8.5

ただ名乗っただけなのに、女の顔色は今まで見た中で一番悪くなっていた。まるで此処に無い身体がぺしゃんこに潰されてしまったかのような、そんな色。どんな未来に生きているか知ったこっちゃないが、名前一つロクに名乗らない奴がよく信頼しろなんて言えたもんだと、ようやくその名を口にした女──アシュリーを睥睨する。これがそいつの本名なのか俺に知る由はないが、確信はあった。こいつの言うことが全て本当だとしたら、意図せず『時間旅行』で俺の目の前にやってきた瞬間こそが、こいつのあるがまま、何一つ取り繕わない素顔だった、と考えるのが自然だ。だとしたら、そんな中で名乗った名前こそが、本名だと判断するに至ったわけだが。

震える唇をぐっと噛み締め、何に耐え忍んでいるか知らないが、視線を下に落としたまま黙りこくる女。如何にも被害者ですってツラが、心底苛立つ。可哀想なヒロインのつもりなんだろう。この世界で一番、不幸な魔女のつもりなんだろう。そりゃあさ、実際、自分が同じ立場だったとしたら、きっと俺はこいつほど冷静でいられる自信はない。騒いで、暴れて、納得できないとただゴネて。そんな姿が想像できると分かっていながら、それでもこいつの態度は気に入らなかった。ムカついた。言ってしまえば『嫌い』だった。そりゃ、大変なんだろうさ。辛いんだろうさ。でもそんなの、お前だけじゃねえだろ。お前という未知を目の前にしてる俺たちだって、大変だろうが。辛いだろうが。そんな不安や苦労を飲み込んで、信じると言ったダンブルドアやフラメルの善意を、こいつは今尚踏みにじろうとする。そういう面の皮の厚さに、嫌悪感が募る。



「(これから先、大丈夫かよ……)」



俺、こいつと一緒に授業受けたりするんだろ?

……駄目だ、トラブルになる未来しか見えねえ。そりゃスニベリーと机並べろって言われるよりはマシだろうが、それでも嫌いな奴と顔合わせて、おまけにこいつのために研究を続けなきゃいけない。どう考えてもいい気分でいられるはずがない。いやいや、フラメルやダンブルドアでさえ手に余るほどの一大事。ガキっぽい感情は抑えなきゃいけない。そんなことは分かってる。分かってる、のに。

そんなことを考えているのを見抜いたとでもいうのか。女の不安げな黒い目が、俺の方に向いた。しかし、ぎょっと顔を引きつらせる俺と対照的に、女はたった今夢から覚めたかのように、表情がぎゅっと引き締まった。



「……?」



不審に思う俺の視線に気付いていないようだ。女は目を閉じ、ゆっくりと深呼吸している。その首の下のどこにも肺なんかないというのに、おかしな光景だ。敢えて問いただすことはしない、という言葉に嘘はないようで、フラメルやダンブルドアは女が自ら口を開くのを待っているようだった。

やがてその女は、ゆっくりを瞼を押し上げた。



「──失礼。取り乱しました」



そうして女は、先ほどの動揺が嘘のように静かに言い放った。青白かった横顔は嘘のように、きりりとしている。ちっ、と誰に聞かせるでもない舌打ちを胸の中で打つ。見るまでもなく、どうやら自己解決したらしい。その冷静さにも腹が立つ。早すぎるだろ。普通、こんな状況、もっとパニックになったっていいのに。先ほどは動揺を顔に出すその未熟さに腹が立っていたのに、いざ冷静に対処されてもそれはそれでムカついた。だめだこいつ、何してても苛立つ。

フラメルは気にはならないのか、ほーん、と短く呟いた。



「……一応聞いとくが、今後はアシュリー・グレンジャーで構わないんだな?」

「はい。それが今の[・・]、私の名前です」



アシュリー・グレンジャーは力強く頷いた。

……グレンジャー、か。ファミリーネームには聞き覚えはない。少なくとも、聖二十八族に連なる連中でもないし、名立たる純血一家、とも記憶が照合しない。顔にそぐわず、その響きから西洋生まれであることが分かる。東洋人との混血か。にしては顔立ちに西洋の血が入っているとは思えない。上の学年にもいたが、所謂『華僑』って奴だろうか。いや、グレンジャー家とやらに養子に入った可能性だってある。そもそも、こいつ何度も死んでは蘇ってるみたいだしな。『この顔』と『名乗った名前』が合致しているとは、限らない。



『おかげで俺の目には、お前の顔が二重にも三重にもダブって視える瞬間がある。緑の目に黒髪、白人の女が視える時もあれば、黒髪に紅い目をした顔の男が視える時もある』



さっきフラメルが言った言葉だ。要するに、こいつは何度も死んでは違う肉体に宿って蘇ってる、ということだ。その肉体はどのように調達されるのか。一度死んで、赤ん坊からやり直すのか、今回みたいに魂のない肉体──要は誰かの死体に宿ることで蘇るのか。俺の予想では前者だな。魂は肉体を形作るもんだからな。

Aという肉体で一度死んで、Bの肉体の赤ん坊に生まれ変わって育っていけば、Bの肉体にはAの魂が混在する。フラメルは違う顔が二重にも三重にもダブって見えると言った。それはつまり、Bの肉体ではBとしての魂が育ちながら、Aの魂を内包、或いはAの魂と共存していた、と考えられる。そしてABの魂を持つBの肉体が死に、次はCの肉体に……という形で死んでは生まれ変わっていくのなら、いくつもの肉体を経ることで、こいつはいくつもの人生を歩んだということになる。対して後者は、Aの魂を持ったままBの肉体で甦る。BにはBで歩んだ人生があるはずだが、Aはそれを知る由もない。仮にある程度見知った関係だったとはいえ、AはAだ、Bに突然成り代わるなんて出来っこない。仮にBのまま振る舞うことを強いられたAの魂が、やがてBの魂へと変貌するだろうか。……そう考えると、やはり前者の考えの方がいい線いってると思う。

ただ、アシュリーという名前に強い思い入れ、或いは直近で名乗っていた名前、という可能性は極めて高い。俺の顔見て咄嗟にアシュリーであることを訴えたんだから、少なくともアシュリー・グレンジャーと未来のシリウス・ブラックは顔見知り、おまけにそこそこ懇意だったと分かる。そして何より、俺の顔見て名前が分かるぐらい、こいつにとってシリウス・ブラックは『記憶に新しい関係』なんだ。つまりそれは、近いうちにこいつとの関係が結ばれる、ってことだ。

こんな不誠実を形にしたような奴と──俺が?



「(……想像、できねえけど)」



いや、やめよう。どんな出会いになるのか、考えたって浮かびやしない。未来のことなんか考えてる暇ねえし。今は目の前のことに集中だ。ダンブルドアが書いた名前の綴りを訂正する女を横目に、ため息をつく。問題は山積みだ。子どもだから、学生だから関係ない──なんて、言い逃れ出来ない。俺も当事者としての、責任を果たさなきゃならないんだから。

ダンブルドアはアシュリー・グレンジャーの名前をいくつかの書類に書き込むと、羊皮紙を丸めて革ひもで縛り、止まり木で休んでいる不死鳥の足に括り付けた。不死鳥は一声、旋律を奏でるように鳴くと、金とオレンジの羽根を目一杯広げて一瞬で燃え上がった。驚く間もなく不死鳥は一握りの灰を残すと、その場から姿を消したのだった。

俺以外はそんな光景が当たり前のように映っているのか、誰も気に留めずに話を進める。



「さて、これで君も晴れて九月よりこの時代のホグワーツ生じゃ。アシュリー・グレンジャー嬢、君が元の時代に戻れるようわしらは尽力すると約束するし、君が生きる為に必要な金子や権利を提供し、君の正体を脅かす者がいればその障害を取り除くための手段も講じよう」

