四十八手
*千鳥*

何をするでもなく、喜助はただ縁側で煙草を呑んでいた。
代わり映えのしない、見慣れたそれを眺める。
ふと気付けば、風華が斜め後ろに座って、同じようにして眺めていた。
かたり、と盆に煙管を預けて喜助は、膝上のフレアースカートで正座している彼女に、にじり寄る。

「風華、」

「ぁ、んっ、・・・ふぁ、」

彼女が正座をしていてくれたことが好都合だ。
このまま、押し倒して事に及んでしまえばそれでこの『千鳥』は達成である。

「ん、喜助さん、待って、・・・、っ、ぁ、」

口付けを深くしつつ上体をゆっくりと畳に押し倒してゆく。風華が足を伸ばしてしまわないように、自身の足でしっかりと挟み込む。
固く勃ち上がっている自身を、彼女のスカートの上から下腹部に押し付けるように前後に擦り付ける。無意識に腰を揺らし始めた風華の奥へいざ挿入しようとしたところで、彼は失態に気づいた。
風華の柔肌を何か薄い膜が覆っている。しゃらしゃらとした肌触りのモノ。そう、ストッキングだ。このまま致すわけにはいかない。だが、これを脱いでもらうには一旦風華の足を戻さなければならない。正座のまま、これを脱いでもらうのは些か難しいだろう。

「・・・ごめんね、風華」

「・・・な、に?」

喜助自身が早く入ってしまいたかったことと、正座したまま上体を倒した風華の体勢を考慮しなければならなかったことから、考えた末にあることを決断した。

被膜に爪を立てて伸ばすように引っ張ると、びぃ、と裂ける音がして、それは意味のない布と化した。

「やだ!?喜助さん、なにして、」

「だってこうしなきゃ、出来ないじゃない」

スカートの中へも手を差し入れて、中心部の薄布も裂く。

「喜助さん、まって!」

「あんまり大きい声出すと、バレちゃうでしょ?静かにしてて?」

唇にそっと人差し指を押し当てると、風華は大人しく口を閉ざす。声を押さえやすいように、彼女の両手をその小さな口許にあててやる。熱で潤んだ瞳が何か訴えるように見上げてくるが、素知らぬ振りで喜助は彼女の下着を脇にずらして猛った自身を突き入れる。

「ん、んんっ!!」

「・・・いい、いいね、・・・気持ちいいよ、風華」

腹を突き破るように、ある一点を上へ上へと擦りあげる。
肉壁が大きくうねり始める。それに合わせてさらに奥へ奥へと突けば、彼女が背中を仰け反らせて快感から逃れようとする。

「ん、ゃ、んんっ!!ンーっ!んぁっ、」

「・・・っ、うぁ、風華・・・くっ、」

脳の奥を流れる熱い血潮に任せて、中心の熱を発散した。
しばらく抱き合ったままで息を整え、ゆっくりと体を起こす。
彼女の足には穴だらけの被膜がまとわりついている。使い物にならなくなったそれを履き替える為に早々に立ち上がった風華が小さく呻いた。

「・・・ぁっ、」

「風華サン?」

「足が、痛くて、っ、ん」 

足が縺れたまま、よたよたと壁づたいに部屋に戻ろうとした風華を背後から抱き上げて喜助も部屋へ引き上げる。
事後のふらつくその足元が、千鳥の動きに似ていたから、という由来なのだろうか。
はてさて、真偽の程は故人のみぞ知る話である。



44/48


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -