一方奈良家。
ヨシノは朝から朝食の支度をし、シカマルが大あくびで一階へ降りてくれば、そこにはすでにカミコとシカクの姿がなかった。
「…あれ、親父たちもう家出たのか?」
「父ちゃんは早朝から仕事があるってアンタが寝てる間に仕事に行ったよ。カミコは…今朝もご飯口にすることもなく修行するんだってついさっき出たよ。」
「は!?あいつ怪我してるからうちに来てんだろ!?しかも昨日の夜も食ってなかったじゃんか。」
「今一番の食べ盛りなのに……どうしたものかねぇ…。無理やりに言うわけにもいかないだろうし。怪我だって平然とした顔してるしねぇ。」
カミコは里内の外れにある修練場へ来ていた。
「(ここなら…誰にも邪魔はされない)」
少し肩を上げるだけで頭に響く鈍い痛さが全身を襲う。
流石に油断しすぎてしまった、と深いため息を吐いて。
夢幻眼を発動させ、その治癒力で医療忍術をかける。
もともと治療薬としても使われていた夢幻眼のチャクラ。
完全に傷が治るわけではないが、見た目の傷ぐらいは誤魔化せるだろう。
痛みの根本が消えるわけではないが。
包帯をしゅるしゅると取り除けば、痛々しい筈の傷は消えていて、縫われた痕だけが残る。
「…これで多少なりは早くあの家を出れる、かな。」
カミコは一日も早く奈良家から出たかった。
みなは良かれと思った配慮も、自分だけしか存在しないその空間がないだけで、相当なストレスと負担をカミコにかけていた。