詫びぬれば 今はた同じ 難波なる


貴方がもう戻ってこないと、パウリーから聞いた。
貴方がただの船大工ではなかったと、アイスバーグさんから聞いた。
話を聞いた時、二人は怪我を負ってボロボロなのに、私のためにすごく丁寧に言葉を選んで伝えてくれたんだと思う。その優しさがとても痛かった。
私は貴方の安否を聞いたけれど、分からないと言われた。

あの日何が起きたのか、私は知らない。







私は何も知らなかった。あんなにも長い間、同じ時を過ごしてきたというのに。
私は何も知らなかった。何も知らないまま、“ロブ・ルッチ”という男を愛していた。
私の隣にいた貴方は誰だったのだろう。
一方的に交わした言葉も、触れた手も、重ねた唇も、抱かれた腕も、全部全部私の中にはっきり残っているというのに。あの時間は全て幻だったのだろうか。
私を置いていったということは、つまりそういう事なのだろう。私は彼にうまく使われたカモフラージュの道具に過ぎなかった。
それが、唯一残った事実だった。

私はしばらく立ち直ることが出来ず、部屋にこもって一日中泣いていた。ガレーラのみんなが心配して、色々差し入れてくれた。それでも私は部屋から出ることすら出来ず、玄関の前に差し入れのお酒やらスイーツやらが山積みになっている。玄関からはドアをノックする音と私を心配する声が聞こえてくる。みんなだってつらいはずなのに。
私にはそんなこと出来ない。作られた彼を思い出し、泣くことしか出来ないのだ。涙は意外にもなかなか枯れてはくれないもので、頬が濡れていない時などなかった。

会いたい。

貴方に騙されていたと知っても、やっばり私は貴方が好きで。
貴方の吐息も、貴方から伸ばしてくれた手も、貴方から重ねてくれた唇も、貴方から私を求めてくれたことも、全て嘘だなんて思わない。
また貴方に触れたい。抱きしめて欲しい。
そう思えば思うほど、記憶の中の貴方が朧気になっていく。だめ。私からいなくならないで。
まだそんなに時間は経っていないのに霞んでいく記憶に腹が立つ。

ああ、貴方に会いたい。

それが二度と叶わないならば、もう生きている意味なんてないの。


みをつくしても 逢はむぞと思ふ
この身を捨てても、貴方に会いたい


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