か考え込んでいるんだろう、と当たりをつけると上げた脚で勢いをつけながらスクっと立ち上がった。


「えっ!何!?告白!?」


 その様子を見ていた葉隠が「きゃーー!」と歓声を上げる。緑谷は慌てたように「ちちちち、ちがっ!違うよ!!僕がこ、こここ、告白なんて」と手をブンブンと振って否定した。


「はは、それでもいいけどね」


「ちょ、名前さんも!」


 冗談だよ、と言いながら外へと向かう名前の後ろを緑谷はもつれる足をなんとか動かしながら追った。


「それで?なに?」


「そ、その。何が言いたいとかは無いんだけど…、インターンに行って」


「うん」


「女の子に会ったんだ…」


「うん。で?」


 なんの話?と首を傾げる名前。


「その、様子がおかしくて。女の子は怖がってたし…、だから僕は声をかけたんだけど…、でもその人のところにいっちゃったんだ。それで、」


 話がまとまらない。纏まらないながらも今日の話を聞かせる。

 要領の得ない話というのは緑谷本人にも分かっていた。それに彼女は全く関係がない。きっと言われたところでなぜ?となるだけだ。それでも彼女はオールマイトの秘密を知る1人であること、USJ、林間、神野と彼女はずっと近くにいたこと、その強さや心を緑谷は尊敬していたから、自分の感じた心のしこりを彼女ならどうしていたのか知りたかった。

 もしかしたら、彼女なら軽くしてくれるかもしれない。緑谷は無意識にそう考えていた。


「へー、何言ってんのか分かんなかったけど分かったよ。頼りなく見えたんじゃない?」


 グサァッと刺さる鋭い言葉の槍。


「ぐっ、そう言われると…」


 僕が弱そうに見えたから。僕じゃ頼りなかったから。あの子は助けを求められなかったのかもしれない。それは確かに否定できないことだった。


「ああ、緑谷が弱そうとかじゃなくてさ。ただその子がソイツから離れない理由を上回れなかったんだよ。それに上司の気持ちも分かる。きっとその時じゃなかった」


 そう、かもしれない。でも何故かは分からないが、緑谷は落胆するような、そんな気持ちになった。名前ならきっと目の前の少女も、その先にいるまだ見ぬ大勢の市民も、両方助けると言ってくれると思ったからかもしれない。


「…君ならどうしてた?」


「私?私はそんな器用な生き方はできないからなァ。きっとその場で思ったことをすると思うよ。その子を連れていきたかったら泣いてても連れて行くし、何かされそうならそれも潰す」


「泣いてでもって、それ君が捕まっちゃうんじゃ……」


「そうかもね」


 確かに器用じゃない。強欲で、強引だ。でも、緑谷はそう言って欲しかった。求めていた言葉だった。誰より大きく手を開く彼女ならそう言ってくれると思ったから。彼女にその気はなくとも緑谷は自分の指針を後押しされたような気がした。


「ねぇ…君は、名前さんは大切な人が死ぬって決まってたらどうする?」


「誰か病気なの?」


「えっ!?い、いや違うけど。その運命論的な意味で…」


「ウンメイロンテキナイミ??何かに決められた運命なんて」


 クソ喰らえよ。名前の力強い言葉に、緑谷の心が熱くなった。


「うん…!うん!そうだよね、君はそういう人だった。僕、がんばるよ」


「だからなんの話?誰か死ぬの?」


 首を傾げる名前の隣で、心強い味方を得た時のような気持ちになった緑谷はぐっと両拳を握りしめた。


――――SYUUMATSU――――


 ソファに座り、担任業務をしながら待機する相澤とその隣で相澤の肩に足を乗せながらソファに寝転がり、手持ちのゲームで時間を潰す名前。始めは注意していた相澤も今や猫が戯れているくらいにしか思っておらず、雑談も無く、黙々と互いの作業に熱中している。

 すると突然、両者の間にあった相澤のヒーロー業務用の携帯がPrrrと鳴った。パソコンを閉じ、手を伸ばした相澤がそれを取る。


「はい?ああ、はい。分かりました。俺が行きます」


 電話の奥の人物は相当切羽詰まっているらしい。漏れる声は必死に何かを伝えている。相澤はしばらく話を聞くと、そう返事をし、無造作に携帯をポケットに押し込んだ。そして、立ち上がり、ずるりと肩から落ちた足も気にせず、未だ画面を見つめ続ける名前の頭を指で小突く。


「夜野、要請だ。近くで敵が暴れてる。行くぞ」


「えー」
 

「えーじゃない。行くぞ」


「はーい」


 呼び出された場所に行けば、現場には既に警官隊が到着していた。


「こちらです!」


 人払いを済ませ、包囲されたその真ん中には1人の男が蹲って座っている。ぶるぶると震える肩は尋常では無く、見えている首元には大量の汗が滲んでいた。だが、それだけなら警官隊は意図も容易く男を確保できている。それが出来ない理由が相澤に要請がかかった理由だった。


「これは…空気?」


 肌に当たる風の流れ。空気の壁のようなものが男の肩が膨らむ度に男を中心に円状に放たれる。熱風だろうそれは中心に行くにつれ相当な温度であるようで、空気が揺れて見えた。


「こりゃ俺が呼ばれるわけだな」


「ヒャッハハッハッハ!!!あーーーーもっとだ!!!もっと出ろ!!!!」


 薬か、元々か。ハイになった敵の目にヒーローは入っていない。熱風の範囲ギリギリに名前が立つ。相澤はちらりと目をやった。


「ん」


 相澤が髪を逆立てたのに合わせ、止まる風の合間に名前が男へと距離を詰める。そして、すかさず取った男の片腕を背中に回した。個性が出ないことが不思議なのか、片腕が動かないのが疑問なのか首を傾げた男が振り向く。


