頬を撫でられる。 たったそれだけでぞくっと背筋を駆けたものに驚き、慌てた。
「で、えええ!?伝七?!」 「ん、何だ?」 「ナンかイツモとちがうんですけどぉ!?」
叫べど返るのはくすくすとした微笑ばかりで、雰囲気をがらりと変えた艶やかなる彼に団蔵はヘルプ!と壁際で静かに嗜んでいた左吉を呼んだ。
「さきっちゃんっ、さきっちゃーん!」 「うるさい何、だ…」 「助けて!どーしちゃったのこの子訳わかんない!」
左吉は少しだけ目を瞠って、団蔵に跨がる伝七を見る。 しかし数秒もしないうちに「お前の自業自得だ」と一蹴した。 まさかまさかの回答に、団蔵と、この事態を何とか丸く納めてくれるだろうと半ば安堵していた未だ酔っていない常識人の面々が硬直する。 何でだ、左吉と伝七は恋仲の筈、普通止めるだろ愛しい人が他の男に擦り寄ってるんだぞ!? そして気付く。団蔵が恋慕し、伝七に熱を上げている兵太夫すらこの事態を気にも掛けず、というか左吉と酒を酌み交わしているのだ。 「ばっかじゃないの」と団蔵を嘲笑いながら。 何とも目を疑う光景だった。もしかして犬猿と称せるのでは?とまで常に冷戦状態の二人が向かい合って盃を傾けているとは。 いよいよカオスとなりつつある室内の一角にしか過ぎない彼らは、今まで不自然に静かだった伝七の、零れたような笑い声にはっと彼を再度見遣った。
「何だ、知らず当てたのか?どこまでも欲に忠実だな」 「あああ当てた、って」 「『僕の身体に合った旨い酒を飲ませろ、したらば相手をしてあげる』」
すぅと頬の皮膚だけをなぞる掌が産毛を逆立たせ、前髪を掻き分けて落とされたのは軽く触れる口づけ。 くすぐったいような、むず痒いような戯れに身を捩りながらも、目に映り、肌で感じる仕草ひとつひとつに魅入られる。 ただでさえ、あまやかな声にくらくらとしている脳への、それは。
遂に動けなくなり、自分を見つめる団蔵を、薄氷に佇む危うさを纏い、伝七は蠱惑する。 大人しく食われるんだな。小さく嗤った左吉にくるりと振り返り。
「どうせ食うなら、左吉を食べたい」
ぺろりと唇を湿らせながらとろけた瞳にひたと捉えられ、事態は又もや急展開へと転がり込むのであった。
飲みすぎ注意
年齢操作。多分五年か六年になった一年全員で酒宴。 ちびちび飲む伝七に気付いた団蔵が無理矢理大量に飲ませた結果。 伝七は気分が良ければ相手してくれる。旨い酒を飲んだら気分が良くなる。そんな感じでこの流れ。 左吉と兵太夫は若干ビッチな伝七にもう慣れちゃってる。あと本気じゃないことにも気付いてるから、困惑する団蔵を面白がる意味で放置。
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