準備期間
01 明Side


「おっそいなあ、何してんねん」



一氏君が呟く。

私が所属する演劇部には、急ではあるが白石君の方から”合宿の件”を説明してもらった。
相手が白石君だからなのか、演劇部の皆は即OKで私を送り出した。白石君凄いわ。
合宿にはレギュラーメンバーしか参加しないということで、早速、レギュラーの人達と自己紹介を交わした。
白石君。小石川君。忍足君。小春ちゃん。一氏君。石田君。財前君。遠山君。で、今はいないけど千歳千里君。うん、覚えたはず。

だけど、部活の時間が始まっても、四葉が来ていないのだ。千歳君はいつも通りらしいけど。



「っごめんなさい、遅れました!」



大きめの声が聞こえてくる。
声のしたほうを見ると、四葉が慌てた表情でこちらに走って来ていた。
四葉は私同様、足が速い為、すぐにこちらに辿り着く。息が乱れてない、さすが。
足を止めた四葉は「ごめんなさい」と、白石君達に向かって頭を下げる。
白石君の「大丈夫やで」と言う言葉に顔を上げると、四葉は「ありがとう」と言いながら、乱れた髪の毛を整える。



「何かあったの?」
「いや、合宿のことも部活のことも、今聞いたばっかで」



私の言葉に、四葉は言う。え、マジか。
私達の会話を聞いた一氏君は、「やっぱし千歳に任せるんはあかんやんかー」と白石君に言った。
忍足君も同意したのか、「せやせやー」と白石君に言うが、白石君は溜息をつくだけ。



「あ、千歳君置いてきちゃったんだけど、連れてきたほうが良い?」
「放っとき、どうせ来ぇへん」



部活のことを聞いて、すぐこちらに来たのだろう、四葉が慌てて言う。
しかし、忍足君は苦笑しながら首を横に振った。
どうせ来ないって……、サボるのが当たり前ってこと? それでレギュラーなんだ。
関係性が分からず困惑している四葉だが、白石君が「ほな、もう1度自己紹介しよか」と忍足君達に声をかける。

自己紹介を終えて、私と四葉はマネージャーの仕事を教わることとなった。
テニスのルールは覚えなくても良いのか、と白石君に聞いたけど、マネージャーの仕事を覚えてもらいたいらしい。
まあ、合宿まであまり時間が無いし、とりあえずはマネージャーの仕事が優先か。



「と、まあ、こんな感じやな。実際にやる時には、オサムちゃんが着いとってくれるから」
「オサムちゃんって?」
「顧問や。ぼちぼち来るはずやで」



一通りの説明が終わった。
へえ、顧問を”オサムちゃん”って、仲が良いんだなあ。
なんて思っていると、「お! その子等かー!」と言う明るい声が聞こえてきた。
四葉と揃って声のしたほうを見ると、薔薇柄のチューリップハットを被り、煙草を咥え、無精髭を生やした男性がこちらに歩み寄ってきていた。
……この人が”オサムちゃん”!?
失礼だけど、顧問とも先生とも思えないような風貌だ。



「白石、おおきに。練習行きー」
「ほな、そうさせてもらいます」



”オサムちゃん”の言葉に返事をすると、白石君は私達に向かって「また後で」と言うと、走ってテニスコートへと向かった。
”オサムちゃん”は私達に顔を向けて、ニカッと笑顔を見せる。良い笑顔。

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