四十八手
*達磨返し*

ーーーにっこり。
まさしくそんな擬音で表現されて然るべき満面の笑顔を浮かべながらにじり寄ってくる男から、後ずさる。

「風華サンたら、なんで逃げるんスか?」

「なんでって、・・・その紐は何なんですか!?」

「これ?これはですねぇ、」

喜助は両手で持った紐を、ぴんと伸ばしては弛ませ、弛ませては伸ばしつつ、喉の奥で笑う。
また一歩間合いを詰められて、更に後ずさった風華が遂に壁際に追い詰められた。

「アナタと"イイコト"をする為のものですよン♪」

にたりと口角を上げた彼に、ぞくりとして竦み上がる。
喜助がこうして笑うときは、彼女にとって"イイコト"であるわけがないのだ。

「きゃ!?」

ぐっと、肩を掴まれて彼の方に引き寄せられた、かと思った次の瞬間には既に床に引き倒されている。痛みも何もなく引き倒されたところは流石というべきか。

「風華サンは今日は達磨の役ですからね。動いちゃダメですよ?」

フレアスカートから伸びる風華の足を折り曲げさせて、腿と脛を一纏めにして先程の紐で拘束する。

「やだ、離して、」

脚を伸ばそうとしてみるが、きっちりと結ばれた紐は、弛む様子もなく風華の脚を拘束している。
脚を曲げて縛られているから、スカートは捲れ上がり、下着が露になっていることは明らかだ。

「・・・ひゃ!ゃ、んんっ」

その下着の上から秘部をぺろりと舐めあげられて腰がはねる。

「んっ、や、ぁ、ああっ、だ、め」

「ふふ、可愛い」

きゅっと丸まった足の爪先の力を抜くように、爪先を開くように、そっと彼の指を這わされる。それにさえ言葉にしがたい快感を覚えてしまう。

「あ、あっ、」

「達磨返しって女の人の髪結いの名前らしいんだけどさ、風華はどんなのか知ってる?」

ふるふると首を振る。
肌にまとわりつくように背筋を駆け抜ける快感を遣り過ごしながらでは、そもそもまともな反応など出来はしない。髪型なんてどうでもいい。
彼も分かっているだろうに。

「まァ、四十八手のこれとは関係ないのかな。普通に達磨のことで。それよりさ、」

風華の髪を掻き分けて額に触れるだけのキスを落とす。
次いで、くすぐったさに身を捩る風華のこめかみにもキスを落としてから、喜助は露になっている彼女の恥丘をそっと撫でた。

「・・・ボクも、気持ちよくなっていい?」

「・・・んっ、ぁ、はぁ・・・ん、その為に、ぁ、こんなこと、してる、ん、でしょ?」

「そうだったね、」

喜助はまた低く嗤ってから、風華の下着に手を掛ける。
熱く堅いものが、ずぷりと埋め込まれる。
ゆっくりと奥まで入ったかと思うと、すぐに入り口付近まで抜かれる。入ってくるときの衝撃もさることながら、抜かれてゆくときの壁を擦ってゆく快感も堪らない。
膝を折り畳まれた体勢では、彼の動きに任せるしかなく、風華から快楽を貪りにいくことは難しい。
仰向けに転がされて、自身で起き上がることも出来ず、ただ床に転がされているだけの達磨。

「・・・も、っぁ、好きに、っ、して、」

「そんなこと言うから、ダメなんスよ」

だから心配なんだ、と喜助が不服そうに呟く。
起き上がりこぼしのように、脚を縛られたまま、体を揺らされ続けていた風華は、それをどこか遠くで聞いていた。



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