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そんな昔に起きた出来事を過去に持ちながらも現在。



「またあの夢でも見てたか?」

「……う、ん」

まさか盗賊に襲われた時の夢とは親であるジェラルトに話せるはずもなく「いつも見ていた謎の少女の夢」の話を見たことにする。

「お前の話を聞く限り、そんな奴には会ったことはねえんだがな………」


のじゃロリの少女と縁があるのは親としてやめて欲しいのでそれは良かった。その気持ちを相変わらず表情筋が動かない為顔には出せずに「そっか……」と顔を伏せていると相変わらず表情が追いついてねぇなぁ、とジェラルトは笑って私の頭を撫でる。
親だからか、私が必要以上の言葉を発さなくとも彼は何故かわかってくれた。


その日は脳内の夢で見る謎のじゃロリ少女が初めて「私」に向かって話しかけてきて、種族とか誕生日とか名前とか聞かれたりして色々あったが、割と元気に過ごしている。


ちなみにあの日山賊に襲われたことは傭兵達には告げてない。恨む相手もこの世にはもういないし父親には余計な心配をかけたくなかったというのもある。

ただ、私にとっては「トラウマ」というものにはなってしまったのか。
ジェラルトと共に過した傭兵達以外の金髪の男を見ると嫌悪感があるしそれで青の瞳だと最悪だ。
ジェラルト曰く無意識に睨んでしまっているらしく、(他の人には無表情に見えるらしいが)何かあったと問われてしまう。
だがまあ、「なんでもないよ」と告げればジュラルトはそれで納得していたし金髪の男達には私も深く関わらないようにしてきた。

そんな日々を過ごして、いつもの盗賊退治の傭兵の仕事も終わり、空き家で休息を取っていると傭兵仲間達が慌てて私達を起こしに来た。

何事かと目を擦りながらも起き上がる。


「ジュラルトさんちょっと来て貰ってもいいか?」

「何があった?」

「3人の若者たちが助けてくれって声をかけてきたんだ。話を聞いてやってくれないか?」

「?、若者?ベレス、いくぞ」

「分かった」


使い慣れた剣を持って案内された場所に行くと言ってたとおり若者三人が困惑の表情を浮かべながらそこにいた。
その三人に近づく前にピシリ、とベレスはその中の一人を見て固まる。


「突然、申し訳ありません!」

「こんな時間にガキ共が揃ってなんのようだ」

「実は私達、盗賊団に追われているんです。どうか力を貸していただけませんか?」



そう言って模範的なお辞儀をした好青年な若者、キツめだが可愛らしい美人の女の子。どこか読めない褐色の青年の三人。

そしてその中でもお辞儀をした彼は綺麗な金色(こんじき)の金髪でまるで大空を写したかのような蒼の瞳を持っていた。





お、お、お、





(王子様だ)



動かない表情の下、心の中でそう零したが、勿論誰にも届かない。
ジュラルトは私が固まったのを察して溜息をつきながら肩を軽く揺するがそこからの記憶はあまり無くなっていた。




◆◆◆



記憶にない、と言っても体に染み込んだ戦闘はいつも通り終わった。ただ戦闘中に助けを求めた内の三人の中の女の子が襲われて、その彼女を庇うように前に出た時、確実に死んだのだが脳内の少女……ソティスと名乗った彼女が「おぬしおぬしおぬし!!ばかものー!!」と言いながら守ってくれて、なんと襲われる1歩手前まで時を戻すという神のごとき荒業をしてくれたお陰で怪我もないまま戦闘が終わり、ふぅ、と息をつき、剣を仕舞うと先程の三人が一斉に群がってきた。

「先程は助かったわありがとう。貴方すごい腕前なのね」

「どういたしまして」

「その細い腕で山賊たちをぶっ飛ばした時は驚いたね」

「慣れているからな」

「初対面にも関わらず、何も聞かずに共に戦ってくれたこと、感謝する」

「(おっふ)………………」




先程は固まっていた為改めてマジマジと彼らを見つめる。
目の前に並ぶ三人の子供達(と言っても十代後半位でベレスと比べても見た目に対した差異はない)に一同に傭兵としての腕を買って出てくれたのか我が国に来ないか、と三人に手を取られてベレスはぱちくりとその大きな瞳を開いて驚いていた。

話を聞くと三人とも、アドラステア帝国、レスター諸侯、そしてファーガス神聖王国と出身国が異なるらしい。


その中でも、


(王子様だ……)

3人のうちの1人の青年、ディミトリと名乗った金髪青眼の美青年は何度見ても、あの絵本のような王子様だった。
私は、昔あの山賊に襲われたせいで金髪の男が苦手だ。特に青眼の男などもっと嫌いだった。

だが、この目の前の青年はどうだろう。
私が夢を見てた絵本の王子様そのものでトラウマ、所か「本当にいたのか」という驚愕の目で見てしまう。


「?、俺の顔になにか着いているか?」

「、いや、ファーガスにはいったことがなかったから。つい珍しい髪色だと思って」

「俺の幼馴染も同じ金髪なんだ。土地柄多いと思っていたが……そうか。他国からすると珍しい色なんだな」


そうなんだ、とそれだけを告げてベレスはそれ以上何も言わなかった。



それからはアロイスと名乗った屈強な鎧を纏った大修道院の兵が「うちの生徒たちを守ってくれて感謝する!」と突然現れて、ジュラルトは実はしがない傭兵ではなく大修道院のセイロス騎士団の突如消えた騎士団長だったという目まぐるしい展開で、アロイスと三人に連れられ大修道に向かう事になった。



道中なんども親しげに話をかけてくる助けた三人。アドラステア帝国のエーデルガルド、レスター諸侯同盟のクロード、そしてファーガス神聖王国のディミトリ。
その中でもディミトリをちらりと盗み見る。



念の為補足をしておくが(誰に補足してるんじゃ、という脳内のツッコミは無視して)昔の夢を見る少女時代と違って今はどちらかと言えば傭兵団の男たちのような屈強な歳上もしくは同い歳の頼り甲斐のある人がタイプになっていた。
眼帯とか付けてて野蛮そうな見た目は論外だ。山賊を思い出してしまうから。

つまり、うん。そう。
ディミトリは理想の王子様だったが好みではない。
なら大丈夫だ(?)

そう言い聞かせて何度目かの盗み見をするのだった。







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