あいにうえて




また、だ
またあの夢だ。


森に入った時に見えた夢と同じく,遥か雲の上、アスラと女性が寄り添いあって話をしていた。
黒髪で小柄。特徴的なのはその艶やかな黒髪から羊のような角が生えていた。
アスラの恋人であるイナンナとはまた違った雰囲気の女性だ。……この女性を夢で見たのは始めてな気がする。



「アスラ……本当に大丈夫ですの?」

その女性は片目に眼帯を着けていてすごく可愛い顔をしているから何だか眼帯が浮いていた。

そういえば、さっき会ったあのひとも女の人だけど眼帯を着けていたなぁと現実と夢の境が曖昧になっていると、眼帯の女性は心配そうにアスラの様子をたずねた。


「嗚呼、―――か……、心配など不要だ。俺を誰だと思っている」


……よく聞こえないな……。
二人は寄り添うように並ぶと,アスラは優しく微笑んだ。


「ふふっ……そうね、貴方ならやり遂げてくれると信じてますわ」


その女性は笑うとすごく可愛くてその表情はとても愛しく感じた。
あれ?,"愛しい"?


「そうだ、俺を信じて俺に背中を任せてくれ。」


「ええ、この身を貴方へ捧げる覚悟ですわ」


優雅に微笑む愛しい人
やっぱり,愛しい。そう感じる。なんでだろう?
アスラは確かイナンナと恋人同士じゃあ……だったらなんで『愛しい人』なんて感じたんだろう僕……


彼女の名前はなんだろう?
イナンナではない、
彼女の名前。
彼女の名前が知りたい。



「……その覚悟、しかと受け取った。しかし、無理はするな、俺はもうお前が傷つくのは見たくない」




アスラのその言葉にふわり、と花のように彼女はもう一度笑う。
その笑顔は,見たことがある。
ああ、そうだ、思い出した。









「アスラ、私のこの眼帯は貴方を守れた名誉ある傷……

これからも私、カグヤは貴方の背中を命をかけて守らせてもらいますわ」


彼女はカグヤ、アスラの部下で,







アスラの初恋の人だ。




「そう、そうよ。大正解。
貴方の初恋の人"カグヤ"よ」



「ふふ、ふふふふ」


Я




「か……ぐや……。」



「ん……?」

少年が何か寝言を呟いて身じろぎをした。多分夢を見ているのだろう。
あの後、私は流石に芝生に寝かせるのも可哀想かと思い膝枕なるものを少年……確か名乗った名前はルカだったかにしている。


「しかし魔物がいる場所でこんな堂々と寝れるとは……図太い根性だな」


「…ん……」


未だに寝ている少年の顔をのぞきこむ、
中々整った顔立ちだが鼻につめた布のせいで今は若干間抜けな顔だ。
膝に乗せている銀髪を撫でると男の癖にサラっサラだった。

本来ならこんなことをしている場合ではない。私は早く打倒アルカリに行きたいのだが、怪我して倒れた少年を魔物がいる場所に放置することは出来なかった。そこまで鬼ではない。



「そういえば……よく夢の中の私は誰かに膝枕をしていたな……」


「―――カン。―――ル―――ン。さあ起きてちょうだい」





愛おしげにそう笑いながら夢の中のカグヤとやらが確か恋人にしていたような……。
靄がかかったように思い出したい部分が中々浮かばず,その時はまあいいか、と諦めた。所詮夢だ。


「おいルカ!!お前遅…い……ええっ!!?」


「どうしたんだよエディ……うわっ!!??」


私が考え事をしていると奥の道からデ…おっと失礼,ふくよかな少年とガリ……いや……細身の少年の2人組が此方を向いて目を見開いていた。


「ん?お前達はこの少年の友達か?」


「えぇ!!?あ、はい!!」


「ルカの友達でですすす!!」


(おい、なんでルカのヤローが知らねぇ姉ちゃんに膝枕されてんだよ!!?)

(俺だって知りたいよ!!)


「おい……?」


「あ、えっとすみません。こいつは俺らが預かるのでお姉さんは帰っても大丈夫ですよ!」


「そうか、丁度足が痺れてきたから助かった」


少年の頭をそっと足から下ろすと私は本来の目的を実行するためにその場を後にした。
待ってろアルカリ貴様を中性にして最終的には酸性してやるからな。














「おいルカ!!なんでお前あんな羨ま……倒れてたんだよ!!いつまでたっても来ないから迎えにいったら知らない姉ちゃんに膝枕されてるし!!」


「え、あ……っ〜…」


「何顔赤くしてんだ!!お前、俺らを心配させた罰としてホットドッグの刑な!!」

「ええ〜……そんなぁ……」














「しまったレグヌムには奴がいる……」

せっかくこの森に逃げていたことを忘れていた。
そうなると戻るわけにも行かないしな……、と目的地は決まっているが目的地の場所が分からないためひとまずレグヌムへもどる道とは逆方向に進む事にした。


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