My nane is・・・
月兎/1.2.3.4.5.6



行為を終えるとユーリは、バーナビーの拘束を解いた。
それでもまだ、薬の効果が持続しているバーナビーは自力で立ち上がることができない。
薬のせいだけではなく、ユーリに行われた行為のせいでひどく身体が重かった。
気を抜けばすぐ、意識が遠ざかりそうになる。
汚れた床に転がったまま、涼しげな顔で服装を整えるユーリを見上げた。
この男は、一体どういうつもりなのだろうか。

視線が合うと、ユーリはバーナビーに向かって手を差し延べてきた。

「シャワーでも浴びますか?それとも帰りたいのなら自宅まで送りますよ」

それはいつも通りの、バーナビーが知るユーリの立ち居振る舞いだった。
先程までの相手と同一人物とはとても思えない。

「……そのまま帰す、というのか」

差し延べた手が取られる気配がないとわかると、ユーリはバーナビーから離れ椅子へと腰掛けた。

「目的は果たしましたから」

「目的?」

ユーリは自嘲的な笑みを浮かべた。

「ワイルドタイガー、彼は自分が傷付くより他人が傷付くほうが、ダメージを受けるでしょう?」

ユーリから虎徹の名前を出され、バーナビーの顔には明らかに焦りの色が浮かんだ。

「……何故、ワイルドタイガーにこだわるんだ」

その問いには答えぬまま、ユーリは言葉を続ける。

「私が貴方にしたことを知ったら、ワイルドタイガーはどうするでしょうね。私を殺しに来るでしょうか」

「……随分、楽しそうだな……、殺されたいのか?」

ユーリの瞳が細くなり、唇の両端が釣り上がる。

「彼に殺されるなら、それもいいですね。私を殺したことで彼が一生苦しむのなら、悪くありません」

「……あんたは、狂ってる……」

落ちてくる瞼の重みに抗えず、目を閉じたバーナビーに言葉が届いているかはわからなかったがユーリは言葉を続けた。

「知っていますよ、だから私の名前は、ルナティックなんです」

ユーリの声を遠くに聴きながら、バーナビーは意識を手放した。





Fin.



[戻る]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -