アンデットについて | ナノ


言葉と死について  


※グロ注意

松永さんとあった後、いつものように足利さんと話をしていたときのことだった。
そういえば、と彼が口を開く。

「久秀の時は丁寧な言葉遣いをしていたな」
「あ、やっぱりこれじゃダメですか」
「気にする必要はないが、何か意味があるのか?」
「いえ、初対面で割と崩れてたので。イマイチ敬語の使い方がわからなくてですね。後噛みまくります。長く喋ると」
「そうか」

納得してくれたようで、それ以上は聞かれなかった。
語尾にですますをつけただけなので、あんまり適当じゃないかもしれない。
やっぱり、将軍様だし。
でも今更変えるのもわざとらしくて嫌なのだ。

その日もまた、自分の部屋に帰ってからは書物を漁った。
本を読むのは好きだし、いろいろ知れるのは楽しい。
源氏物語どっかにないかな。
漫画は読んだことがあるけれど、活字はまだだ。

気が付くと日は落ちていて、女中さんが明かりを持ってきた。
油を使うのもあれなので、さっさと寝ようと思う。
風が吹き込んできて、火を消した。



ごきん



何かが折れる音。
首に走る痛み。
呼吸ができない。
誰かがいる。

「痛い、です」

それこそ隙間風のような声で言うと、私を殺したモノは驚いたようだ。
しかし手は首から離れず、強く強く掴まれる。
痛い。

けれど我慢できないほどではない。
不死身になったついでに痛覚が弱くなっているのか。
それともアドレナリンによる麻酔効果だろうか。

これは誰の指示でもなく彼自身の判断だと思う。
松永さんは殺さずに連れて来いと命じるだろうし、タイミングとしても今ではない。



ぶち、ぶつん ごとり



再び痛み。
何かが床に落ちる音。
頭に響く衝撃。

有り体に言えば、首をねじ切られた。
闇に未だ目は慣れず、それでも首と胴体がおさらばしたことが分かる。

「無駄ですよ」

どういう理屈か、先程よりも大きな声が出るようになった。
信じられない、という雰囲気が伝わって来る。
やっぱり彼は足利さんよりよほど、人間らしい。

「私は死にませんから」
「……………」
「心配しなくても私はあなたの正体をはっきりとは知りませんし、松永様に伝えた以上の情報は、持っていません」

焦りが見えるとやばいので、なるべく落ち着いて言った。
生き埋めとかにされると困る。
脱出できる気がしない。

「今日、あなたがここに来たことも口外しません。どうぞお帰り下さい、風魔様」

もう一度風が吹いて、気配はなくなった。
軽率な行動をしたものだ、彼も。
それほどに追い詰められていたのだろうか。

首と体が別々のままだけど、めんどくさいのでこのまま寝てしまうことにする。
明日の朝、女中さんが来る前に起きればいいだけの話だ。
死ねないということに、ひどく疲れた。


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