曖昧な記憶と声
気づけば私は知らない場所にいた。
エンジュシティからひたすら走って、走って、逃げてきた。
そして、呼吸を整えて状況を整理した。
……「アレ」の正体がなんなのかわからない。
なぜ、ゴールド君の記憶を彼が、「ヒビキ」が持っているのか。
違う世界、なのに
彼は、ゴールド君じゃないのに
ヒビキは確かに「ミズキ」と呼んだ
スイクンではなく、「ミズキ」、と
久々に聞いた
自分以外の他人から呼ばれた名前。
スイクンに転生して以来、人,の口から言われたことがない名前。
『ミズキ、』あの人は、覚えてない名前。
神様はひどいなぁ
あんな少年は私を覚えているのに
どうして彼の記憶に
彼の記憶の中に私がいないのかな
(とても大切な記憶は何度生まれ変わっても忘れないんだって)(嘘だ、)
(だってそれなら彼が、私を覚えていない筈がないじゃない)
ミナキ、貴方は北風が好きという記憶は変わらないのにね。
私は結局、二番目なのだ。
スイクンには敵わない
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