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ああ神様これは夢なのですかの悠太視点




最近、自然と祐希を目で追ってしまう。
…いつからだろう、こんなにも好きになったのは。

最初は、自分の気持ちに気づかなかった。だって、まさか同性で、しかも実の弟である祐希を恋愛対象として好きになるなんて、考えもしないでしょ?…だけど、俺の気持ちはそれに反してどんどん加速していった。祐希をどんどん好きになって、自分のものにしたいなんて思い始めてしまった。言葉を交わすことにも、同じ空間に居ることにも、俺の心臓は高鳴りっぱなし。これ以上一緒にいると、気持ちが制御できなくなりそうだった。千鶴達とは普通に話せるのに、祐希と話そうとすると言葉に詰まった。いつも通りを心掛けたいけど、それができなくなったみたい。…あれ、いつも通りってどんなだっけ?俺、祐希とどんな風に接してた?ちゃんといつも通りの俺でいられてる?
好きになればなる程、普段の自分が分からなくなっていった。それと同時に、気持ちを押し殺し続けるのにも、限界がきていた。だから、誰かに吐き出してしまおうと思ったんだ。祐希じゃない誰かに。自分が潰れないために…。
俺は悩んだ結果、要に相談することにした。一人では抱えきれなくなった想いを、要に吐き出した。なんて自分勝手なんだろうって思ったけど、要が黙って聞いてくれるから、俺は最後まで話すのを止めなかった。さほど長くない話を聞き終えた後、要は一言だけ言った。

「伝える相手が違うだろ?」って。

そんなこと、言われなくても分かってる。祐希に言わなきゃどうにもならないってことくらい。でも、そんなことしたら俺達の関係が壊れるかもしれない。だから怖いんだよ…。

「そんなことわかってる。でも…、でも俺は……っ」

伝えたいのに、自分の弱さがそれを邪魔する。そのことを訴えていたとき、ふと祐希の姿が目に入って口を閉じた。沈黙している俺達の横を、祐希が無言で通りすぎていく。…今の話、聞かれてないよね?その後、直ぐにチャイムが鳴り、俺達は教室に戻った。

帰宅後、祐希を意識しないようにと思って読書を始めたけど、まったく内容が頭に入ってこない。ただ意味もなくページを捲って、とにかく気を紛らわせたかった。でも、さっきから要の言った言葉が頭の中で何度も繰り返されている。

「伝える相手が違うだろ」

要の言ってることはもっともだ。祐希に伝えなければ、何も変わらない。このままの状態が続くだけだ。…だったら、伝えてみる?もしかしたら、祐希に嫌われるかもしれない。もう話すらしてもらえなくなるかも…。でも、伝えてしまった方が良くない?こうやって祐希を避けてる時間は、何の意味もないんじゃないの?いつまでこうやって悩んでるの?頭の中をぐるぐると様々な想いが巡った。そして、考えに考えて、俺は決断した。もう、祐希に想いを伝えてしまおう。
だって、このままの状態が続くなんてつら過ぎる。本を読むのを止め、祐希の名を呼べば、いつも通りの声で「…何?」と返された。決心を固めてベッドの方を見ると、祐希は俺に背を向けて座っていた。もう既に嫌われてる?という不安があったけど、そんなことはもう気にしないことにしよう。どうせこれからフラれるんだから。俺はベッドに近付き、祐希を後ろから抱きしめた。そして、「祐希、好きだよ」と告白。うまく声にならなくて掠れてしまったけど、祐希には確かに聞こえていたはず。少し間が空いて、祐希は俺の腕の中で身体を反転させた。そして、少し瞳を見開いている祐希と目が合った。
あぁ、ヤバい。今、すごく泣きそう…。もうフラれるなと思った瞬間、涙が零れそうになって、祐希の肩に顔を埋めた。すると、祐希はそんな俺に「俺も。悠太が大好きだよ」と言って抱きしめてくれた。
え、祐希も俺のことを…?聞こえてきた言葉に耳を疑ったけど、祐希の温もりがそれが嘘ではないことを証明してくれていた。
ずっと無理だって勝手に決め付けてたけど、それは間違いだった。祐希も俺のことを想ってくれてたんだね。
俺は祐希の腕の中で、そっと瞼を閉じた。






(これからは恋人としての道を)(一緒に歩んでいこう)


- END - 





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