「──はい」

「わしらは君がこの先を生きる未来の友と信じ、善良なる未来の為に君から情報を奪うような無礼はせぬと誓おう。アシュリー、君はシリウス・ブラックと共に錬金術を受講し、フラメルやわしを交えて『未来旅行』実現のため、知恵を絞るとよい。我々は人脈を最大限に利用し、収拾できるだけの情報をホグワーツに集めようぞ」

「……本当に、本当に助かります……お金は必ず、未来で返しますので……」



つらつらと、聞けば聞くほどにこいつにとって都合の良すぎる話。流石に罪悪感の一つもあるのか、女は急にしおらしくなる。しかし、そんな首だけ女を見るダンブルドアの目は、まだ厳しい。



「──そうなると、じゃ。解決すべき問題が浮かび上がってくる」



この後の及んでまだ何かあるのか。今度は何だといい加減めんどくさくなってきながら、ひとまず真面目な顔を取り繕ってダンブルドアの言葉の続きを待つ。だが、その皺の寄った唇から紡がれたのは、予想外の言葉で。



「君の住まいじゃ。ホグワーツが始まるまでの、二か月をどこで過ごすか」

「、え?」



これにはこいつも予想外だったのか、間の抜けたような声を上げた。俺もまた、ダンブルドアの意図を読めずにいると、正面に座るフラメルがなるほど、と唸った。



「何故なれば。アシュリー、我々は君を監視下に置く必要があるからじゃ」



言い辛そうに、そう告げるダンブルドア。え、今更。そんなことをポロっと零しそうになったが、そんなことを言い出せる雰囲気でないことぐらい俺にも分かる。だから飲み込んだ。だから黙った。

こいつが俺たちにとって、どんだけ危険かは今更述べるまでもない。『死んでは生まれ変わる』、『ホムンクルスに寄生する正体不明の魂』、『未来から魂だけで時間旅行してきた』。俺たちがたった数時間、こいつから引き出せた情報だけでも神秘部の連中の一生分の研究結果に値するだろうに、この上この女はまだ色々と隠し事をしているときた。いっそ『記憶がないだけで実は未来からダンブルドアの暗殺にきた』ぐらい言われても驚かない。そんな奴を監視下に置くなんて、必要最低限の措置だと思っていた。それは腹立たしいことに、この女も同じだったようだ。何を今更、とばかりにアホ面を晒している。

だが、ダンブルドアやフラメルにとっては、どうやらそうではないらしく。



「アシュリー、君はこの時代に辿り着いた原因についてはこう言った。『分からない』と」

「……だからこそ、『次にいつ同じことが発生するか分からない』と」

「その通り」



ダンブルドアと女の問答は俺にとっては大前提すぎたので、今更そんな話を蒸し返すなんてと、俺は呆れ半分だった。しかし、ダンブルドアはともかくフラメルまでも、女の監視についてはあまり気が進まないような、苦虫を噛み潰したような顔をしている。



「マグルだろうが魔法使いだろうが、人の往来のある場所にお前を配置するのは避けたい。とはいえ、俺もアルバスも決して暇じゃねえ。四六時中お前を監視する訳にはいかないが、そこらの魔法使いじゃ手に負えねえ案件だしな……」

「監禁しますか。私を、ホグワーツ城の西の塔にでも──」

「グレンジャー、俺たちがしたいのは監視であって監禁じゃない。閉じ込めたところで何もない保障はないだろ? お前の身に異常が生じた際、真っ先に俺かアルバスが察知できるようにする必要がある。第一な、仮にも俺たちは教師だぜ。生徒として迎える以上、お前の人権を侵すわけにいかねえだろ」



真っ当すぎるフラメルの意見に、俺まで意表を突かれた。当たり前だろとばかりに腕汲んでソファの上でふんぞり返るフラメルは、どうやら俺たちが思っていた以上には、まともな教師だったらしい。我が子欲しさに錬金術を始めたような男とは思えない、実に倫理的な言動だ。

