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紫さんとお付き合いがはじまってとても幸せな日々が続いている
びっくりするほど、彼は底抜けに優しくて甘い

「ナマエちゃん」と蕩けるような優しい声色で呼ぶ彼に酔って
全身の感覚を忘れてしまいそうになる


でも1つだけ心に引っかかることがあるのだ



紫さんはお仕事が忙しくてなかなか時間もないのに、少しでも会う時間をつくってくれる
一緒にご飯を食べて、少しお酒も飲んで
お酒と彼の甘い声に、ふわふわと心地よくなっていると
紫さんは長くて節のある指を私の指に絡めて
私は頭が沸騰しそうなくらいぐらぐらして
お腹の奥がぎゅうぅと熱くなる

私をそうしておいて彼は

「そろそろ帰ろうか」と少し明るい声で言うのだ
そこには先程までの熱はなくて
そして私を家まで送ってくれる


そう、送ってくれる

そして彼は自分の家に帰るのだ


初めてのお泊りデートのあの時は、ホテルのベッドがツインだったのもあり
ハグやキスはあったものの健全な雰囲気でそれぞれのベッドに入り、そのまま爽やかな朝を迎えた
紫さんは明るくて優しい。というありきたりだけど実際は難しいその性格を具現化したような人だ
デートの時も、からっと眩しい笑顔をしたと思えば
ふとした時に自然とスキンシップをぶっこんでくる。その時は彼の指先から熱を感じるくらい甘くて私は一瞬で頭がくらくらするのに
その次の瞬間にはいつもの彼に戻っていたりする

私の頭はもう壊れそうなのだ


お互いいい年だから、付き合ってしまえば身体の関係に至るまでは一瞬だと思っていた
なんならもはや秒でそういう事になるんじゃないのかな?と思っていた
紫さんは、ひとり暮らしなので外でご飯を食べたとしても
うちくる?なんて流れになったり、飲み屋街の側にはホテルだってあるものだ
なのに未だにそういう事に至っていない

そういう雰囲気にしてるくせにだ

いっぱい抱きしめて、いっぱいキスして
耳元で甘い声で好きだと囁くくせに
名残惜しそうにするくせにそのまま帰るのだ


外で美味しいご飯を食べに行ったり
どこそこ買い物やらなにやら行くのはもちろん楽しいのだが
正直私はめちゃくちゃインドアなので
お家デートがしたい
ゆっくり、まったりご飯作って食べたり、映画借りてみたりしたい!そしてそのままソファーでいちゃいちゃしながらごにょごにょしてみたい!!
そんなにお付き合いの経験がないので、エッチなことの経験も多くはないけれど
あそこまでデートの度に何回も何回も頭トロトロにされて意識させられて
純情ぶっていられるはずもない


そしてなぜ私は人見知りのくせにシェアハウスなんていうものに住んでいるのだ
どうせ仕事遅くまであるし、平日寝るだけだし
休みの日なんて寝てるかお菓子食べてるだけだからなーなんて思って
え。家賃安い!しかも内装おしゃれ!しかもめちゃ都心!別に住人どうしで鍋パとかわけわからん行事がなさそうならここでよくない?なんて思ってしまった私馬鹿!
シェアハウスではあるものの、あくまで大人同士プライベートは守られてはいるけど
そこに彼氏を連れ込めるほどのメンタルは私にはないのだ

紫さんのお家に行きたいけど家主の誘いもないのに
行きたいです。あわよくば泊まりに行きたいです。と言うのは流石にできず

デートの度に焦らされた
私の頭はもう壊れそうなのだ











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