A requiem to give to you
- 仄かに灯る焔の休息(3/3) -



(フィーナは、ここでの生活は…………やっぱり苦痛だと思っていたのかな)



ガイは今でこそ違うようだが、元は復讐の為にこの邸に来た。家族の仇やその息子とどんな気持ちで過ごしてきたか、その憎しみは計り知れないだろう。ヴァンもまたそうだ。彼の場合はファブレ家どころか世界と預言と言う規模自体が違ったのだが、それでも憎しみを抑えながら、長い時間をかけて周りを信用させて、己の計画を成すために動いていた。

後から知った事だが、フィーナもまたガイやヴァンと同郷だ。彼女とその家族はホドの崩落時は別の場所にいたらしく事なきを得たようだが、帰る場所をなくしたのは間違いない。そんな彼女は数年前にヴァンの紹介でこの邸に来た。メイドとして働き始めてから、ガイを通してルークやナタリアとも仲良くなった彼女は、復讐心があるようにはとても思えなかった。

ルークが見る限り、彼女はこの生活を楽しんでいるように見えた。タリス達が来た時だって、二人を決して否定せずに直ぐに受け入れる為の案を出してくれたりもした。ヒースが誘拐された時だって、心から心配していたのも覚えている。それが全部、演技だとはどうにも思えないのだ。

しかし、そんな彼女に変化が生まれたのは………レジウィーダと出会った時だった。ルークがマルクトに飛ばされて、再び邸へと戻った時に連れていた彼女とフィーナはその時初めて対面した筈だったのだが、どうやらフィーナにとっては違ったようだった。その時には気付かなかったが、次の日には辞表を出してダアトへ帰っていた彼女に気付いていたら、また違う展開になっていたのだろうか。

ルークはそこまで考えてからふと、近くのチェストに目をやる。



「…………そう言えば」



と、呟きながらチェストの一番を上を開くと、一冊の本が顔を出す。表紙には素晴らしい肉体美を晒した男達の写真が添えられた……所謂ボディービルのモデル雑誌だった。



「…………なんで、こんなの取っておいたんだ俺」



いつしかガイ達に放っておかれ不貞腐れていた時にフィーナが置いていった本。あの時初めて彼女の趣味を目の当たりにし心底引いたのを覚えている。正直いらなかったが、しかし純粋な厚意で置いていった物を勝手に捨てるのも忍びなくて、取り敢えずここにしまったまま二年以上も放置してしまった。

なんとなしにパラパラと初めてページを捲り流し見ていくと、やはり中身も筋骨累々の男達が良い笑顔でポーズを決めており、裏表紙まで辿り着いた頃にはまたそっとチェストの中にしまっていた。



「………いつか絶対に突き返してやろう」



果たしてフィーナが生きているかはわからないが、もしもまた合間見える事があるのなら、きちんと元の持ち主へと返却をしなければならない。そんな思いを胸に、ルークは再びベッドの上に寝転んだのだった。

















一連のルークの行動を見ていたミュウが、後日興味本位で雑誌を出してポージングを真似ていたのはまた別の話である(しかし語られる事はない)











END
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