黒バス | ナノ




フリーターと幼稚園児

楽しくはないが、退屈でもない。
 そんな毎日を繰り返すことに疲れを感じた時期もあったが、今はそれすら感じない。成人したばかりなのにそんな枯れた自分を、どこか他人事のように寂しい奴だなぁと思っていた。だからと言って何をするでもないのだが。
その日もオレはいつもと同じように昼前に起きてシャワーを浴び、煙草を一本吸いながら昼のワイドショーを流し見て、昨日の夜に買ったパンを食べる。何も変わらない、不満も充足感もない一日の始まりだ。携帯をチェックすれば、顔も思い出せない女からのメールがきていて、それだけが気分を鬱蒼とさせた。読まずにそのメールを削除して、携帯を布団に向かって投げ捨てる。
 今日は夕方から居酒屋のバイトが入っている。深夜のバイトは時給が高いので、好んで深夜時間帯の仕事を選んでいた。少ない時間で効率よく、がモットーである。このバイトだって時給だけで選んだから割ときついが、世渡りのうまさには自信がある。店長には気に入られているし、他メンバー受けも良い。自分で言うのもなんだが顔が良いものだから、少し良い顔をしてやれば男女問わず大抵の人間はころりとオレのいうことを信じるのだ。
 世の中ちょろい。
 バイトまでの数時間で洗濯でもしてしまおうかと、布団のシーツを剥がす。今日も憎らしいほどいい天気だ。そんなに照ってどうするんだ、と太陽にケチをつけてから、シーツと今着ているスウェットを洗濯機に放り込んで、新しいスウェットとTシャツに袖を通した。
 と、その時だった。ピンポーンと、調子はずれな音が鳴る。この安アパートのチャイムは、少しばかり間が抜けていて、通常のものよりも半音低かったりやけに間延びしていたり、毎回豊富なバリエーションでオレを楽しませてくれるのだが、今日はやけに早いリズムでオレに来客を告げてくれた。太陽どころか、チャイムまで今日はやる気満々のご様子である。結構なことだ。

「はいはい、どちらさま……って、あれ?」

 だるい身体をゆっくりと動かしてドアを開けるが、そこには誰もいない。いたずらかと思ってドアを閉めて鍵をかけ、洗濯機前に戻ると、再びチャイムが鳴った。さすがにいらっとして、今度は勢い良くドアを開けるが、やはりそこには誰もいない。

「……なんなんだよ、ったく」

 苛立ちで苦くなる口内で軽く舌打ちをして、部屋の中に戻ろうとしたその時。くいくいとズボンを引っ張られる感覚に下を見ると、なんかちっちゃいのがいた。
 まずふわふわの水色のつむじが見えて一瞬たんぽぽの綿毛を連想したのだが、その綿毛が突然上を向いて、それで初めてオレはその綿毛が人間の子どもだということを理解した。
 子どもと関わる機会は極端に少ないから大体の年齢を察するのも難しいのだが、小学生……いや、幼稚園児くらいだろうか。真ん丸な双眸は、頭髪と同じラムネ色をしている。綺麗な色をしているのに、子どもらしい目の輝きがない気がするのは気のせいか。ぱちんと瞬きした途端に太陽がその双眸に映り込んで、きらりと光った。

「りょうたくんですか」
「は? あんた、どこの子っスか」
「りょうたくんの子どもです」

 小さな唇が動いて、オレの理解出来ない言語を喋る。何を言われているか瞬時に判断出来ず、ん? と首を傾げると、そんなオレに気付いたのか、きせくんの子どもです、と先ほどと一字一句変わらないお言葉をくださった。年の割に空気を読むのが上手い子どもだ。

