合宿
01 明Side


朝早く四天宝寺高の正門前に集合し、私達は合宿所へ向かうべくバスに乗り込んだ。勿論、千歳君も一緒に。
この数日の間で男子テニス部の皆とは仲良くなったと思う。特に小春ちゃん。
前の私達じゃ考えられなかった交流だ。なるべく注目を浴びないように生活してきたわけだし。
で、私と四葉、小春ちゃんは1番後ろの座席で3人仲良く並んで座っている。
ひとつ前の席の一氏君が恨めしそうに私と四葉を睨んでいるけど、私達は気にしなーい。
一氏君、本当は小春ちゃんと隣同士で座りたかったんだろうなあ。小春ちゃんは違うみたいだけど。



「でな、4組の加藤君がかっこいいと思うんやけどお」



一氏君が睨んでいるのは、小春ちゃんが他クラスのかっこいい男子の話をしているっていうのもあるかも。
「お前らどないかして他の話題に逸らせえや」と目が言っている気がする。
しかし小春ちゃんは気づいていないのか、頬に手をあてながら楽しそうだ。
四葉は一氏君の視線に気づいているのに「あー、見たことないかも」と小春ちゃんの言葉に返事をしている。



「そういえば、2人はどないな人がタイプやの?」



タイプ? 小春ちゃんの言葉に、四葉と視線を合わせる。考えたことなかったかもしれない。
うーん、と腕を組みながら考える私。タイプ、タイプ……。タイプ? んんん?
兵助、は大好きだし愛してるけど、あくまで家族として。異性として好きなのは、……というか好きになったことないかも?
近くの人で考えてみるか。まずは仙蔵。同級生で1番仲が良いけど、恋愛感情になったことはない。
文次郎も、ないなあ。長次もないし、小平太は1番ないし、留三郎も伊作もない。年下も、ピンとくる人はいない。
え、じゃあ教師? ……いや、該当しないな。利吉さんもかっこいいけど、違う。



「分からん!」
「うん、分からんね」



きっぱり言う私と四葉。小春ちゃんは苦笑しながら「なんでやのー!」と言った。



「誰か好きになったことないん!?」



この時代に生まれてからは、ないかなあ。前世ではどうだったかな……。
忍術学園に入学してから、とにかくプロの忍者になることで必死だった。
勉強はからっきしだったけど、幸い、戦闘は得意だったから、テストとか任務とかでは戦闘で補っていた気がする。
あとは任務の関係上、色仕掛けもしてきた。だけど演技だから、相手に恋愛感情を持つことはない。色仕掛けはもうやりたくない。
結局、誰とも付き合うことなく、誰かと結婚することもなく、生涯を終えた。



「そんなんもったいないわあ! 命短し恋せよ乙女え!」



眉間に皺を寄せて首を傾げる私と四葉に、好きになった人がいないと分かったのか、小春ちゃんが嘆く。
四葉は「そうは言われても」と苦笑するが、小春ちゃんの勢いは止まらない。
小春ちゃんは、ガシッ!、と四葉の両手を掴む。四葉は勢いに驚き、少し身を引いた。



「蔵リンはどない!? ええ男やで!? 銀さんは!? 優しいで!?」



次に私に体を向け、私の両手を掴む。お、おう、勢いが凄い。



「謙也君はあかん! やめとき! あいつは惚れやすい!」
「なんで俺はあかんねん! 好きになったら一途やし!」



小春ちゃんの声が届いていたのか、前のほうに座っていた忍足君が立ち上がり、こちらに向いて怒鳴った。
しかし、バスは動いている為、バスが揺れた時にバランスを崩し、忍足君は頭を窓に打ちつけた。
「いだっ!?」と声を上げる忍足君に、石田君の隣に座っている財前君が「ダサ」と大きめの声で忍足君に言う。
忍足君は恥ずかしそうに顔を真っ赤にし、「や、やかましい!」と怒る。あれま。
石田君に「気にせんとき」とフォローされるものの、忍足君は余計恥ずかしくなったのか、大人しく座りなおした。

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