お題 | ナノ

悠太の様子がおかしい。

そう思い始めたのはいつ頃だっただろうか?
最初は気のせいだと思ってたけど、それは時が経つにつれて確信に変わった。何故だかは分からないけど、確実に避けられてる。しかも、俺だけが。春や要や千鶴にはいつも通りに接するのに、俺が話し掛けても返事をする程度でまったく会話が成り立たない。逃げるようにしてその場を離れちゃうこともしばしば…。一緒に登下校する回数も減ったし、家に帰れば俺と二人きりにならないようにずっとリビングに居るし…。
もう、何が何だか分からない。今までずっと一緒に居た悠太が、急に離れていく。何度も理由を聞こうとしたけど、逃げられてしまうから聞くに聞けない。あぁ、何か泣きたくなってきた。悠太は、俺にとって兄弟である以前に好きな人なんだ。その人にあんな態度をとられたら、滅多に泣かない祐希くんだって号泣しちゃいますよ。
泣きそうな理由は他にもあるよ。今日、悠太と要がコソコソ話をしてるのを見た。その時、たまたま俺が近くを通ったら、二人はピタッと話すのをやめたんだ。あぁ、俺には聞かれたくない話ですか。そこまで俺を避けるんですか。俺は、涙をぐっと堪え、その場から足早に離れた。

…そんなことがあって今に至るわけで、俺は帰宅後、一人ベッドに寝転がっている。悠太は本を読んでいるようだ。たまにページを捲るパラッという音が聞こえるだけの室内。そんな中で、突然「…ねぇ、祐希」と名前を呼ばれた。俺はビックリして勢いよく身体を起こした。でも、悠太の方を見るのは何となく怖くて、背を向けた状態で「…何?」とだけ返した。すると、近付いてくる足音がして、ふわっと後ろから抱きしめられた。そして悠太は一言だけ消え入りそうな声で呟いた。

「祐希、好きだよ」

…え、何?今、俺のことを好き、って…?
抱きしめてくる腕の中でくるりと身体を反転させれば、頬を赤く染めた悠太と目が合った。すると、悠太は隠すように俺の肩に顔を埋めた。
夢にまでみた悠太との恋人関係。まだ実感が湧かなかったけど、悠太に「俺も。悠太が大好きだよ」と言って抱きしめた。






ああ神様、これは夢なのですか


(これからは兄弟ではなく)(恋人として一緒に居よう)

- END - 





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