「えーと……、迷子かな? お父さんとお母さんとはぐれちゃったんスか?」

 女の子に向ければ大抵の要求がすんなんりと通る笑顔を貼り付けて、しゃがんでその子の顔を覗き込む。嫌に色の白い子だった。透き通るような肌と、視線を逸らせばすぐに見失ってしまいそうな透明感。と言えば聞こえはいいが、影が薄い。さっきオレがすぐにこの子に気付けなかったのも、背が低くて視界に入らなかった所為ももちろんあるが、それ以上にこの子の影の薄さに原因があると思う。
 こりゃ、お母さんたち大変っスねー、と他人事に考えていたのだが、その子が再び無表情のまま口を開いて、オレに最後通牒を寄越してきた。

「お父さん」

 一言だけ言い切って、オレを真っ直ぐに指差す。
 ……ちょっと待て。どういうことだ。確かにオレは貞操観念が緩いというか、来るもの拒まず去る者追わず精神で、名前も知らない女の子と寝ることもある。あるのだが、避妊はしているはずだ、はず、うん、多分。
 酔っぱらって前後不覚になった時のあれこれについては、正直自信がない。
 過ぎ去りし日のあれこれを思い返すと同時に、頭の中が真っ白になっていく。いやいや、そんなはずは、だけど、いや、そんなはずはない、と思いたい。

「迷子っスよね? そうっスよね? おまわりさんのとこ行こうか!」

 オレを指さしたまま微動だにしないちびっこを小脇に抱えて、オレは部屋着のままで部屋を飛び出した。なんだ、このガキ。人を指差しちゃいけないって親に教わらなかったのか。ああ、親ってオレか。
 そんなことあってたまるか!



「おまわりさん、この子迷子みたいなんスけど」

 近所の交番に駆け込んで、ぜえぜえ肩で息をしながらおまわりさんに訴えると、初老の人が良さそうなおまわりさんはにっこりとほほ笑んだ。

「そうですか。ボク、お名前は?」
「テツヤ」
「いくつ?」
「五歳」

 にこりと微笑みながら問い掛けるおまわりさんに、ちびっこは恥ずかしそうにオレの陰に隠れながらも、問いかけに淡々と答えていく。さすがおまわりさん、伊達に税金で飯を食べていない。
 この人ならば、すぐにちびっこの本当のご両親を見つけてくれることだろう。安堵がオレの胸中を占める。よかった、本当に良かった。楽しくはないが、退屈でもない。そんな毎日に不満がないわけではないが、こんなスパイスは望んでいない。是非とも御免被りたい。

「お父さんはどこにいるのかな?」
「ん、」

 そう思った瞬間、再度オレのズボンがくいくいと引っ張られた。
 その微妙な感触に下を見れば、ちびっ子がオレをじぃと見上げて真摯な瞳で真っ直ぐに見詰めてくる。何も言わないが、それでもおまわりさんの問いかけへの答えとしてはそれだけで充分すぎるほどに充分であった。

「困るんだよね……」
「え、は?」
「交番は保育所じゃないんですよ。自分の子どもの面倒くらいきちんと見てくださいよ。あんた、この子の父親なんでしょ?」

 あんなに人当たりの良かったおまわりさんが、今はつくづく困り果てたかのように諭すような口調でオレに語りかけてくる。はぁっと深いため息を吐かれて、オレは悪くないのに反射的に口を吐いて出そうになった謝罪の言葉を飲み込んだ。

「最近の若い人は……。ほら、こんなに素直で可愛い子じゃないか。可愛がってやりなさい」
「いや、ちょっと、違うんスってば!」

 抗議も虚しく、オレはちびっ子ともども交番を追い出された。
 素直で可愛い子? どこがだ。大体が、オレとこの子で似ているところなんか一つもありはしない。肌の色も、髪の色も、目の形も、唇は……少し似ているかもしれないが、オレの子ならもっとイケメンに違いない。
 呆然とその場に立ち尽くしながらも、ちらりとちびっ子を見ると、彼もオレのことをじぃと見つめていた。咄嗟に視線を逸らしてしまい、これじゃオレにやましいことがあるみたいだと思い直してもう一度ちびっ子を見ると、いない。
 つい数秒前までオレの足元に纏わりついていたちびっ子がいない。やっとオレを解放してくれたかとほっとしたのも束の間、ちびっ子はすぐ目の前で野良犬との対峙を果たしていた。
 昨今では殆ど見なくなった野良犬が、何故このタイミングで現れるのか。人生が楽しくないとばかり思っていたオレに対する、神様からのささやかプレゼントだろうか。野良犬はぐるると唸りながら、完全にちびっ子をロックオンしている。これはなかなかにまずい状況だ。

