うサギと呼ばれる女性1


これはとある兎の獣人の女の子の話だ。



獣人の中でも草食動物の獣人は現代では割と珍しいものだった。

なぜなら草食動物の獣人と肉食獣の獣人と結ばれて子供が出来た場合、遺伝子的に肉食獣の動物の獣人が強いため、子供はほとんどの確率で肉食獣の方の親の遺伝を持って産まれる。


ちなみに獣としての本能で肉食獣の獣人は草食動物の獣人に「美味しそう」と思ってしまうらしい。
まさに文字通り食べちゃいたいくらい可愛いという事だ。
そのため、草食動物獣人はめちゃくちゃモテる。
肉食獣の獣人からすると草食動物の獣人は目が離せなくなるのだ。
食欲と言っても本当に食べられる訳では無い。目に入れても可愛いではなく口に入れちゃいたい位に可愛いという事だ。なのでそれを恋愛感情としてシフトする人が多い為、今では草食動物の獣人は年々と減ってきていた。

そんな中私は草食動物の獣人として生を受けた。

父と母はホワイトタイガーだが祖母が兎だったらしく、私は変格遺伝でとても珍しいの兎として生まれた。

それからはもう文字通り猫可愛がり……ではなく兎可愛がりされた。

可愛いでちゅねーと言われながら何度もはみはみされたか分からないくらいめちゃくちゃに可愛がられて育った。


その為、その当時の性格は最悪だった、と今の私からすると思う。

両親や親族に愛されまくってワガママに育っていた私は欲しいものは親にねだればなんでも貰えると信じていたのだ。とんだクソガキだ。白いのに黒歴史がすぎる。

あのまま育っていたらきっと、今頃流行りの悪役令嬢の如く性格の悪い女になっていたに違いない。


だが私は改心したのだ。あの日、運命と出会って。




あの日は私のわがままにより、貴族が開催するパーティに連れていってもらったのだ。
父と母はそれなりの商家で大金持ち、という訳では無いがコネは広く、私のわがままもそうして叶えてきた。
見たことの無い料理の数々とみんなが言ってくれる「可愛い子」の褒め言葉に調子に乗っていた私はこんなに広い御屋敷を探索してみたいという欲に駆られて上機嫌でパーティを勝手に抜け出して人様の家を我が家のように練り歩いていた。


そんな時、後ろから近づいてくる人影に気づかなった。


「捕まえたぞ!!」

「きゃッ!!?」

「はは、本当に兎の獣人だ!!珍しい……コイツは高く売れるぜ!?」

下卑た笑を浮かべながら私を押さえ込もうとする見知らぬ男たち。
離して!!と足掻くが黙ってろ!!と無理矢理口を塞がれてどこかに連れていかれそうになる。


「っ!!」

「金目のものを盗みに来たがいい拾い物だ。ラッキーだったな」

嫌だ!!嫌だ!!パパ!!ママ!!誰でもいい!!助けて!!!!!!


ポロポロと涙を流しながら抵抗するが大人の獣人に叶うわけもなく、無理矢理手を縛られて袋に詰められそうになった時、ぎゃあああ!!と男の悲鳴があがった。

「なんだ!!?」

「ギャーギャーうるせぇな。騒ぐんじゃねぇ」

「おいなんだお前!!なに……うわぁぁ!!!!?」


「!!」

知らない男の子が聞こえたと同時に私を掴んでいた男の手が砂のように崩れ落ちていく。

その隙に慌てて逃げようとするが、拘束されていたのもあって上手く足が動かず、派手に転んでしまった。
早く逃げないとまた捕まっちゃう!!慌てて起き上がろうとするが拘束された手足では上手く起き上がれずにぐずっ、と鼻をすすっていると

「大丈夫か?」

「えっ……?」

そう言って手を差し伸べてくれたのは、

とても美しいライオンの獣人の彼だった。




その男の子は、私のことを起こした後何も言わずに拘束を溶いて、そのまま立ち去って行った。

男たちがいたところには砂の山が残るだけで、あの子が魔法で砂に変えてしまったと分かった。


それを見てもあの時の私は恐怖より何より、


ただ美しい彼に見惚れていたのだ。



「ちっ……パーティをサボったらこんな面倒に巻き込まれるとはな……おい、自分の来た場所に戻れるか?」

「は、い。大丈夫です」


美しい、美しい。なんて綺麗な人だろう。
あの時は緊張のあまり上手く喋れなかった。

そんな私に気にすることも無く彼は「なら早く戻るんだ。今見た事は言うな」と告げて。私を助け起こした手を離した。




そこからはどうやって親のところに戻ったのかも覚えてない。
私はあの美しいライオンに惚れてしまったからだ。


また彼に会いたい。彼はとてもいい身なりをしていた。きっと貴族なのだろう。
家に帰った私は得意のわがままで父と母に彼の特徴を教えて彼の身元を探る事にした。するとどうだろう、彼はとんでもない人物だった。


「第二王子のレオナ様……!!?」

「ラビルちゃんの言う特徴が一致するのはその方だけだったわ。でもあのような階級の低いパーティ参加されるようなご身分のお方ではないし……もしかしたら違うかもしれないわね」

これがお写真よ。そう言って渡されたレオナ様の写真は間違いなく、私のことを助けてくれた彼だった。

私を助けてくれた王子様のような彼は、本当に王子様だったのだ。





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