四十八手
*窓の月*

彼女を半分ほどうつ伏せに寝かせた状態で、脚を交差させるように捩じ込む。

「んっ、あぁっ、」

「どう?」

腿を擦りあげるようにして奥を穿てば、風華の奥まで抉ることが出来る。既に蜜が溢れたそこに宛がうだけでも十分な快楽を覚える。だが、自身だけが気持ちよくても意味はない。
互いに気持ちよくなってこそだ。
股で擦りあげることで風華の熟れた肉芽にコリコリと触れる。気持ちよくないはずがない。けれど、なかなか彼女は口にしてくれない。

「あっ、・・・はぁ、っ、」

半身を捻って、彼女の柔らかく質量のある乳房に手を伸ばす。しっとりと汗ばんだ肌は吸い付くようで気持ちがいい。それだけでも離れ難いというのに、指の沈み込んでいく感触が楽しくつい必要以上に揉んでしまうのは致し方ないといえよう。どうしてこんなにも女というのは柔らかいのか。さらに言えば、どうしてこんなにも彼女という人は自身を虜にして離さないのか。喜助はただただ首を捻るばかりだ。

「んんっ、喜助さん、ぁ、もう・・・」

「もう、気持ちよくなっちゃったの?」

上体を反らして、風華はとろりと蕩けた瞳を向けてきた。
その薄く開いた唇に、熱に浮かされた瞳に、ずくりと中心が疼く。
今すぐに激しくしてしまいたい。
二人で快楽に溺れてしまいたい。
喜助は堪らなくなって彼女の名を呼ぶ。

「ねぇ、風華」

「なに?」

「もう十分見れた?」

「・・・え?」

唐突な話の振りに着いてこれていない風華が瞬きを繰り返す。喉奥で笑いを殺しながら、喜助は窓の外へと視線を移す。

「月ですよ、月」

「・・・月?」

今夜は雲もなく、綺麗な三日月が見えている。
喜助の書斎兼寝室から煌々と輝くそれがよく見える。

「今夜はもう、見る余裕がなくなっちゃうと思うよ」

「どういう、・・・ひゃあ、あぁっ、!!」

横向きに寝そべった体勢で、男女ともに月を望むことが出来るという意味で呼ばれた『窓の月』。
けれど、それはあくまでその余裕があれば、だと思われる。

彼女の視線を奪うものには何であろうと嫉妬してしまう彼には、月であろうとも例外ではなく。
彼女が自力で起き上がれなくなるほどの激しい行為に及んだ彼は、それでもまだ反省している様子はなかった、ーーーとある女性のコメントが掲載されたのは、また別の話である。



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