「ちょっと……!」

 いくら知らない子どもでも、目の前で怪我をされるのはさすがに夢見が悪い。非能動的で非道徳的なオレだって、そのくらいの良心は持ち合わせている。
 家を出た時と同じ恰好、ちびっ子を小脇に抱えて、オレはその場から猛ダッシュで逃げた。



「もう……、何やってんスかまじで……」

 全速力でどのくらい走っただろうか。
 ようやく野良犬を振り切って、小さな公園に逃げ込んだオレは息を切らしてちびっ子を非難した。じろりと睨むと、意味がわかっていないのか、ちびっ子はうつろで真ん丸な目でオレを捉えたまま、こてんと小首を傾げた。

「あんな犬に構ったら危ないってわかんないんスか? 怪我してたかもしれないんスよ」
 
 小さな子供に向かって、身振り手振りを交えて必死で説明してみるが、それでも理解出来ないのか彼はなんの反応も示さない。おまわりさんには質問の一つひとつに答えていたのに、この落差は一体なんだ。オレの子どもだと言うのならば、少しはオレの言うことを聞くべきじゃないのか。
 そこまで考えてオレははっとした。この子はオレの子ではないし(多分)、そんなこと期待するのもおかしいのに、何に腹を立てているんだオレは。

「りょうたくん」
「あ? なんスか」

 相変わらず無表情なまま、オレのズボンを引っ張ってくるちびっ子を不機嫌そうな顔で一瞥した途端、その能面みたいな表情が崩れた。

「たすけてくれて、ありがとうございます」

 にっこりと、そんな擬音が聞こえて来そうな、花が綻ぶ笑顔でちびっ子は言った。
 印象以上に幼いその笑顔に、知らず鼓動が跳ね上がる。最初から今まで、野良犬に睨まれても眉ひとつ動かさなかったこの子が、笑った。
 なんだ、案外かわいいじゃないか。

「わかってくれたんならいいんス」
「あと、もう一ついいですか」

 いきなり饒舌に喋り出したちびっ子に違和感を覚えつつも何? と聞けば、無表情に戻った彼が下っ足らずな口調でこう言ってのけた。

「ボクのお父さんはりょうたくんではありません」

 本日何度目かわからない思考のフリーズが訪れた。いや、こいつがオレの子どもじゃないってのは分かっていたけど、いや、正確に言えばそうでありますようにと願っていただけなのだが。
 目まぐるしい展開に頭が追い付かないオレに、ちびっ子はもみじみたいに小さな手で手紙を差し出した。

「これ、りょうたくんのお母さんからのお手紙です」

 

『涼太へ

 従兄弟のみきちゃんの子どものテツヤくんです。
 みきちゃんご夫婦、一ヶ月間だけ海外に出張に行くんだけど、テツヤ君が絶対行きたくないって駄々をこねたみたいなの。
だから家で預かることにしたんだけど、良く考えたら今月結婚記念日で旅行に行くんだっだのよ、母さんすっかり忘れてた!
と言う訳で、テツヤ君のことよろしくね

母さんより』



「なんスか、これ……」
「手紙です」
「いや、それはわかるけど」

 一気に身体中の力が抜けた。ベンチの背もたれに寄りかかって、深いため息を吐く。

「なんでオレの子どもだなんて嘘吐いたんスか」
「りょうたくんのお母さんが、その方がおもしろいからって」
「……ああ、そうっスか」

 安心したと思ったら、今度は怒りがふつふつと湧いてくる。オレのことを散々騙してばかにしておいて、一ヶ月間面倒を見ろだなんて勝手すぎる。
 目の前のいたいけな幼児に悪意などないのかもしれないが、それでもこの理不尽さに冷静でいられる程オレは大人ではない。

