これの続き
「はぁ……」
ふと、隣から溜め息が聞こえた。
「どうしたんですか、夕香さん」
「虎丸くん……」
「俺で良ければ話聞きますけど」
そう言えば夕香さんは話し始める。
やはりと言ったところか、恋愛関係の悩みのようだ。
夕香さんも、もう18歳。
恋に悩む年頃というわけだ。
「好きな人にはもう好きな人がいる、と。それで諦めなきゃいけないって思ってるのに諦めきれない……ですか」
「そうなの」
あぁ今の夕香さんは俺と同じだ。
でも俺は諦めるつもりなんてないけど。
「夕香さん」
彼女の名前を呼べば、「ん?」と俺を見て首を傾げる。
本当は全て知っている。
10年前、初めて彼女と出会ったときから、俺は彼女が好きでそれからずっと彼女を見ていたから。
彼女が佐久間さんを想い、でも佐久間さんには音無さんがいるということも、全て。
俺は知っていたから。
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