×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
10

「まぁベストは葉隠さんだよな!悔しいけど!!」





chapter:10






「お疲れっ!早速講評といこうか!まぁ今回のベストは葉隠少女!」



凍りつけビルの地下モニター室、訓練を終えて戻ってきた俺っち達に待っていたのは講評だ。
いの一番に告げられたベストは俺っちじゃなく葉隠さんだった、喜ぶ葉隠さん可愛い。

1回戦目の時みたく、オールマイトが「何でか分かる人ー!?」と挙手を求めれば、またも八百万さんがビシッと手を上げた。



「轟さんは序盤の慢心です、ビルを凍らせてから核のある部屋まで辿り着くのが迅速ではありませんでした、故に皇さんの不意打ちを許し、尾白さんと葉隠さんが障子さんの元に行く事を許してしまいました、会話は聞こえませんでしたが…全体的に独断的だった事が原因かと」



八百万さんがまず指摘したのは轟のことだ、確かにそれは今回の轟の失敗であり、俺が付け入った隙である。
轟が比較的悠長に上ってきてくれたお陰で、俺っちは葉隠さんの氷を溶かしてから、あいつが核を確保する前に轟の背後を突くことができた。

指摘された轟は真顔のまま頷いている、あれだけ自信ありげに挑んだ結果一抜け脱落してしまったのが悔しいらしい、真顔だけど雰囲気は落ち込んでいるように感じられる。

障子の評価は葉隠さんの次点。
俺っちと尾白が合流したせいで割りと呆気なく捕まってしまったが、それでもビル内部の異変にいち早く気付き、一人尾白を追い詰められたのは一重に彼の実力だろう。

そんで尾白は…うーん、地味!
彼が活躍していたのは殆ど障子戦のみだ、凍らされて、助けられ、障子と戦い、時間を稼ぐだけ。

これは俺っちがたてた作戦の1つだ、元々轟も障子も二人がかりで捕まえる予定で、先に轟を俺っちと葉隠さんで、次に障子を俺っちと尾白で。

俺っち達が轟を捕まえるまで時間を稼いでもらうのが彼の仕事で、彼は見事に仕事を果たしてくれた。
実に堅実、だがしかし普通だ…。



「うむ!八百万少女の言う通りだ!(このままだとまた全部言われてしまいそうなので)じゃあ残りの二人は私から講評を言おう、皇少年も実に惜しかった、だがやはり核の側で爆発を起こすことは実際には難しい、あの状況を見れば敵側の自爆と捉えられてもおかしくはないけどね」

「いやぁ面目ないッス」

「そして轟少年の挑発に乗ってしまったこと、煽りをまともに受け取り視野が狭まれば相手の策にハマりやすくなる、それはすぐに気付いたみたいだけどね!」



確かに、轟のらしくない挑発に乗って凍らされたから粉塵爆発をせざる終えなくなったのは認める。
それに、俺っちもテンション上がりすぎて技を連発し過ぎたと思う。
俺っちの技は滅茶苦茶強いけど、滅茶苦茶燃費が悪いからなぁ。

最初に俺が纏ってた陽炎…『龍炎』は疲れるとすぐ使えなくなる、そのくせ使うとすぐ疲れる。
炎を吹くのだって肺活量に関係する、吸った空気中の酸素に体内で火をつけて炎として吐き出すんだ、多少だけど隙ができる。

なのに轟はボンボン氷を産み出してくるから燃やすんじゃ埒が明かないと考えたのが不味かったか、殴りまくって、やっぱり埒が明かなくなって炎を吹いた結果があの様だよ!



「葉隠少女は見事に自分の個性を活かしていた!隠密行動によるアシストもさることながら、不測の事態にも冷静に対応し轟少年の確保のタイミングを逃さなかったことが敵チームを勝利に導いたと言えるぞ!」

「えへへー、そんな大層なこと出来なかったけどね、 実際戦ったの尾白くんと皇くんだし!」

「戦うことだけがヒーローじゃないさ、与えられた役割を完璧にこなしてみせたのは葉隠さんだからね」

「そうそ!暑苦しい殴りあいは俺っち達の専売特許ってね!ベストおめでとう葉隠さん」

「ありがとう二人とも!チーム組めて楽しかったよ!」



今回の訓練は一人一戦までだ、俺っちは最後のチーム達が訓練を終えるまで地下モニター室で観戦してる。

実際にクラスメイト達の個性の使い方を見て学ぶってのも大事なことだ、そりゃ体を動かした方が楽しいんだが、尾白が言ったように戦うことだけがヒーローの仕事じゃないのさ。

訓練を眺めながら自分なりに評価を出して、それがオールマイトの評価と同じなら自分の見る目に自信も持てる。
轟と一緒になってあれやこれやと談義してれば、もう最後のチーム戦が終わってしまった、今日のヒーロー基礎学はこれにて終了だ。



「意外とマトモな授業だったな」

「やっぱり相澤先生が変だっただけだぜ」

「お疲れさん!緑谷少年以外に大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!!はじめての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」



それじゃあ授業終わり!皆着替えて教室にお戻り!
そう台詞を言いながら走り出したオールマイトはもう俺っち達の目の前から消えていた、足速すぎぃ!

先生が行ってしまったら俺っち達もここにいる理由はない、一人が動き出せば皆ゾロゾロと揃って校舎に向かい、そして授業が終わって下校時間になっても、皆訓練の熱が覚めない様子で訓練の反省会に盛り上がっている。

ただ一人を除いては。



「おーい、爆豪、もう帰っちまうのかよ」

「……あ”?」



実にドスの聞いた声で荷物を持った爆豪は俺っちを睨み付けた。
皆反省会してんだ、お前も混ざろうぜ、と誘ってみるも返事はなく、爆豪はそのまま教室を出ていってしまった。



「あー!爆豪帰っちまったのかよ!」

「まぁアイツもあんだけ暴れりゃ疲れてんだろ、それより俺っち達もそこそこで切り上げないと相澤先生に怒られんぜー」

「それもそうだな…」

「あ、デクくん!」

「おお緑谷来た!!おつかれ!!」

「お、今日のMVPが帰ってきたぜ」

「え?え?」



爆豪と入れ違いに教室の扉を開けたのは緑谷だ、戦闘服のままブッ壊した右腕にギブスをつけて帰ってきた彼に、切島や芦戸さん達が駆け寄っていく。
戸惑った様子の彼は視線を忙しなく動かし、彼らのマシンガントークに圧倒されている。

そこに俺っちも割って入って、最初に気になったことを聞いてみた。
その傷、保健室で治して貰わなかったのか?



「あ、これは僕の体力のアレで…それよりかっちゃんは…?」

「爆豪ならさっき帰っちまったぜ、まだ校門を出てはないと思う」

「そっか!僕ちょっと行ってくる!」



俺っちが爆豪の事を教えれば、彼は踵を返して出ていってしまった、慌ただしいやつだ、まぁあんなにやれば気にもなるか。



「…ん、メール来てる…ナナから!」

「ナナ?誰それ、カノジョ?」

「彼女!俺っちも帰るわ、また明日な!」

「え、は?!え、お前マジ!?今のマジ!?」

「はぁ!?彼女持ち!!?爆発しろ!!!」



慌てて荷物を引っ付かんだ俺っちの背中に突き刺さる非リアの視線を無視して、俺っちは教室を後にした。



そして俺っちは帰りがけに、聞いちゃいけない事を聞いちまって焦る羽目になるんだが、それはまだ後の話だ。

[*prev] [next#]