「りょうたくん?」

 突然真顔になり何も発しなくなったオレに、不穏なものを感じたのだろうか。ちびっ子が恐々とオレの名前を呼んだ。野良犬も怖くなかったくせに、オレのことは怖いのか。ならもっと怖がればいい。

「ふざけんなよ」

 出来るだけ大きな声を出さないように努めたが、それでも腹の底から絞り出した声はあからさまな怒りを含んでいた。小さな肩がびくりと揺れたのを認めて、怒りがそがれそうになったが、自分を叱咤してベンチから立ち上がる。

「オレのこと騙すような奴とは一緒に住めねぇわ」

 公園に設置された時計を見れば、もうバイトに向かわなくてはいけない時間だ。
 小さな手がオレに向かって伸ばされるのを視界の端に捉えたが、それを無視してオレはその場からとっとと去った。振り向けば、ちびっ子はぽつんと立ちつくしたまま。

(早く母さんのところに帰れよ)

 苦々しい気持ちを噛みしめて、オレは着替えの為に自宅へと向かった。



「黄瀬君、なんか今日元気ない?」

 バイト先の店長にそう聞かれても、曖昧な笑顔を返すことしかできなかった。ぼーっとしていて呼ばれても気付かないし、皿は割るし、今日のオレは散々なのだ。心配されても、調子が悪いのではないから明確に答えることが出来ない。原因は分かってはいるのだが。
 まぁちょっと、と言葉を濁すと、今日は早めに上がって良いから、と肩を叩かれた。稼ぎたいから、なるべく長時間入りたいのだが、今日はこれ以上ここにいても足手まといにしかならない気がする。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 店長の気遣いに甘えて、その日のバイトは二時間ほどで上がらせてもらうことにした。



 まかないを食べ損ねたから胃は空っぽで、先ほどから切なげな音でオレに空腹を訴えてきている。コンビニで弁当とおむすび、それにパンを買って、ふらふらと家に向かう。
 ちびっ子はどうしているだろうか。今頃本当の母親の所に帰ったか、それともうちの母さんの所へ行ったか、もしかしたらオレの部屋の前にいるかもしれない。その可能性に行当ってしまい、本日何度目か分からないため息を吐いた。
 あいつ、確か五歳って言ってたっけか。まだ右も左も分からないような年齢だ、一人で電車にも乗れないだろう。ならば、あの公園から徒歩圏内であるオレの家に来ている可能性が高い。ポケットに突っ込んでいた携帯を取り出して着信を確認するが、母親からのものはなかった。文句を言ってこない、つまり、ちびっ子はオレの母さんの所にも実の両親の所にも帰っていないということだ。
 面倒くさい、迷惑だ。そうは思っても自然と歩調が早くなる。すっかり夏の気配は消え、太陽が沈んでしばらくたったこの時間は黙っていれば肌寒さを感じるほどだ。あの子がこの暗闇の中で寒さに震えているのかと思えば、オレだって鬼ではない。早く帰って、あたたかい牛乳くらいは出してやる。それに、このパンだって。弁当はオレが食べたくて買ってきたハンバーグだから、これは譲れないが。
 気付けば競歩の勢いで歩いていて、普段なら十五分かかる道のりを十分で歩ききった。薄暗い街灯を頼りに階段を昇り部屋の前まで辿りつくが、いるとばかり思っていたあの綿毛みたいな頭が見当たらない。
 それが不満なのではない。ただ、いると思っていたものがいなかったことに肩透かしを食らっただけで。

