壊れてそして | ナノ
■ 一人の朝

目が覚める。不思議と頭は冴えていてあぁそろそろかなと思った瞬間、携帯のアラームが鳴った。春瀬は毎朝5時半に起きる。毎日の習慣だったせいか、いつの間にかアラームより先に起きるという特技を身につけていた。暗闇の中に光る液晶画面を眺めながら、しばしの間ネットサーフィンをする。そして5時45分をまわったことに気付き、ようやく身体を起こした。
「………おなかすいた」
白く長い両足で布団を蹴りベットから出ると、前髪ごとかきあげ適当に手櫛で緩くお団子に結ぶ。携帯を操作して、ミュージックリストを開いて曲を流す。今日って何の授業があったっけかと、顔を洗い歯磨きをしながら考える。
冷蔵庫の中から食パン、チーズ、ベーコン、アボカドを取り出した。
「チーズベーコンアボカドサンドっと、」
フライパンに油をひく。卵焼きも食べたいなと卵を割り、側にベーコンを並べた。その間にインスタントのカフェラテを開け、赤いマグカップにその粉を入れた。ヤカンに水をいれ、沸騰させる。その頃には自分好みに卵とベーコンは焼きあがっていた。

食卓に料理を並べてついでにテレビのリモコンをつける。占いは3位、微妙だ。携帯の音楽を消して、テレビの音を大きくした。机に座り、両手を前に揃えた。
「いただきます」
他の声はない。当たり前だ、一人なのだから。サンドイッチにかぶりつけば、焼き立てのベーコンの香ばしい匂いと伸びるチーズ、アボカドがゴロリと口の中に転がった。さすが森のバターと言われるだけ、濃厚だなと思う。それはとても美味しい、けど、美味しくなかった。1人のご飯は月日が経って慣れてもあまり好きじゃない。そう思っていることを、いつも彼女の側にいてくれる彼は気付いていた。何度も一緒に住もうと声をかけてくれたし、彼の親もまたそれを望んていた。けれど、何の血の繋がりもない、関係のない自分が一つの家庭に飛び込んでしまうのはどうしても抵抗があって。どんなに仲が良くても、甘えていても、その件だけには甘えることが出来なかった。きっと、たった1度だけでも頷いたら、あの人は優しくやっとかよと笑ってくれる。その表情を想像するだけで思わず笑みが零れた。そう、想像するだけでいい。
もう一口と口を開けば、携帯がブーッと揺れる。待ち受け画面にはLINEの表示

はよ。
今日身体測定だぜ
果たしてハル選手の身長はまだ伸びるのか!?

最後にポンとウサギがニヤリと笑うスタンプが押されぶふっと笑ってしまう。それは勘弁してと笑いながらLINEを開いて返信した。彼女は毎年1cmごと伸びる、それが地味に悩みだった。

一方!衛輔選手の身長はーー!?絶対に見逃せない身体測定が今!始まる!
おはよ^o^

食べ終えた食器を流し台に置いてると、また携帯が鳴った。爆笑しているスタンプの羅列。そして最後に一言、

後でな

もう身長は伸びてませんようにっと願いながら、春瀬は大きく伸びをした。
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