壊れてそして | ナノ
■ いつもの昼休み

「なんて暑いんでしょ」
「激しく同意」
絶賛夏季を迎えているというのに、教室のクーラーが故障している。窓を開けても風がない。半袖のシャツ、ズボンを捲り上げて持参したうちわでひたすら扇ぐ。3分経ったぞ交代!と言われ、渋々うちわを渡す
「あっついな〜……黒尾は身体の面積大きい分暑さも倍になったりするんじゃないのか?ふはは」
「その発言はやっくんブーメランじゃな〜い?やっくんは逆に面積小さっ、てぇっ!」
「やっぱ今のなし」
殴った後に無かったことにされるなんて、と頭をさする。夜久衛輔という男は割と暴力的である。
「修理いつくんだろうな」
「さすがに今日で対応してもらわねーと困るぜ。もし明日も直ってなかったら鉄朗君は下校しマス」
「部活は」
「行きマス」
気だるそうにする両名。
「暑い、もう無理。やっくん俺隣のクラス行く」
「どうせあと五分で授業始まるぞ」
「五分でも涼めるなら本望である」
「大袈裟過ぎるだろ」
でも分からなくもないと夜久も立ち上がり、返すとうちわを黒尾に渡した。彼は6組へいざ出陣じゃーとうちわをズボンのウエストにぶっ差した。教室から一歩外へ出た、その時である
「ゴルァァ春瀬!!!!スカート短い言ってんだろがぁぁぁ!!!」
廊下中に響く怒号。全く同じタイミングで「お?」と言葉を発し、黒尾と夜久は声のする方を向いた。視線の先には生徒指導の山平(通称山ちゃん)と、身体をユラユラ揺らして突っ立っている金髪。黒尾がまーたやってんのかとケケケと笑う
「シャツもだ!!!」
「うへぇ?シャツも短い?」
「じゃない!!ボタンいくつ開けてんだ!全部とは言わんが二番目までは閉めんか!……って、まてお前ネクタイはどうした?」
「トイレ流しちゃったぁ」
「どういうこと?!」
通り過ぎる生徒、教室の窓から覗く人も『怒鳴る生徒指導と金髪女生徒』の図を面白そうに見る。そう、日常茶飯事なのである。すると向こうから、派手な2名の女生徒がこれまた気だるそうにやってきた。更に短いスカート丈、がっつり施された化粧、盛られている髪。金髪の生徒が地味に見えてくるほどの、所謂ギャルだった。その姿を見て生徒指導教師は頭を抱える
「お前等……」
「えっウっケる!!春瀬山ちゃんに捕まってるし!!」
「まじだ春瀬不良じゃ〜ん」
「助けろよおまいらー。ていうか私のネクタイとれた?とれた?なんかほら、トイレ詰まった時にキュポキュポして取るやつあんじゃん。あれで取れなかった?」
「無理!あれもう流れたっしょ!海に出てったんじゃね??」
「まって私のネクタイ大海原出てったの?海デビュー?ちょっとおもしろい!」
「クソ面白い!!」
ゲラゲラと腹を抱えて笑う三名。生徒指導が額に血管を浮かばせていることに気が付かない。
「お前等今日の放課後生徒指導室にこい。いいか、こなかったら殺すぞ」
「山ちゃん、今世の中にはモンペという存在がいるんだよ?言葉に気をつけないとだめだよ山ちゃんっ」
「……モンペ?」
「モンスターペアレント」
「略すな!!絶対来ること!!わかったな!?」
「「「へーーい」」」
そう言って彼は俺はやることが沢山あるんだ!とドスンドスンと足音を鳴らしてその場を去る。その姿にまたケラケラ笑いながら、ギャル2名は言った。
「さてと。あたしら帰んべ。春瀬は?」
「殺されたくないから授業受けるー」
「あんたほんとに謎に真面目だよねぇ」
じゃあね〜バイバーイとゆる過ぎる別れをし、ギャル2名もその場を離れる。

「春瀬、ネクタイトイレに流したの?」
「間違ったのよー間違いー」
「春瀬次現国あたるよ」
「しんだわ」
「上履きちゃんと履けー春瀬ー」
「すんまっせーんっ」

通りすがる人々、他クラスの人から次々と声をかけられる女生徒。つるんでいる友人が友人なので不良と思われがちなのだが、見かけによらず絡みやすい性格であり、人望は割とあった。
「そこのネクタイトイレに流したおねーさん、僕と一緒に遊ばなーい?」
今までかかってくる声にはのろのろと返事をしていた彼女だったが、その声にだけはピクリと反応した。そして彼の方を見るとへへへと笑いながら小走りして近付く
「アロハ〜てちゅ〜」
「誰がてちゅだ、誰が」
「やくもんもアロハ〜」
「くまモンみたいに言うな!」


そんなこんなで、鐘が鳴る。
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