準備期間
02 明Side


「やばい、思ったより出来そう」
「まあ私達のバヤイ、こういうの慣れてるしね」



私の言葉に、四葉が返事をする。
こういうの慣れてるっていうのは、私達が前世で忍者をやっており、それで色々と身に着けたのだ。
ほら、忍者ってどこにでも潜入できるようにしなきゃいけないからさあ。
ま、現代でも忍者やってるんだけど。こっそりね。

渡邊オサム監督は「トイレ!」と言って、トイレに行ってしまった為、今は私と四葉の2人きり。
四葉は救急箱の中身を確認すると、「ねえ、」と声をかけてきた。
ストップウォッチを準備していた私は、「んー?」と聞きながら四葉に顔を向ける。



「私、合宿乗り切れるか分からん」
「え、なんで。どうしたの?」
「だってハチに会えないんだもん!」
「っそれは私も思う!」



愛しの弟、兵助。
私は夏休みに入ったら、四葉と一緒に速攻で兵庫県に帰って、兵助を抱きしめ倒すつもりだった。
それが、あの学園長先生の突然の思いつきのせいで駄目になってしまった。
合宿が終わってから兵庫県に帰っても、本来あったはずの兵助との1週間が無くなってしまったことを考えると、どうしても辛い。

私が「あああああ」と小さく呻き声を上げると、四葉も「はあ……」と溜め息をついて項垂れた。
四葉もブラコンだし、弟のハチにすぐに会いに行きたかっただろうに。



「ん? どないした?」



誰かの気配が近づいてくるのは分かっていたが、どうしても気分が沈んで仕方がない。
戻ってきた渡邊監督に「なんでもないです」と言うものの、監督は「嘘つけー」と苦笑した。
渡邊監督は私達に近寄ると、私達の目線に合わせるように、少しだけ身を屈めた。



「マネージャー業、しんどいかあ?」
「いや全く」
「全然」



優しく聞いてくれる渡邊監督には申し訳ないが、私と四葉はキッパリと否定した。
あまりにもはっきり否定するものだから、渡邊監督は目をぱちぱちさせると、姿勢を元に戻す。
「ほな、どないしたん?」と聞く彼に、私は四葉と視線を合わせる。
弟に会えなくて悲しい。なんて言ったら、呆れられてしまうだろうか。
でも! だけど! 声に出さなきゃ、私達の思いが爆発しちゃうかもしれない!



弟に会いたい!



私と四葉の言葉に、渡邊監督は「はえ?」と間抜けな声を出した。

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