There is no one but you.
「おじさんがプレゼントって話、あれはまだ有効ですか?」
いつものトレーニングを終えてシャワーも浴びて、これから帰ろうかなーってタイミングで、唐突にバニーが切り出した。
「ん?あー、あぁ!勿論」
すっかり忘れてたけどそれは言わない。
嫌がってたくせに、何で今更って思ったけどそれも言わない。
「じゃあ今夜、うちに来てくれませんか?」
珍しい申し出に驚きつつも、今夜は何も予定がないことを頭の中で確認する。
「いいけど。珍しいな、バニーちゃんから誘ってくれるなんて」
いつもは俺から飯に誘ったりする。
ほら、上司からも仲良くするようにって言われてるし。
まあそれを抜きにしても、バニーちゃんはちょっとほっとけないとこがある。
庇護欲を擽るっつーか。
何でだろーな、いつも「僕のプライベートに干渉しないで下さい」なんて冷たく断られて、可愛くないったらありゃしないのに。
「たまには一人で過ごしたくない夜もあるんですよ」
そう微笑みかけられて、思わずキュンとしちまった。
バニーちゃんにもそんなことがあるのか、よしよし、おじさんが可愛がってあげようじゃないの!
なんて浮かれてた俺が馬鹿でした。
バニーちゃんは俺の想像の斜め上をいく男だった。
バニーちゃんの部屋に着いて、酒を飲んで他愛ない話をして。
急に強烈な睡魔に襲われ、あれ、おかしいな、と思った時にはもう手遅れだった。
気が付くと視界は闇だった。
部屋が暗いわけじゃない、俺は目隠しをされているらしい。
勿論、外そうと腕を動かそうとしたが、動かない。
身体が鉛のように重く、腕が上がらない。
「おい、バニー?」
声は出るようだ、俺は意識を無くす前まで一緒に飲んでいたはずの相手の名を呼んでみた。
「ここにいますよ、おじさん」
目が見えず、身体も動かないというのはなかなかに恐怖を感じるものだ。
バニーを呼ぶ俺の声も、情けないことに少し震えていたはずだ。
バニーの声が聴こえて、俺は少し安心した。
だが、ぼんやりとした頭で思考を巡らす。
俺が寝ているのはベッドのようだ。
俺はバニーと飲んでいた途中眠くなって、それで…
「すみません、一服盛らせてもらいました。でも安心して下さい、そんなヤバい薬じゃありませんし、1時間くらいすれば動けますよ」
俺の思考を遮り、飛び込んできたバニーの声に俺は状況を理解した。
現状を作り上げた犯人はバニーなのか。
でも、何の為に?
「バニー、こりゃ一体、何の真似だ?」
バニーの手が俺の身体に触れた。
ひんやりとしたその手に、小さく息を詰める。
今気付いたが、俺は服を脱がされているらしい。
部屋の温度は適温に保たれていて寒さは感じないけども。
「プレゼントを戴こうと思いまして」
いや、確かに俺がプレゼントって言ったけど!
まさか、一服盛られて目隠しされて、全裸にされるなんて、そんなこと普通有り得ないだろ!
しかも、これで終わりとは思えない。
これから何をされるのか、俺は心底不安だった。
「あの、バーナビーさん?俺は今から何されるのかなー、なんて」
身体が動かない俺は、完全に不利な立場だ。
あまりバニーを刺激しないように、恐る恐る尋ねてみた。
「安心して下さい、痛いことなんてしませんから」
「あ、そうなの?」
もしかしてバニーには女王様みたいな性癖があって(ほら、ツンツンしてるし?)、鞭で打たれたりヒールで踏まれたり、なんてことが待ってるんじゃないかって少し考えてた俺は、ちょっと拍子抜けした。
「もしかしておじさんは痛いのが好きなんですか?」
「ないない!それはない!」
全力で否定した。
「必死なとこが怪しいですけど…、まあいいです」
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