流星の導き
Extra 2


熱を上げて、悩ましげに眉を寄せて、風華は襲いくる快感に耐えようとしている。
想像だが、すでに彼女の中心は濡れているはずだ。
そういう自身もすでに熱が集まっていて、苦しいぐらいだ。風華のすべてはいつだって、簡単に自身の熱を上げさせて、虜にしてしまうのだ。

喜助は一旦手を止めて、そんな風華の腰を持ち上げた。

「あ、なにを」

「いいから」

そうして帯を外して、彼女の浴衣を脱がせる。
前を暴いて、袖から腕を引き抜くときに、彼女が目元を赤く染めて、恥ずかしげに顔を背ける仕草が好きで、いつもわざとゆっくりと脱がせてしまう。
いつ彼女が気付くかと内心冷や汗ものなのだが、今のところ、風華自身がそれどころではないようである。

彼女を産まれたままの姿にしてから、自身の浴衣も適当に放る。

この雨のせいか、縁側だというのに、彼女はされるがままだ。
地面を跳ねる水音に、すべての音が掻き消される灰色の世界では、閉塞的で、世界に自分達以外いなくなってしまったように感じるのは誰しも同じなのだろうか。

「膝立ちのまま、そう。それで、手はこっち」

膝立ちにさせて、自身の肩に手をつかせてやってから、風華の茂みの奥に指先を滑らせる。
ざあざあ、ばたばた、と絶え間なく続く雨音の合間に、ぬちゃぬちゃと粘ついた卑猥な音がする。

「ひ、ぁ、やだっ、」

「今日はまだそんなに触ってないんスけど。指舐められるの、感じちゃいました?」

「ん、そんな、こと、ああっ!」

入り口を擦っていた指を秘所に捩じ込む。狭い肉壁がぎゅうぎゅうと押し返してくる。
あまり弄るとこれで達してしまいそうなので、喜助は指を引き抜くと、胡座をかいた上に風華を招いた。

「おいで、風華」

「でも、」

「だぁめ。自分で入れてごらん」 

「そんな」

「だって今日は風華から誘ったでしょ?」

「ばか、」

目に涙を浮かべて、しばらく喜助と視線を絡ませてから、観念したように、風華は喜助の上に跨がる。
そうして、そそりたつ喜助自身にその小さな手を沿えて、ゆっくりと腰を下ろしていく。


「は、ぁっ、いいよ、風華」

「ぁあ、はぁ、っあ」


何度も風華と体を繋げているが、彼女にさせるのはこれが初めてだった。
女性優位の体勢というわけではないが、彼女に入れさせるのも悪くはない。
ゆっくりと飲み込まれていく自身を見るのは、思った以上に興奮させるようだ。
いつか騎乗位もさせよう、とその日喜助は勝手に決めていた。

すべてを飲み込んでから、風華はまた腰をあげて、それからまたゆっくりと腰を下ろす。
動く度に、ぐちゅぐちゅと蜜が溢れる音がしているが、激しい音ではなく、雨音にほぼ消されてしまっている。
そんなじれったい動作を数回繰り返してから、泣きそうな声で音を上げた。

「喜助さん、あの」

「どうしたの?もう動かないの?」

「もう、お願い、許して」

頬から涙が伝って、心身ともに限界なのだろう。
各いう自身も、先ほどからの温い刺激では生殺しに近かった。

「ごめんごめん、よく頑張ったね。いい子だ」

はらはらと涙を溢す風華をあやすように頭をぽんぽんと数回撫でてやる。
彼女の涙が止まった頃合いを見計らってから、腰を撫で擦り、臀部を掴んで強く引き下ろした。


「あぁああんっ!!」

「く、っ」

「あ!はぁんっ!あん!」

「はぁ、もっと、風華も、跳ねて!」

臀部を掴んでは下ろし、掴んでは下ろし。
抜き差しする度に風華から高い声があがる。
時折、跳ねるように風華の腰が逃げを打つのでそれさえも抑え込んで突き入れる。

ぱちゅん、ぱちゅんと濡れた音と、肌のぶつかる音が混ざった音が響く。
その振動にあわせて、眼前で毬のように弾む胸の頂に、かりっと噛み付くと、風華は背を仰け反らせる。

「はああっ!だめぇえ!」

「うぁ、風華、」

もう雨音は二人の耳には届いていなかった。

「いや、もう、やああっ!!」

「もう、イっ、く、ぁ、はぁ」


きゅうっと風華の中がきつく締まり、それに搾り取られるようにして、熱い欲を吐き出した。

くたりと、体を預けてきた風華を裸のまま抱き締めると、どくどくと、脈打つ音が聞こえた。
忘我の表情を浮かべたまま、風華が首筋に鼻先を擦り寄せてくる。
普段はそうでもないのだが、事後はまるで子猫のような甘え方をみせる。
本当に彼女は見ていて飽きない。
こんなに色んな表情を見せてくれるなんて。


「なんか風華サンて、紫陽花みたいっスね」

「どういう意味ですか」


途端にじろりと睨まれた。
さすがにこれは失言だったらしい。
そもそも、今しがた子供だましな仕様もない遊びに付き合わせてしまったばかりなのだから。


けれど、やはり紫陽花みたいだ。
移り気だなんて称されるけれど、そうではなくて。
咲き始めから終わりまで、色んな色に染まるその花が、彼女の表情みたいだと思うのだ。

そうして、自身は雨であればいい。
彼女が色んな色を魅せる為の、恵みの雨であれたらいいと。
そう思えば、いくらかこの梅雨も好きになれそうな気がする。


あはは、と笑うだけで答える気がない様子の喜助に、風華は呆れた様子で「もう」と呟いて、またぎゅうとしがみついた。
雨の冷えた空気で、彼女が風邪を引いてしまわないように、と喜助は風華を抱えて奥へ引き上げた。
折角用意してくれた酒は勿体無いけれど、また次の機会にでも堪能しよう。

今は二人、この閉鎖された、甘い空気を味わって眠りにつきたい。


しとしと。
ぽたぽた。

雨音は、いつの間にか、優しい音に変わっていた。



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