これで食べなきゃ男の恥






『えへへ…白川しゃちょっ!飲みましょう。』

「ああ…。」

『今日私がんばりましたよ!』

「あぁ…たすかった。」

『へへ…よかったです!』


俺はどうやらミョウジナマエというハンターを見誤っていたらしい。

ミョウジハンターを派遣するようなレイドはレベルの高いゲートが主なのでそんなに頻繁には会わない。
そんな中俺を見つけるたびに『白川社長!』とパアッと花が咲くように笑う彼女は
どうみても可憐な女性であって、守ってあげなければという保護欲を掻き立てられる。
あそこまで露骨に好意を全面に出されて絆されない男がいるなら見てみたいくらいだ。
レイド中はキリッとしているものの、ふとした時に目が合えばふわりと笑うから
どうしても彼女がS級ということを忘れてしまう。

『天才S級ヒーラーなので、ドンと任せてください!』なんて軽口を叩くくらいにはレイドに慣れて、依頼料を上回る働きをしてくれる
怪我しても中程度の傷であれば瞬時に回復する魔法を、強化魔法とともにレイドが始まるとかけてくれる
それだけでハンターたちの安心ははかりしれない。
それだけでカバー出来ないほどの怪我でも瞬時に回復魔法をかける集中力は恐ろしい。

ゲートのレベルが上がれば比例してモンスターも強くなる。
知能的なやつは真っ先にヒーラーを潰してくる
だから守ってやらないといけない

俺が彼女を守らなければ。剛のようなことには絶対にさせない。

そう思っていたのに。




一瞬だった。視覚から恐ろしい速さで彼女に襲いかかるボスモンスター


あの時の光景とシンクロする

「ナマエ!!!」

身体が動かない

一瞬だった

ドゴォオォッ!!!

すごい勢いで何かが吹き飛んでダンジョン内に砂埃が舞う


『いったぁあい!!!』

「ナマエ?」

砂埃が落ち着くと
痛い痛いとわめくミョウジハンターと
完全にのびているボスモンスター


「………は?」

『めちゃくちゃ痛いです!あいつ鬱陶しいんで腕一本くれてやりましたよ!まじ痛い!感覚残ってる!え、まさかあいつ死んでないよね?』

身体を貫かれそうなとこを避けたら捕まえきれないから
腕をわざと斬られて隙を与えたらしい。瞬時に回復すると同時に強化魔法重ねがけした拳で殴りつけたんだとか

おい、お前ヒーラーだろう。

『めっちゃ痛いです!もう二度とやりません!』

「あ、ああ。そうしてくれ。」


その後『私めっちゃがんばりました!白川社長!!ね?ね?』としつこいので
飯でも奢ると言うと。やった!と子供のようにはしゃいで………今に至る

『二人で飲むのめっちゃレアですね!いつもレイド行ったみんなも一緒ですし。』

たしかに、いつもは飲みに行ったとしても他のハンターも一緒だ。完全に頭がまわっていない。
動揺してるのか?気を抜いているつもりはなかったのに危ない目に会わせてしまった
あの瞬間心臓が凍りついたみたいに一瞬で身体の奥が冷たくなった。
剛を思い出すからか?

本当にそれだけか?


『ナマエって名前呼んでくれましたね。』

「あ?」

『ダンジョンで……えへへ。』

なんでそんなに嬉しそうなんだ

「ナマエ」

『ぇ……。』

「ナマエ」

ヘラヘラしていた顔がぶああっと一瞬で真っ赤になった

「マヌケ面だな。」

『ひ、ひどいです!く……くそぅ。』

ぐびっと酒を煽る。
こんなことでいちいち照れるなんて子供みたいなやつだな。

『大虎さんっ!』

真っ赤な顔で俺の名を呼ぶ

目を合わせてじっと見つめていると

ナマエはじわじわと涙目になってふっと目をそらす
仕返しになってないだろそれじゃあ

「ナマエ」

こうするんだよ
ぐいっと身を乗り出して右手で彼女の頬に手を添える

「ナマエ」

覗き込むように目を合わせる

『っ!!!!』

「ふっ……ははっ!顔、真っ赤。かわいいな。」

お腹いたい。彼女から手を離して椅子に座り直す。おもしろすぎる。
ここで調子に乗ったのが悪かった

「おいおい、飲みすぎなんじゃないのか?」

『まだ酔ってません!』

「酔ってるやつは酔ってないって言うもんなんだよ。」

『白川社長のおごりなので、飲めるとこまで飲みます!』

「悪かった悪かったから。な?」

『けっ。』

「ほら、水飲め。」

『うー……。悪いと思ってますか?』

「思ってる思ってる。」

『2回言った……。』

「悪かった。からかいすぎた。」

『なら、私のお願いきいてください。今日がんばったご褒美も込でお願いします。』

「あー?なんだ?」

『……ホテルいきたいです。』

「……は。」

『今日。このあと。』

「いや、ちょっと待て」

『…なんでも聞いてくれるって言ったじゃないですか!』

「(いや、言ってないだろ。)」

こいつ意味わかってるのか?
ホテルって、あのホテルって意味だよな?

『………行きましょう?』

待て待て、ちょっとまて。


『………いやですか?』


ごくり。と喉がなる音が聞こえた。


















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