「ただいまー」

 普段言わない言葉を口にしながら部屋に入り、明かりを点ける。一人で暮らし始めてから、虚しさを増すだけだからただいまも行ってきますも言わなくなった。久しぶりに口にした言葉は、やはり空虚さだけを増長させて、それはオレを酷く憂鬱にさせた。
 温めて貰った弁当は、道中で少し冷めてしまった。ハンバーグを一口大に切って口に運ぶ。濃い目の味付けが口の中に広がり、空っぽの胃袋にすとんと落ちていく。
 もそもそと咀嚼する音が鬱陶しくて、それを誤魔化す為にテレビをつけるが、もやもやした気持ちは消えない。
 あいつ、今どこにいるんだろう。まさか、あのまま公園にいないよな。まさか。
 時計を見ると、午後九時を回ろうとしていた。この時間に、暗い公園で五歳の子どもが一人でいるなんて、さらわれても殺されても文句は言えない。この暗くて寒い中、ずっとあそこにいる筈がない。
 だがしかし、一度その思考にとらわれてしまえば、そこから抜け出せなくなるものである。ぐるぐると回る脳みそをよそにハンバーグをもう一口頬張るが、味が分からない。

「……いないとは思うけど、一応」

 誰に言うでもなく言い訳を口にして、薄手の羽織を手にオレは部屋を出た。



 公園は、部屋から歩いて十五分程の位置にある。気付けば全力でその距離を走り、八分で公園に辿りつく。街灯の少ない寂しいその場所を遠目からぐるり見渡すと、薄暗い街灯の下、ベンチで蹲る影を見つけた。喉の奥が熱くなるのを感じながら、なるべく音を立てないようにその陰に近寄る。
 小さな影はベンチの上で身体を丸めて小さくなっていた。オレンジの街灯に照らされて、昼間はラムネ色に見えた髪の毛が橙に滲んでいる。眠っているのかとも思ったが、耳を済ませて見れば、小さな嗚咽が聞こえて、胸が締め付けられる思いだった。

「こんな所にいたら風邪ひくっスよ」

 声をかけるが、ちびっ子は反応しない。ひくひくと肩を小さく揺らしながら、必死に嗚咽を噛み殺そうとしている様が健気に見えて、無意識のうちにその背中を撫でていた。途端、がばっと身体を起こしたちびっ子の顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
 言葉に詰まりながらも、その震える小さな身体を抱き締めると安心したのか、彼は大声で泣き始めた。耳元で泣かれて煩くて叶わない筈なのに、今はそれが全く気にならない。

「ごめん、ごめんね」

 小さな手で精一杯しがみついてくる背中を叩いてやると、次第に泣き声は小さくなっていく。頭を撫でてやると、ようやく顔をあげた。ラムネ色の大きな目には涙の膜が張っていて、それにオレが映っている。

「テツヤ君。うち、帰ろうか」

 意識して優しい声を出せば、小さな頭がこくりと縦に振られる。小さな身体を抱っこしたまま、八分で来た道を二十分かけてゆっくり歩いた。途中、うつらうつらと船をこいでいたテツヤ君は、いつの間にか眠ってしまっていた。
 起こさないように慎重にポケットから鍵を出して解錠する。慌てて飛び出たから、電気が付けっ放しだった。

「ただいま」

 誰に言うでもなく零れた言葉はだがしかし、悪戯に虚無感を煽ることはなかった。
 敷きっぱなしの布団に新しいシーツを敷いて、そこにテツヤ君を寝かせる。眠る顔は本当に幼い。あどけない表情に、初めて庇護欲というものを感じてしまった自分に驚きながらその幼い横顔を撫でる。おやすみ、と呟いた声に反応したのか、テツヤ君の口元がもごもごと動いた。
 楽しくはないが、退屈でもない。そんな毎日を繰り返すことに疲れを感じた時期もあったが、今はそれすら感じないと思っていたのだが。
どうやら退屈にだけはならないことが予想される未来を予感した途端、胃袋が空腹を訴えてきゅうと情けなく鳴った。

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