四十八手
*茶臼のばし*
ぐぷぐぷとくぐもった音が響く。
互いに足を伸ばしているから、大袈裟に動くことは出来ない。
「これ、どう動けばいいんですか」
上になったまま、どうしていいか分からずに風華は眉尻を下げて寝転がる男に縋る。
「んー?風華の好きにしてくれたらいいよ」
目を細めて薄く嗤う男を見下ろす。
それが出来ればこんなこと訊くわけもない、と恨み言を込めて。
男の胸板に手をついて密着した体制になるまでは良かった。だが、その体制のまま、足を伸ばしてしまうと、どう動くべきかが分からない。辛うじて腰を揺する程度では動けるのだが、激しく腰を動かせば、蜜壷から彼の楔が抜けてしまう。
肉欲に溺れているつもりはないが、それでも、彼からもたされる快感は別格で、これが抜けてしまうの惜しいと思っている。浅ましく、とても口に出来ないが、脳髄を焼ききる程に突いてほしいぐらいだ。
「いいよ、ボクがしてあげる」
「え、やだ、待って!」
彼はそう愉悦に口許を歪ませたかと思うと、律動を激しくした。芯から頭の奥まで揺さぶられる感覚に酔いしれる。
「あ、あんっ、やめ、やぁ、ああッ!!」
自然に開いた唇からは蕩けた声が溢れるだけ。
どろどろに熔けた思考回路では、まともに考えることも出来ない。ただ、彼が欲しいという欲に従うだけ。
「あっ、あぁ、いやっ、」
「いや、だなんて、嘘ばっかり」
彼は嗤いながら密着した体を揺する。
上半身が擦れて、乳首が彼の胸板に擦れた。それすらも快感になり耐えがたい。
もっと、激しく。
抗えないほどの絶頂感に煽られたい。
どうすれば、この感覚から解放されるのだろうか。
「どう?もっと欲しい?」
熱く蕩けた中心を擽るように、彼の繁みと自身のものが触れあう。擦れ合うその感覚にさえ酔しれてしまう。
しかし、それもまだ物足りないものだった。
風華が言い淀んでいると、彼は腰を軽く揺すってみせた。
その動きに翻弄されて鼻にかかった声が漏れる。
忌々しげに見下ろしても、男は愉しげに目を細めるだけだ。
その緑柱色の眼は「もういいの?」と問い掛けてくる。
甘美な言葉に誘われるように、風華は口を開く。
「・・・もっと、して?」
寝ころがったままでは挿入が浅く、男性は動きにくいのだろう。しかし、女としては、擦れる恥毛や肉壁、恥骨などもたされる快感が大きく、堪らないものだ。
「これが、気持ちいいの?」
「・・・、ん、」
彼と体を寄せあっているせいか、満たされる感覚に、風華は頷いた。
臼で引く手を弛めて、愛を確かめ合う。
そんな体位なのかもしれない、と考えながら。
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