さて、教師どもが常識のたがを外す気がない以上、アシュリー・グレンジャーをどうするかという選択肢はだいぶ狭められる。監禁するほどの人権は侵せないが、放っておいて何かあったら察知できる程度の監視。無茶苦茶言いやがる。そんな便利な檻があるもんか。案の定、三人とも他に手があるかと思案を始めてしまった。だが、いくら考えたって出るはずがない、俺は諦め半分で思考を窓の外に向けていた。魔法界を代表するような賢者が二人、頭突き合わせて解決しないような問題を、俺が解決できるわけもないんだし。窓の外は突き抜けるような青天。歩くだけで汗が噴き出すような時期だが、風があればだいぶマシになる。夏場はよく、ジェームズたちと箒に乗って湖辺りを一周したもんだ。水面すれすれで走り抜ければ、水しぶきが舞って冷たい風が巻き起こり、それだけで気分がスカッとしたもんだ。ああ、今すぐ箒置き場に忍び込んで、コメットでも拝借してこようか。どうせ此処はホグワーツなんだ。此処でなら未成年の俺でも、魔法を使ったってバレやしないんだから──。

そこまで考えて、俺はハッと息を呑んだ。



「──俺んち、なら」



それは、それ以外の整合性を捨てた考えを、そのまま口についただけだった。言ってしまえば考え無しの、ほんの思いつき程度のひらめき。だが、そのバトンを、勢い余って立ち上がったフラメルが強引に奪い取った。



「そうか! 魔法省を利用するのか! ブラックお前考えたな!」

「俺はまだ未成年。だから、俺そのものが檻になる[・・・・・・・・・・]!」



口に出してから、意外にも妙案だったことに気付いて思わず興奮のあまり浮足立つ。こういう、針の穴を突くようなひらめきを得た時の快感は、悪戯でフィルチやスニベリーを出し抜けた時のそれと似ていると思った。

だから、俺は肝心なことを何一つ考えられていなかったのだ。



「君がどのような条件で過去に遡るかは不明という話じゃったな。しかし、どんな条件であれ、時を遡るために絶対に外せない条件が一つだけある。それは何だと思うかね?」

「時を遡る為の条件──……?」



ただ一人事情を理解していない女に対し、ダンブルドアはゆっくりと言い聞かせる。そう、それは別に、『時間旅行』に限った話じゃない。こいつがどんなに危険な奴だろうが、こいつが本当はどんな悪党だろうが、関係ない。例えこいつが時代をめちゃくちゃにする気だったとしても、例えダンブルドアの暗殺に差し向けられた刺客だったとしても、魔法使いが事を成すためには、避けて通れない壁がある。



「──そうか、魔法[・・]! タイムマシンなんか存在しないんだから、マグルの技術で時を遡れないと言うことは、私が時間旅行するために必要なのは『魔法』! 未成年の周りで魔法を使えば、即座に魔法省やホグワーツに通達される!」



ようやく合点がいったのか、女も早口になって叫ぶ。

そう、魔法だ。こいつには戸籍がない。だから、魔法使っても恐らく魔法省への通達はされない。先のクラウチたちの話を聞くに、『時間旅行』についてはその限りではないのかもしれないが、基本的に魔法省が監視しているのは、『誰が魔法を使ったか』ではない。『未成年の周りで魔法が行使されたか』、だ。未成年には特有の『におい』がある。未成年が魔法を行使した場合、魔法省はその『におい』を察知する。だが連中は、『におい』を持つ者の周りで魔法が使われたことを察知できても、実際に誰が使ったか特定する術を持たない──この辺はリーマスやピーター巻き込んで“実験”済みなので、自信を持って言い切れる──。例えば俺とリーマスがマグルの町を散歩していて、うっかり俺がマグルに向かって『鼻くそ呪い』をかけたとしても、魔法省はその呪いをかけたのはリーマスか俺かを区別しない。そりゃ、その場で杖を引っ手繰られて直前呪文でも使われれば一発でバレるだろうが、警告文が届くのは俺かリーマスか、確率は二分の一、もしくは両方に届く、ってくらい粗末な探知能力なのだ。

