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14

「あいつらは新世界の神にでもなりたいのかね?」






chapter:14







放課後デートで死柄木に会った翌日、俺っちは足首にナナがくれたミサンガを早速着けて登校した。

確か雄英はそういう装飾品の類いは禁止してたと思うけど関係ねぇ、ナナがせっかく俺っちの為にくれたミサンガ!今つけないでいつ着けるの!?
まぁもしバレても個性制御用だとか何とかでっち上げるけどな。

死柄木の企みがいつ行われるのか知らぬまま、俺っちは気ままに授業をこなす。
本当にオールマイトを殺すなんて企みを考えているのなら、きっと大がかりな作戦になるだろう。

暗殺なんかじゃなく大々的に、公衆の面前で、大英雄が膝をつくことにこそ意味がある。
だから、まだ暫くは機会を窺うだろうと、このとき俺っちは考えていた。



「今日のヒーロー基礎学だが…俺とオールマイトともう一人の3人体制で見ることになった」



午後のホームルームで相澤先生がそう言った。
なった、と言うことは、変更になったってことだろ?
もしかして、先日の騒動が原因の警備強化?

はっ、と小さく笑いが漏れる、あんな馬鹿なことするから対策されちまうんだぜ死柄木さんよぉ。



「ハーイ、なにするんですか!?」

「災害水難何でもござれ、人命救助(レスキュー)訓練だ!!」



人命救助訓練、それが今回の授業内容らしい。
人命救助なんてヒーローの本業だ、一番ヒーローに求められる活躍の場、人害災害隔てなく人を救うのがヒーローの役目。

目指すものの本分を学ぶとあってクラスメイト達の士気は高い。
皆がざわつくもんだから、説明を邪魔された効率主義の先生がこちらを睨み付けて黙らせてきた、ヒェ怖い、怒りを察して皆が黙る。

説明が無事に終わり、着替えを済ませてバスに乗り込む。
運動場は少し離れたところにあるらしい、移動のためにバスまで使うとは雄英金かかってんなぁ。



「そして飯田フルスロットルは不発に終わる、と、悲しいなぁ」

「まぁ観光バスみたいなやつじゃなかったからな」



隣同士に座った轟と先程の様子を話す。
委員長になった飯田が想像通りの委員長っぷりを発揮したんだが、残念ながら意味がなかった。
観光バスのような2席ずつ並ぶタイプじゃなくて、交通機関として利用されるあっちのタイプ。

もう空いてるところに座ればいいよねってなって、結局は座席は番号順とかなくバラバラだ、ドンマイ飯田!俺っち最近お前にドンマイばっかりしてる気がするぞ!



「いやー、レスキューかー、俺っち水難できっかなー」

「お前、水苦手なのか」

「炎は水に弱い的な?」

「いやゲームじゃないんだから…」



俺っちの呟きを聞いた轟が意外そうに言う。
身を乗り出して俺っちの方を見た麗日さんの指摘はわりと正解だ、そりゃ、耳郎さんが言うようにゲームほど分かりやすくはないけども。



「だって濡れちまうと火がつかねぇじゃん?それに湿気ってると爆発の威力が弱まっちまう」

「それはもう個性の相性だよね」

「まぁ爆発しか出来ない爆豪に比べればまだやれることは多いけどさ」

「あ”ぁ!?」



突然煽られた爆豪は鬼の形相でこっちを睨み付けてきた、ちょっと爆豪ー、隣の耳郎さんが迷惑そうだろー?



