分かっていたの。
私がまだ小さかった、FFIのお兄ちゃんの試合の応援に行ったときに出会ったあの人。
とても綺麗な人で、でもどこか影があって。
幼心に芽生えた小さな憧れ。
それは私がこの10年を過ごすうちに、変化した。
「佐久間さん!」
パタパタと駆け寄れば、佐久間さんは私に気づいて笑ってくれる。
「夕香ちゃんか、久しぶりだな」
高校生になってからはなかなか佐久間さんに会う機会がなくて、しばらく会えていなかった。
そう、彼は私の憧れの人。
大人になった彼は、また一段と綺麗になったように思う。
昔のように、どこか闇を抱えた雰囲気さえ今はもう殆ど感じさせない。
「今日はこれから部活ですか?」
「あぁ。新しい帝国イレブンをしっかり鍛えないと。鬼道も居ないし、俺が頑張らないとな」
そう言って強気に微笑む彼に、トクンと胸が鳴る。
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