07




ついに、千夏がルーファウスと食事会をする日が訪れた。
ルーファウスはどうやらお高いレストランに入るらしく、ドレスコードがなんちゃらで届いたワンピースは、少し眉をひそめるくらいに、一目で高価なものだとわかった。この際、サイズがあっているだとかは気にしなかった。

「汚れたらどうしよう。」
「千夏、きれいだよ。かわいい!」

不安そうにする千夏とは逆にエアリスはきゃあきゃあと喜んでいる。まるで自分のことのように。
千夏はそんなエアリスを見て、高価なものだということは忘れておくことにした。

「帰ったら、エアリスにも着させてあげるね。とりあえず今日は、私が着るということで。」
「着させてくれるの?嬉しい!」

ワンピースの上に上着を羽織って、そしてこれまた贈り物の小さめのポーチを持って、千夏はエアリス宅を出た。



駅にまでは自転車で行った。
電車に乗り、降りた先には黒スーツの見覚えのある、ルーファウスの側近の髪の長い男とこれまた黒塗りの車が待っていた。
男は迎えにきたと言い、車の扉を開ける。

「人力自動ドアタクシー…。」
「…?どうかなさいましたか?」

なんでもないです!と、千夏は食い気味で返事をする。
されたこともないような待遇に、千夏は驚きっぱなしだった。
まるでお金持ちのお嬢さまみたいねと、車の運転手となったルーファウスの側近に呟いた。
返事は予想どうり質素なもので、はい、そうですね。とこの二言で終えられた。
運転手との会話はそこで最後になり、千夏も仕事だから仕方ないかと会話を諦める。その後の千夏はずっと、街の景色を眺めて車が止まるのを待った。





「こんにちは、ルーファウス。いい天気…なのかな?」

生憎にも、今日の天気は曇り気味だった。
ルーファウスは困ったような笑みを見せていい天気ではないなと言い、千夏の手を引き、転ばないようにエスコートした。
千夏も初めての高さのヒールを履いて歩きにくいため、ルーファウスに身を任せて進むことにした。

「長く待たせて済まなかった。なかなか、時間が作れなくてな。」
「うん、ルーファウス忙しそうだもんね。大丈夫だよ?私いつでも時間あるから。」

ルーファウスとの食事会は神羅ビルではない違うビルの最上階にあるレストランで行われた。
ルーファウスはこの場に慣れていたのか、気にした様子もなく千夏に椅子を勧めたりしていたが、千夏は色々と汚してしまったらどうしよう、ここの食事は量が少ないくせに馬鹿に高いのだろうなどとしか考えてなかった。

「…ずいぶん、高そうだね。」
「これでも気を使って安い方だ。どうする、千夏。魚と肉があるが…お前は魚か。」

千夏は素直に頷いた。
その後も、語り合いながらの食事は続いた。
会話の内容は、とても他愛のないものだった…ので、ここでは割愛させてもらうことにする。(趣味や日課だとか、噂話程度だ。)

「ありがとね、ルーファウス。ただ自転車の後ろに乗せただけなのに、食事誘ってくれて、楽しかったよ?」
「ああ、私も有意義な時間を過ごせたよ。たまにはいいかもしれないな。またいつか誘っても…」

ルーファウスも千夏も食事を終え、いざ帰ろうという時だった。

ガゥン!ガン!
ガシャン!
キャァァアアアア!

けたたましい銃声、ガラスの割れる音、誰か女性の悲鳴。
まさに、事件だった。

「こんなかにルーファウス神羅はいるかぁッ!!」

いかにも、リーダーらしき男が銃口を天井に向け、大声で叫ぶ。
二人は慌てることもなく、テーブルの影に隠れていた。
名前を叫ばれた相手をジトリと睨むと、やれやれと呆れるような表情しかしていなかった。
とうやらこのような展開の場数は結構な数踏んでいるようだった。

「ルーファウス、どうするの?」
「そうだな、ああいう連中はしつこいから、捕まってやるというのも手だな」
「捕まりに行くの?」
「思い知らせるというのも悪くないだろう?これ以上被害が出るのも面倒だ」
「あと、私ルーファウスとの食事はもうやめておくね」
「そうか…それは残念だ」

確かにそうだけど…。
という前に、ルーファウスは立ち上がり、テーブルの影から出て行ってしまった。
手を伸ばし、ルーファウスのスーツの裾をくいっと引くも、ルーファウスはその手をそっと外してテロリストのところまで行ってしまった。

「全く、不粋な連中しかいないようだな。」
「こちとらスラム育ちなもんでね…プレートの上の奴らの作法なんざカケラもしらねぇからな!」

ルーファウスは、余裕の表情でテロリストと話していた。
テロリストはそれが気に食わないらしく、少しの思案の後、こう言った。

「待て、お前の連れがいたろう。」

その言葉にルーファウスの顔からは一気に余裕が消えた。
それがいたく気に入ったらしく、テロリストはにやりと、気味の悪い笑みを浮かべた。

「さぁ!お前の連れとやらはどいつだ!?」

千夏は逃げなければと考えたが、非常口も正面入口も塞がれている今、どうしようもなかった。
八方塞がり、まさにこのことであった。
焦って、思考が鈍る。
だからこそ、背後に迫っていた男に気づけなかった。

「きゃああ!」
「こいつですよ、リーダー!俺ぁ見てましたからね!」
「でかした、連れてこい!」

ぐい、と手を一気に引っ張り上げられ、テーブルの影から千夏は引きずり出されてしまう。
いきなりのことで驚き、そして恐れを抱いた千夏は、とっさに抵抗してしまう。

「はっ…はなし、離して!」
「ちっ…めんどくせぇ、おとなしくしろ!」

その男は、抵抗する千夏の頭部を容赦なく殴った。
昔から鍛えているわけでもなく、喧嘩も殴り合いもしたことのない千夏の意識は簡単に飛んでしまった。

「貴様…巫山戯た真似を…!」
「これで、大人しくついてきてくれるよなぁ?坊ちゃん!」

テロリストたちは、そのビルを占拠し、人質を100人以上とり事件は始まった。



一方そのころ、セフィロスは神羅ビルに帰還したばかりであった。
Sランク以上の難関任務を難なく終え、いざ今日はもう休もうとした頃に、テロリストの事件は起こった。

「やはり、プレジデントの血筋は根絶やしにすべきなんじゃないか?」
「おちつけ、セフィロス。これをさっさと終わらせればいいことなんだ。」

セフィロスは指輪を見つけたあの日から不機嫌なオーラを辺りに撒き散らしまくっていた。
それは感じる者により悪寒、殺気、圧力など、色々なモノに姿を変えた。
どれにしても、セフィロスが今とても不機嫌であるということを示すことに支障はない。
そしてその不機嫌さは日に日に積もり、発散される当てもない。
不機嫌なことはよくあったが、ここまで悪いことは滅多にないというのに、それがより悪くなろうとしている。
ソルジャーたちは全員、まさに今プレジデントの血筋、ルーファウスを憎んだ。
だが時期社長、近々副社長に就任する彼を悪く言える者はいない。
みな自分の首が可愛いからだ。

「明日からしばらくの休暇をもぎ取ってやる。」
「ああ、そうしておけセフィロス。」

こんなもの、雑兵にでもやらせておけばいいのにと恨みながらも、セフィロスは正宗を握り直した。
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