親心下心
コンウェイとルカが先に行ったユウリ達に追いつくと、また先程とは異なる雰囲気の縦に広い部屋に出た。シリンダーの部屋と同じく「不気味」という雰囲気には変わらないがこちらの部屋は同じ形をした機械が並べられていた。
「なんだこりゃ……でっけぇな……中に椅子があるってことは乗り物か?」
「蒸気機関じゃなさそうだけど、どういう仕組みなんだろ…」
「ここって軍の基地だしやっぱり兵器なんじゃない?おっきな武器も装備されてるし」
ふむ……中々いい装備だ。と食い気味にユウリが兵器に近づくとコンウェイが危ないよ。とユウリの手を引いて離れさせる。
「じゃあもしかして転生者と戦うための兵器…かな?」
「ありうるな…うーんおっかねぇ……」
「ねぇ嫌な予感がするよ移動した方がいいんじゃないかな?ほら、行こうかユウリ」
「おいこら勝手に触るんじゃねぇ!!!!」
「それ私のセリフなんだが……ん?結構奥まできたか?」
「ユウリはここに来た時の記憶はないの?」
「骨折のせいで熱があったからな……曖昧なんだ」
話しながら曲がり角を行くと行き止まりにあったのはベットが複数並ぶ清潔感のある部屋だった。
ここ、もしかして医療室じゃないのかな?とルカが目を輝かせてそれらしい机を探っていく。
「解熱剤……解熱剤……これじゃないね……うーんちょっとまってて」
「アスラは医術に詳しいんだな」
「えっと……ボク、本当は医師になりたくて……ちょっとだけ勉強してたんだ。役に立ってよかったよ」
ついでに傷薬とかもパクっておきましょ。ちゃっかりしているイリアとコンウェイはこれ状態異常回復のチャームじゃないかな?貰っていこうよ。と物あさりを始める。
それを待つ間ユウリは使われていないベッドへと座り込むと隣に当たり前のようにスパーダも座り始めた。
「止めないのか?」
「俺ら別にルカ以外いい子ちゃんの集まりじゃねぇしな。まあルカも逃亡兵っていう肩書き着いちまってるし、いいだろ。それよりもちゃんと解熱剤見つかったら飲んでおけよ」
「……なあ、デュラン、お前は私が母親だったからそんなに気を使うのか?」
「……んいや、下心って言ったら怒る?」
「したごころ?」
確かにユウリはスパーダの前世では母親だった。だが今世では二人とも人間で、歳も近い男女だ。ユウリの見目は傷痕はあれど、決して悪い見た目ではない。むしろ美人にあたる部類で程よくスタイルもいい。ルカがイリアを狙っているのであればオレはユウリと……、と顔を近づかせていくと「ほら」とスパーダの顔になにかの箱が押し付けられる。
「ルカくんが見つけてくれた解熱剤だよ。"お母さん"に甘えたいのは分かるけど、程々にねスパーダ君」
「おーおー好感度マイナス振り切ってるやつが偉そうになぁ?」
「これ水なしで行けるタイプ?錠剤派なんだが」
あいつら飽きないわね。とイリアは退屈そうに彼らを眺めて傷薬を次々とコーダのバックと自身のショルダーに詰め込む作業を淡々とこなして行った。