序章
千歳千里Side


竹谷四葉さん。
その名前を言われても、漢字を見てもピンとこなかった。
どうやら自分と同じクラスらしいが、まともに教室に行っていない為、名前と顔が一致しないクラスメイトが多い。
彼女の存在を知らないのも、兵庫県から転入生が来たという情報も知らなかったのもそのせいだ。

その竹谷さんともう1人の転入生を”合宿に参加させる”というメッセージが白石から送られてきた。
大川学園の学園長の”突然の思いつき”らしい。



「……これで良し、と」



白石に、合宿の件を竹谷さんに伝えるよう言われた。
なんで俺と? と聞けば、同じクラスだから、と。そこで初めて竹谷さんが同じクラスだって知った。
謙也は俺に任せて大丈夫か心配そうだったが、白石にやらなければ怒ると言われて、仕方なく引き受けた。
白石は怒ると怖いたい……。

竹谷四葉へ。放課後、校舎裏で待つ。

とりあえず、そう書いた紙を折って、クラスの誰かの下駄箱に入れておく。
だって竹谷さんの下駄箱がどれか知らんし。
気づいた人が竹谷さんに届けてくれるやろうし。



キーンコーンカーンコーン



1日中、ずっと校舎裏で寝ていた。たまに野良猫と遊んだけど。
学校のチャイムで目を覚まして、上半身を起こす。いてて、寝すぎたばい。

チャイムが鳴り終わって15分くらいが過ぎた頃、1人の女子がキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていることに気づいた。
もしかして、と思いながらジッと見ていると、女子もこちらに視線を向ける。
目が合うと、女子は驚きの表情を浮かべ、小走りでこっちに向かって来た。



「これ、」
「竹谷さん?」



俺が書いた紙を見せて何かを言いかける女子。
しかし、その紙を持っているってことは、と思った俺は、言葉を遮って聞いてみた。
女子は驚いたのか、動揺しながら「あ、うん」と頷く。やっぱり!



「待っとったばい!」



笑顔で言えば、竹谷さんは「え」と声を漏らした。
どうしてそんなに驚くのか不思議で聞いてみると、「いじめで呼び出されたのかと思った」と。
俺がそぎゃんこつするわけなか! ……あれ? そういえば自分ん名前書いとらんかったかも?

そして、竹谷さんは合宿の話で更に驚くことになる。

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