「爆発くらい起こせるわクソが!貧弱なテメェと一緒にすんじゃねぇ!」

「でも実際ずぶ濡れになったらどーなのよ、確か汗がニトロなんだろ?汗出なくなったらやばくね?冬とかさみーのに」

「そんぐらい対策してるわボケ!何のための戦闘服だよ、個性をフォローする仕様ぐらい申請してんだよ!」

「まぁズル賢い爆豪君ならそうだよね」

「ズルは余計だ!!」



意外と発言が麗かな麗日さんの一言に爆豪の頭がボフン、と爆発する。
更にバスの前方に座っていた切島や上鳴の煽りを受けてそれは加速した、耳郎さん避けすぎィ。

前の席に座る爆豪がそんな感じで荒れるもんだから、轟も若干迷惑そうだ。
その様子を眺め笑いながら、俺っちは戦闘服に忍ばせていた丸薬を口に放り込む。



「?なに食べてるの?」

「圧縮した炭」

「スミ?え、スミって炭?木炭とかの方?」

「皇さんは炭を食べるのですか?」



丸薬をボリボリと食べてる俺っちに不思議そうに聞いてきた麗日さんが、目を丸くしてスミスミと繰り返す。
麗日さんの隣にいた八百万さんも俺っちを見て首をかしげた。
まぁ普通に考えて炭なんてただの炭素の塊なんだけどさ。



「おぅ、俺っち火ぃ吐けるじゃん?それって体内に貯めた炭素が結構重要でさ、一旦火をつければ息吸ってるだけで無限に炎を産み出せるんよ、ま、単純に炭が好物ってのもあるんだけどな!」

「成る程、バーベキューの木炭みたいなもんか、火をつければ暫く燻って消えないし、空気を送れば一気に火の勢いが増す」

「なら濡れたら湿気って役に立たねぇんだよ」



弄られていた爆豪から突然の追い打ちを受けた、お前弄られたからって八つ当たり止めろよなー。



ワイワイと騒がしいバス旅も10分もすれば終わってしまった。
目的地に到着し、目前に広がる施設に皆が圧倒された、俺っちも恥ずかしながらぽかーんとしてしまった。

USJだこれー!!?マズいですよ!!




「水難事故、土砂災害、火事…エトセトラ、あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です、その名も…ウ(U)ソの災(S)害や事(J)故ルーム!!」



やっぱりUSJじゃないですかー!やだー!!

そう言ってUSJで俺たちを待っていたのはスペースヒーロー、13号だ。
彼は知ってる、災害救助で目覚ましい活躍をしているヒーローだ、彼も雄英の教師の一人である。

先生が言っていたもう一人は13号のことだったのか、それにしても、オールマイトがいないみたいだけど?



「えー、始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ」

「(増える…)」

「皆さんご存じだとは思いますが、僕の個性は『ブラックホール』、どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」



13号の個性を聞いて、緑谷が彼の功績を称えるように言う。
麗日さんも同調するように頷くが、13号は実に現実的な事を言い放った。



「しかし簡単に人を殺せる力です、皆の中にもそういう個性がいるでしょう」



現実的で実に当たり前なことだ、しかし、俺っちには何とも重く突き刺さる言葉だろう。
いきすぎた個性は、使い方一つで凶器に変わる。
息をつくように他者の息の根を止める事ができる個性という存在は身近にするのだ。

皆が神妙な顔つきで聞き入る、当たり前のこと、されど意識しづらいこと。
平和ボケしたこの世界で改めて相手が、自分がそういう力をもって生まれてきた。



「相澤さんの体力テストで自身のの力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います、この授業では心機一転!人命のために個性をどう活用するかを学んでいきましょう!僕たちの力は人を傷つけるためにあるのではない、助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな!…以上!ご静聴ありがとうございました」



そう締めくくってお辞儀をする13号に拍手する、ブラボーブラボーと連呼する飯田に混じって13号カッコいいコールを送る。
13号カッコ良すぎ!めっちゃ良いこと言った!その通りっすよー!!

13号からの有り難い激励が終わる。
これから始まる人命救助訓練について説明し始めた相澤先生だが、紡いだ言葉が不自然に途切れた。



途端、空気が変わった。



「ひとかたまりになって動くな!!」



飛び出した相澤先生の怒声、突然のことに呆ける面々に混じって、俺っちは相澤先生の向こう側に見えた光景に眉間の皺を寄せる。

取りあえず。



「13号!!生徒を守れ!!あれは…敵だ!!!」



恨むぜ、死柄木さんよォ!

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