「や、こんにちは」


「あ???お前、ヒーローか!!?丁度いいなァ!これやるよ」


 男は興奮気味にポケットから何かを取り出すと名前に向けて容赦なく手を振り上げた。キラリと一瞬、光る銀。それは注射器だった。そして同時に熱と風圧がまたぶわりと広がる。幾多の戦闘で短くなった個性の持続時間。相澤のインターバルである。


「夜野!!」


 眼球の目前まで針が迫り、ピントがボケる。


「大丈夫」


 名前はそう返事をすると冷静に掴んでいた男の手首を捻り上げた。関節が外れる痛みに顔を歪め、手元から注射器を落とす男。だが、まだその手は不自然に膨らんでる。熱さと風圧に耐えながら名前はさらに押さえつけていた手に力を込めた。ゴキッと鈍い音が鳴り、男が叫ぶ。


「あああああああああ」


「あんたまだなんか持ってるでしょ」


「ああああ、あははは、楽しくなってきた」


 悲痛な声を笑い声に変え、顔を歪める男。その不気味さに警官隊の足が半歩下がる。その時、男の手から薬にしては大きなカプセルがぽろっと落下した。そして、それを追うように頭を落とした男が口を開け、舌を伸ばす。筋が切れるほど伸びるそれはまるで痛みを感じていないかのようだった。


「こいつ……」


 名前は咄嗟にそれが口内に入る前に手で払うと男の背中を押し、地面に押し付けた。


「ギャッ!!!」


 自殺では無いだろうが、何にせよこの状況で飲もうとするものだ。得体が知れない。それに加え、これ以上熱風の温度が上がれば自分も無傷では済まなくなる。とりあえず眠らせておくのがいいだろう。名前は真っ直ぐに首の後ろに手を落とした。


「あ」


 間抜けな声と共に体から力の抜けた男をごろりと地面に転がす。


「確保―」


 名前の間延びした掛け声に合わせて一斉に警官が男に集まった。


「連れてけ!」


 そうして敵はパトカーに乗せられ、連行されていった。なんともあっけない。よくある事件。だが、少しその事件にはいつもと違う部分があった。


「今、ちょっといいですか」


 担当だろう刑事の1人が「あの、」と何か気になることがあるような顔で相澤に声をかける。


「私、前に交通課にいまして…彼を飲酒運転で検挙したことがあるんですけど。彼の個性は温風は温風でもドライヤーほどの威力しかない筈なんです」


「はぁ」


「イレイザーさん。多分これ」


 虚偽の申告か。それならまれにあるはずだが、と不思議そうな顔をする刑事を見る相澤に名前が声をかける。名前の指した指先には地面に落ちたカプセル型の薬があった。

 そして、しゃがみ込み、ごたごたの間に割れてしまったそれに指を伸ばす。それから粉の漏れたそれを指に付着させ、名前は躊躇なく舌に乗せた。瞬間、感じる特徴的な味。


「まずい」


「得体の知れないものを口に入れるな」


 ペッと吐き出した名前に相澤はぐっと眉を寄せた。


「気になってさ。それに私には効かないし。これ、興奮作用はあるみたいだけどドラッグの類じゃないと思うよ。多分、薬物ではあるけど。さっきの奴が隠してたんじゃないなら、個性のドーピング剤みたいなのじゃないかな。そんなものあるの?」


「個性を一時的にブーストする薬は裏の世界じゃ出回ってる。が…まず何でお前ドラッグの見分けつくんだ」


「テレビでやってた」


「……今は聞かないでおく」


 名前には何度かドラッグ関連の仕事をした経験があった。それは地球の物では無かったが、大した違いはないだろう。自分でした事も無いし、必要とはしていないが、なんとなく分かるのだ。あの世辞にもいい匂いとは言えない、独特な匂いもしっかりと記憶にある。きっとこれはそういうものじゃない。名前は地面に落ちていた注射器を摘み上げた。


「ただ……こっちは何かわからない。ヒーローだからって理由で刺そうとしてたから動きを止める系の薬か…個性弱体とか?増強できるんだったら弱体もあるだろうし、それか個性を消すとか?」


「弱体させるようなモノはあっても、消せるようなのは聞いたことないが。そもそも弱体化ですら紛いもんばっかだからな」


「いろんな個性あるんだし、相手が体液摂取すると個性を一時的に抹消できるーとかそんなのがあってもおかしくないんじゃない?先生がいるんだから」


 個性というものがまだ目新しい名前にとっては無い話とは思えない。そして、体液摂取というのはただ、体に分解されるのも早そうなうえ、生産数をある程度確保できそう、という予想というよりも確証のない考察が理由である。だが、名前の勘にある程度の信頼を置いている上、自身の個性柄、こちらもあり得ないとは言い切れなかった相澤は少し考え、名前の手から取ったそれを警察に手渡した。


「効果確認するためにも刺されてた方が良かった?」


「バカなこと言うんじゃないよ。お前は自分を過信しすぎだ。解決したんだからとっとと帰るぞ」


「先生、帰りコンビニ寄りたい」


「……お前、遊び気分でやってるなら本気で除籍にするぞ」


「人の腕折る遊びはしないよ。心外だなァ」


「まぁそれもそうだな」


 ゼリーの補給も兼ねて結局コンビニに寄った相澤はちゃっかりカゴに自分の食べ物を入れていく名前を見て頭の中に破産の危機という5文字が浮かんだ。







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