シリンダーの中身
ルカに探してもらった解熱剤を飲んだ後、再び聖女探索に戻る一行だが、ちっとも見つからない聖女に、もしかしたらシリンダーの中かもな、とユウリが呟く。
「そうだとしたらあの中から顔も知らない聖女を探すのは無理なんじゃ……」
「ここは軍事施設なんでしょ?ならなにかのリストとかあるんじゃないかな」
「でもよぉ、それってせいぜい名前が分かるくらいじゃねぇか?」
「そうね……再奥までいって手がかりがなければそうしましょ……ってねぇ、なにか聞こえない?」
ぴーぴー。確かに「何か」の電子音が遠くから聞こえてくる。イリアは訝しげに辺りを見渡すが音の発信源は分からない。ルカも気になったらしく、立ち止まったその時だった。
「えっ……なにか……って……」
「危ない!!」
ガシャッン!!ビービー!!
音が本格的に近づいてくる前に咄嗟にユウリはルカを押し倒した。すんでのところでルカが立っていた場所にはあの時見た沢山の武器を携えた兵器が佇んでいた。
「うおッ!!さっきの兵器!!」
「あれは……」
「ひ…ひとりでに動いてる!!?」
ルカが慌てて起き上がりユウリを起こすと、兵器はずっとビービーと謎の音を立てて辺りを見渡していた。
「見て!あいつの後ろさっきの筒が!!転生者が入ってたアレ!」
「ビービー!オンセイシキベツヲカイシシマス!」
「おっ……?喋ったぜ?やっぱ人が乗ってんのか?」
待て、嫌な予感がする。
スパーダが前に出ようとするのをユウリが止める。だが兵器はガシャン、ガシャンと音を立てて一歩一歩とユウリ達と距離を詰めてくる。
「筒の中の人が話してるのかしら?ねぇちょっと聞こえてる?筒の中の人!おーい!!」
「居留守じゃないか?」
「それはちげぇだろ、……なんか嫌な予感がするな」
「ビービーオンセイシキベツエラーシンニュシャトミトメマス!ビービータダチニシンニュシャヲハイジョシマス」
っ来るわよ!イリアが銃を構える。
「侵入者を排除」確かにそうこの兵器は言ったのだ。
「げっ……俺たちの事かよ!」
「ああんもう!!おたんこルカ!!アンタのせいよ!!」
「ええ!!?そんななんでも僕のせいにしないでよ…!って、うわわ来たぁ〜…!!」
「来るよっ!」
兵器が銃を構える前にコンウェイが術を展開する。
先程戦った警備兵から一撃くらった際に「覚えた」という雷を兵器に向かって落とし、その機能を使えなくしていく。
「その術……」
「僕の特技でね。一度くらった技を覚えられるんだ」
「厨二でMか救いようがないな……」
「僕どちらかと言えばSなんだけど、なっ!」
軽口を叩きながらもコンウェイが生み出した光の剣が兵器を貫く、そこをスパーダが追撃して、ルカのファイアーボールが的中する。
「よしっ!攻撃が通る…いけるぞ!」
「最後よ!ツインバレット!!」
そして兵器が攻撃を繰り出す前にイリアの銃がとどめとなり、ギーーーーガーーーーと不快な高音を上げて動かなくなった。
「と……止まった……?」
「見てぇだなでもなんか爆発とかしそうな雰囲気じゃねぇ?」
「爆発オチは流行らないぞ」
「意味わかんないけどそれだったら早く筒の中の人助け出さないと!!ホラアンタら急いで!!」
ルカとスパーダが壊れかけた兵器の上に登る。
ユウリがお前はいいのか?とコンウェイを小突くが「僕は力仕事苦手でね」とただそれを眺めるだけだった。
「おっここ開くぞルカも手をかせ」
「うん!!…せーの…!」
バシュンっ
ルカとスパーダが二人限りでシリンダーへ手にかけた時、私の時と同じような空気の抜ける音がなり、中の液体が流れ出ると共に、水色の髪の女性が姿を表したのだった。