兵器と材料



「デュラン、すまない。本調子ではないのでふらついた際には肩を貸してくれ」

「無理すんなって今ももたれかかっておけよ」


前世呼びが何故か満更でも無い様子の息子(仮)はざまぁみろとコンウェイへ舌を出すと、ユウリの腰を支えるように歩き始める。

「いつでも変わるからねスパーダくん」

「お呼びじゃねぇーってよ残念だったなぁ」

「みにくい争いだな、しかし」

軍事基地へ到着する目前、ぴょんぴょんと目の前を飛び跳ねるネズミのようななにかに、そういえばあの転生者研究所でもいたな、とスパーダから離れて、目線を合わせるように膝を着いた。

「名前はなんというんだ?」

「コーダなんだな、しかし。イリアについてきたんだな、しかし」

「めちゃくちゃ可愛いんだな。しかし」

「うげぇ。アンタそれ好きなの?」


独特の喋り方をするコーダ、と名乗ったネズミっぽい小動物は何故か人の言葉を話せるらしい。
小動物は好きだが、目付き故か好かれにくいユウリは恐る恐るコーダに触れると「くすぐったいんだな、しかし」とコロコロと笑う彼に釘付けになっていた。

「えっ……可愛い……しかし………可愛い……」

「ユウリさんの語彙力が解けてる……」

「気に入ったのならあげるわよそれ」

「いいのか!?」

「餌くれるんならついて行くんだぞ、しかし」


可愛い、可愛い。とコーダを抱えて歩き出すユウリにこのくそネズミ……と先程までユウリを支えていたスパーダの視線が突き刺さるがネズミなので対して気にしてない様だ。

そんなやり取りをしているうちに軍事基地目前へと近づいていく。仰々しい入口にユウリはよくもまあ曖昧な記憶のまま脱出出来たものだな、と改めて思う。


「ここがナーオス基地かぁ…なんだか転生者研究所によく似てるよね?」

「転生者研究所?」

「僕達みたいな転生者を集める王都軍の施設なんだ」

どこか禍々しいオーラを放つ黒い施設が見えてくるとルカ達は茂みに隠れて様子を見た。

どうやら見張りは2人、森を伝って歩くと別の入口も確認でき、ここからなら行けるぞ、とスパーダが小声で呟く。

「んじゃ、ここにも転生者が捕まっている可能性高いよな。」

「そして転生者を兵士に仕立てて戦争をさせてるのよねホント許せない…」

「西の戦場では転生者ばかりだったよな」

ここに連れてこられたという聖女ももしかしたら……イリアの呟きにルカの顔がサッと青くなる。

「聖女アンジュを探してはやく助け出そう!」


表口ではなく、人がいない裏口から入る。意外とザルだな、とユウリが呟くが全くその通りで警備の目は緩く、ひとりふたりの警備兵を倒す程度で簡単にかいくぐり奥へ奥へと、進んでいった。


「それらしき人はいな……ん?この部屋は……」

「もしかして檻とかに入れられてるんじゃ、……うわっ」

見取り図なんてある訳がなく、一行ががむしゃらに進んでいると広い部屋に出た。
広い部屋、といっても所狭しに夥しい数のシリンダーが並べられており、その中には人が入っていた。



「……これは……私もこれに入れられていたな」

「そういえばアンタ、どうやって脱出したの?」

「……いやまあ、たまたま上が空いてて……?」

「警備といい、随分ザルだな。運がいいんだなユウリは」



適当な誤魔化しだったがイリア達はそれ以上何も言わなかった為、その話をそれ以上繋げることはしなかった。後から続いて入ってきたルカ達も部屋の“異常さ“に息を飲んだ。

「この人達……転生者よねどうしてこんなこと……」


転生者同士の場合、触れ合ったり距離が近づくとある程度なら「わかる」その者が前世は何だったかまでは分からないがルカやイリア、スパーダもそれを感じ取ったらしい。


「……転生者研究所で兵器の動力源に転生者を使うって言ってなかったか?」

「……動力源?」

軍の施設、兵器。その単語から連想した答えをユウリがポツリと、呟く。
コンウェイは「ふぅん……」と意味ありげに腕を組むとルカは顔を青くした。

「こんなものに閉じ込めやがって……ふざけんなよ!!転生者だからって何をしていいわけじゃねぇだろう!!」

「転生者には捕まって兵士にされるかこんなふうに閉じ込められるしか道はないのかな……」

ユウリがカンカン、と人が入っているガラスを刀の柄で叩くと「割るか?」と、ルカに尋ねる。

「大丈夫……なのかな?その液体が害がないとは限らないし……シリンダーの中の人達……転生者なんだよね?」

「そうね、ってことはラティオの可能性もあるわ。助けたいけど……今は迂闊に手は出さない方がいい」


そうか、とイリアの話にあっさり納得したユウリは構えていた刀を戻すとシリンダーの間を突き進んで次の部屋への出口を見つけた。









「ここには…まだボクの知らないことが沢山あるみたいだね」

イリアとスパーダが先を進むユウリを追いかける中、コンウェイはシリンダーをそっと撫でた。

「ねぇ何か言った?」

「いや気にしないでなんでもないさ、聖女とやらをさがすんだろ?さあ行こう。」

ルカに柔らかく微笑みかけたコンウェイはユウリ達を追いかけた。




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