同担だから平等です!




「宮地くん」
「ああ」
「朝ごはんは抜いてきた?」
「ああ、今なら無限に食える」
「よし!じゃあ行くよー!」

二人で自動ドアの前に立つ。目の前にはキラキラの装飾。聞き慣れたアップテンポの音楽にテンションが上がる。
そう、今日は宮地くんとみゆみゆのユニットのコラボカフェに来たのだ。
二人で頑張って予約をとり、お金を貯め、推しのコースターを引くまで頑張ろうと誓ってここに来た。これだからランダム商法は、と思いつつも財布を開いてしまうのがオタクだ。
店内は男性客がほとんどのため私は浮いてしまっているがそんなことは気にしない。案内された席で宮地くんと二人、メニューとにらめっこだ。

「みゆみゆのコースター、ピンが二種と集合が二種だから計四種……二人で八枚だね」
「とりあえずメインメニュー決めようぜ」
「うん!私このみゆみゆソロ曲イメージのオムライス!」
「俺もそれにする」
「ドリンクは…、飲めないやつないから片っ端からいこうかな」
「じゃ、頼むか」

店員さんに注文を伝え、店内を見回した。

「……宮地くんて、似合わないよね」
「あ?何が」
「こういう空間」
「うるせー」
「褒め言葉だと思うんだけど…宮地くんて一人でもこういうとこ来てたの?」
「いや、部活であんま予定組めなくて来たことない」
「そっか!じゃあ今日は楽しもうね!」
「おう」

運ばれてきた料理とドリンクをパシャパシャと撮影し、一緒に運ばれてきたコースターを確認する。裏返されて置かれたそれを二人でひっくり返した。

「「あっ!」」

四枚の内、一枚がみゆみゆだった。

「やったね宮地くん!」
「おう、自分で引けるのってなんか嬉しいな」
「でしょでしょー、ハマると良くないやつだよ」

お金飛んでくから、そう言ってそのコースターを宮地くんに差し出した。

「え、」
「はい、宮地くん」
「いいのか?」
「うん、もう一枚引けばいいだけの話だし」

私はオムライスを頬張りながらそう言った。









「出ないね…」
「そうだな」

その後もドリンクを追加したがなかなかみゆみゆのコースターは出てくれなくてお腹がいっぱいになってしまった。

「もう腹いっぱいだしな」
「そうだね、ちょっとわたし行ってくるね」
「は?行くってどこに……」
「こーかん!」

ぽかんとする宮地くんにわたしはニイッと口角を上げた。








「おにーさん、誰探してます?」
「すみません、私みゆみゆ探してるんですけど…」
「あっいいんですか!?ありがとうございますー!」
「あー!めっちゃ分かります!前回のツアーの衣装めちゃくちゃ可愛かったですもんね!」

色んなテーブルを回り、コースター片手に交換してくれる人を探す。色んなファンの人と話すのは楽しいし一人の時はよくこうして探していた。
すると、そのうちの一人の人に声をかけられた。

「え?連絡先ですか?ツイッターのアカウントとかでもいいです?」

スマホ取ってきます、と伝え席に戻ると鬼の形相の宮地くんがいた。え、なんで。

「おい」
「は、はい……」
「お前コースターの交換しに行ったんだよな」
「うん」
「なんで連絡先の交換になってんだよ」
「え、あ、聞かれた、から?あっでもね、コースターは全部揃っ」
「そういうことじゃなくて」
「……はい」

怖い。なんでそんなに怒ってるの。

「断ってこい」
「え!?だっていいよって言っちゃったし……」
「連れが許してくれないから無理だって言え」
「ええ……」
「なんか文句あんのか」
「な、ないです……」
「なんか言われたら俺の事指さしていいから」
「え、はい……」

私は何も持たず、先程の人のテーブルに戻って、事情を説明した。

「あの、すみません。連れが連絡先教えちゃダメだって……」
「連れ?女の子?」

そう聞かれたので宮地くんを指さすとその人は苦笑いをして「じゃあまたどこかで」と言ってくれたので、これでもかと何度も頭を下げ自分の席に戻った。

「ちゃんと断ってきたよ……」
「お前、危機感無さすぎ」

そう言ってジト、と視線を向けてきた宮地くんに首を傾げた。

「……危機感とは」
「相手は男だぞ」
「? オタクだよ?」
「そういうことじゃねえ」

納得がいかない様子の宮地くんに口を開いた。心配してくれるのは、有難いことだし。

「……でも宮地くんがそう言うならこれからは気をつける」
「……ああ」
「でねでね!ちゃんと交換して貰えたから二人分揃ったよ!」

はいこれ宮地くんの分、と差し出した。

「あ、あとね、前回コラボのみゆみゆのコースターもおまけにってくれたから宮地くんにあげる!」
「お、おう」
「いやーやったねえ、全部揃ったねえ」

ニヤニヤとコースターを眺める私に宮地くんは苦笑した。

「本当に好きなんだな」
「え!?今更!?!?」
「改めてそう思っただけ」

ドリンクを飲み干し、制限時間も近づいていたのでそろそろ出ようと支度をする。財布を取りだし伝票を覗き込んでいると宮地くんに取り上げられた。

「俺が出す」
「…………なんで!?!?」
「なんでも。連れてきてもらったし」
「いやいや、どうせ一人でも来てたし自分の分くらい払わせてよ」
「こういう時は奢られるもんだろ」

そう言った宮地くんにキョトン、とした顔をしてしまったけれど、それはダメだ。なんかルール違反な気がする。

「待って待って、推しの前では誰しも平等。男女とか関係ないし、私は推しのためにお金を払いたいの。まあここで払った内の数パーセントも推しに入らないかもしれないとわかっていても払いたいの」
「いやでも、」
「それに宮地くん部活忙しくてバイトもしてないでしょ?」
「それはまあ、そうだけど」
「貴重なおこづかいじゃん!そういうのは彼女にしてあげなよ!」
「彼女はいない」
「へ、」
「いたらお前のこと家に呼ばねえだろ」
「そ、それもそうだね……」

告白を全て断っている、と高尾くんが言っていたけれど、宮地くんの口から彼女がいないと明言されたのは初めてのことだ。
でもやっぱり、それとこれとは別で。レジできちんと自分の分は出した。ここまで来ると意地だ。










「楽しかったねー!」
「ああ」
「どうでしたか!初めてのコラボカフェは!」
「何だよ、そのテンション」

そう言って笑った宮地くんに私も笑った。
最近色々考えていたけれど、私は今の関係が好きだ。


同担だから平等です!
友達で、同士で、
それが全てだ

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