故に。女が俺の傍に居る限り、少なくとも自分の意志で魔法を使えば即座に魔法省にバレる。当然、ホグワーツにもだ。あれほどの騒ぎを起こして、フラメルの手を借りてまで危機を脱したのだから、こいつだって今更魔法省に厄介になりたくないはずだ。そして何よりその伝達速度だ。『個人を特定する』事に関しては目も当てられないいい加減だが、探知速度で言えば、逃げる準備もできないほどだ。物の数秒で警告文が飛んで来やがる。ジェームズの父さんにこっ酷く叱られた時は余計な仕事をと思ったものだが、今となってはありがたいことこの上なしだ。学生一人を閉じ込めるのに、これ以上に無い柔らかな檻だ。



「ブラックの新居に、なるべく人を近づけさせないようにしねえとな」

「まだ暖炉を煙突飛行登録してないから、急に人が来るってことはねえと思う」



可能性は低いが、両親が俺を連れ戻しに来るかもしれない──そんなトンクス夫妻の助言に従い、俺は新居の煙突飛行登録を先延ばしにしていた。いつか成人して、正式にあいつらの庇護下から抜け出せた時に申請すればいいと思っていたが、それが功を奏すとは。



「じゃが、姿現わしされる可能性もあろう。君のご両親が探しに来るやもしれぬ」

「そこはご心配なく。家はアルファード──叔父に、ルーン文字で封じてもらってる。正しい道順で歩いてこないと、俺の部屋には辿り着けないようにしてるんだと」

「なるほどな、ニイドのルーンの応用か。上手いこと考えたな」



言えば言うだけ、我ながら名案だなと思わざるを得ない。どうせ直接監視するにしてもダンブルドアもフラメルも多忙の身だ。おはようからおやすみまで監視する暇なんかない。何か起こってからじゃ遅いのは尤もな意見だが、その程度のリスクは承知の上だ。そもそも俺の創ったホムンクルスのせいなんだ、責任は取るつもりだった。囮、ってつもりでもないが、多少の不自由なくしてこの危険人物を保護するなんてできやしないわけだし。そりゃあ俺はこいつのこと好きになれないが、それとこれとは別だ。

そもそも、こいつは俺たちに敵意がある訳じゃない。こいつ自身がどれほどの危険を孕んでいようとも、こいつ自身がこいつ自身の意志で牙を剥くことはない。仮になんかあったとして、俺だって自衛の術は持ってるし、いくら暇じゃないっつっても、フラメルやダンブルドアだって馬鹿じゃない。こいつに何かあればすぐ動けるように、監視とまではいかずとも意識を向けるぐらいはしてるだろ。だから、俺もそこまで負担ってわけじゃ──あれ。

あれ[・・]



「それでは、アシュリーはこの夏、シリウスの家に住むように。なるべく行動を共にし、異変があればすぐにわしらが駆けつける。シリウスも、それでよいかね?」



余計なこと言っちまった。そう後悔するにはもう遅く。黙したまま呆然とする女の横で、俺もまた同じように言葉を失うことになった。

──だが、今更他の案を思いつくはずもなく。



「……状況が状況だしな。それにこいつは、俺のホムンクルスだ。最後まで面倒見るさ」

「君に錬金術を勧めた我々の目は、まだ衰えていなかったようじゃ」



他に案が浮かぶわけでもなく、俺は自分でも驚くほどあっさりと受け入れたのだ。そうだ、名案の前に思考がすっかり飛んでいた。そもそもの議題。こんな面倒な話になった発端。この、『いつ起爆するか分からないホムンクルスを、夏休みの間どこで監視するか』という問題。未成年である“俺の傍”にいれば、何かよからぬ事態が発生した際、ダンブルドアたちもすぐに駆け付けられる、という名案だったが。

俺の傍ってことは、俺んちでこいつを世話するってことじゃねえか!!


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