四十八手
*碁盤責め*

四十八手のひとつに、碁盤責めというものがある。

女性が体を前傾にし碁盤の台に手をついて行う後背位だ。
昔の人は碁盤で遊んでいたからごくごく一般的だったのかもしれない。
だが、残念なことに喜助の家に碁盤はない。そもそも碁よりもいくつもの役割の違う駒を駆使して知略を巡らせる将棋の方が好きだ。

そこで改めて喜助は考えた訳である。
碁盤の代わりになるものはあるか。
適度な高さと幅を有し、かつ、風華に悟られないよう部屋に準備しておけるものはあるか、と。

「ん!ぁっ、あ!あっ・・・ん!あぁ!はぁ、っん!」

一突きするごとに彼女が淫らに啼く。
後背位からだと奥の奥まで突かれてしまうせいか、いつもよりも高い声で風華が啼き乱れる。
その様に気を良くして、つい必要以上に苛めてしまうのは致し方ないことだ。

「いや、っ、ァっ!だめ、っ、あ、ァん!」

「気持ちいい?ね?・・・どう?」

体を揺すりあげながら問うが、風華の口からは制止か嬌声以外の音は発せられない。

「風華サン、ねえ?・・・答えて?」

「や、っ、・・・だめ、っん、・・・い、や・・・!」

支える腕に力が入らなくなってきたのか、台代わりにしているものが、がたん、と揺れる。

「ほらほら、ちゃんと持ってないと、ひっくり返しますよ?」

「そんな、こと・・・、言うなら、もっと、・・・ゆっく、り、ッ!!・・あァああっ!!」

躰をびくんびくんと激しく痙攣させ風華が腕を突っ張る。
それに合わせて、腰を穿つ肉棒をより奥へと擦り付ける。
きゅうきゅうと締め上げる感覚に熱く脈打ったそれが白濁を吐き出した。





「もう!どうするんですか、これ!!」

一息つくなり、風華が薄いシーツをその美しい肢体に巻き付けながら、指差したのは畳みーーーーの、上に散った大量の灰。

「んー、大きさはちょうど良かったんスけどねぇ」

二人の間にある物議を醸し出している物体。
それは、喜助の一服と冬場の暖房代わりに使われている火鉢。
ちなみに当然だが今は火は起こしていない。
昼間に一服して、かつん、と音をさせているときに思い付いたのだ。
ああ、ちょうどいい大きさだな、と。
少々計算外だったのは、風華を愛でる自身の動きが想定よりも激しくなってしまったことか。
どうも彼女が絡むと見境がなくなって自制が利かなくなってしまう。
次からはちゃんとその辺りも考慮しよう。


「喜助さん!聞いてるんですか!?」

「あー、ハイハイ、ごめんね?掃除はボクがするから」

「返事は一度で結構です!・・・ほら、さっさと片付けますよ!」

まだ機嫌を損ねているのか「このままじゃ寝るに寝られないじゃない」とぶつぶつと呟いている風華のこめかみに唇を寄せる。

「・・・喜助さん?」

薄いシーツを巻き付けた彼女の躰に欲情した訳じゃない。
先程まで淫らに啼いていた女とは思えないほど、今は幼子のように膨れてみせる彼女のそのアンバランスさにそそられた訳じゃない。

ただ、もう一回。
そう、あと一回だけ、やってみたいんだ。

どうせ掃除するなら、もう多少の灰の量の違いなんて知れているのだから。


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