無垢なる物語




昔,昔そのまた昔。かつて天界に神々がいた時代。
無垢なる物語を辿る彼らが『前世』と語るその昔に







一人の狂った姫の喜劇と悲劇から物語の歯車は狂い始めた。



それの始まりは"神堕ノ園"という『堕ちた神』が朽ち果てると言われている場所で起きた。
恵まれた天界には有ってはならない枯れた土地から当時の神々達はその場所を恐れ、誰も近づかなくなっていた。


その場所を恐れる理由はそれだけではなくとある噂も原因だ。
神々は語る、騙る、談る。
その場所には踏み入れてはならないという畏怖を込めて



『昔,人の感情と記憶を操る女神がいた』


『その女神は別の神からその力を恐れられ,
神堕ノ園に封印された』


『女神が封印された地は全てが枯れ果て,
その地に踏み入れた者は呪いにかけられるであろう』





多くの神々が語る為、その一人歩きの『畏怖』を誰もが信じた。誰かはそんなのただの"噂"だ。"作り話"だと笑ったが実際に枯れた大地が広がる神堕ノ園は存在していたので噂というものは一人歩きをして時に過度なモノになっていく。

誰も近づかなくなったその園は大地が枯渇し、生き物たちは死に絶え,まさに『天界の地獄』と化した。

しかし,そんな神堕ノ園の『畏怖』を単なる噂と"信じて"とある青年がとある日、とある時間その禁忌の場所へと足を踏み入れたのだ。
















(神堕ノ園…馬鹿らしい。どうせ上の神さんたちがここの鉱山を独り占めするために勝手に立てた噂話だろう)


髪を逆立てた青年……若い神だ。彼は大きな鞄から飛び出している岩肌を掘り起こす道具を詰めた荷物を下ろして一息つく。


(大分歩いたな……だが,見えども見えども荒れ果てた大地…,そりゃ天界の地獄なんて名前になるわけだ)


若き神……名を鍛冶師バルカンはより強い剣を作る為の鉱石を求めて禁忌の土地とされる場所へ足を踏み入れた。
見てども果てのない枯渇した大地に嫌な予感は拭えないがバルカンはさして気にした様子もなく,この地を掘り起こす為の道具を鞄から取り出すと
「よし」、そう一声呟きそれを振り下ろした。


「……この辺りでいいか」


鶴嘴を地面に突き立て,バルカンは穢れた地を掘り進めていく。いい鉱石には力が宿る。それを己のカンを信じて力の筋を辿った先に見つけたのがこの場所だった。ただそれだけだった。

彼が求めるのは伝説の鉱石。それがあれば誰にも負けない,最強の"剣"が作れる。
バルカンはその思いの一心で鶴嘴を降り下ろし続けた。








話は戻るが先ほどの『畏怖』はただの"噂"と思っている神が多く,あまり知られていないがその"噂"には続きが存在した。


『その地に踏み入れてはならない』

『姫は眠っているだけ』


『姫は眠っているだけだ』





段々掘り進めるに連れ,鉱石の質が変わってきた。これは「すごいもの」が出てくる。そう予感してバルカンは再度鶴嘴を降り下ろすとガツッと鈍い音が響いた。
どうやら尖端に何か当たったらしい。


「ん?,なんだこれは……封印の紋か……?」






『封印されたことに怒り狂った姫は

いつか目覚めた時,神々の感情を,記憶を狂わせ』







バルカンがその封印の紋が施された石を手にした瞬間ソレは黒き禍々しい光に包まれた。その禍々しい光に思わず目を瞑りその石から手を離す。
そして光が収まりバルカンが目を開いた時,





目の前には見覚えのない一人の神がいた。


「ああ…ッよかった。やっと出れたわ。貴方には感謝しなくちゃ」


ふわり,と微笑むソレは愛しいそうにバルカンの頬を撫でた。


「誰だ……?」

「ああ失礼,初めまして。私は━━━━━━。」
















「ねぇ?,貴方のお名前はなんていうの?ねぇ」



『 いつか天上界を滅ぼすだろう 』





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