01.わたしの仕事

「今夜は五番隊隊長か……うーん面倒だ」

頭の中でスケジュールを確認し、シュミレーションをする。藍染隊長の、いや、藍染のことがあってから二番隊の任務が増えた。そしてその増えた仕事、「内部諜報活動」の任は私に下った。内部諜報は、身内のスパイだ。なにか証拠を掴んでも、記録に残すことは出来ないし、公になることもない。二番隊に配属されて以降、一番嫌いで、でも一番楽しい仕事だ。
最近は、とある貴族と良くない繋がりを持っていた隊士が情報漏洩をしているという噂を元に調査を進め、その隊士を特定した。そう、私の仕事は証拠を掴むところまで。そのあとの処分は知らないし、正直知りたくない。
その仕事以降は、大きな仕事はないのでゆるゆると鍛錬を続けている。私は内部諜報員だけども、普段は普通に二番隊の任務に就いている。じゃないと他の隊員に怪しまれてしまう。中には二番隊の内部諜報の任務もあったりする。今は二番隊の仕事と鍛錬だけでいいので逆に楽な時期だ。
そんな中、砕蜂隊長に呼び出され、また内部諜報の仕事を与えられた。それが今回の任務、復隊した隊長格の人物の素性調査、らしい。その人だけでいいのか、と聞いたら他の内部諜報員も動くと言っていた。
内部諜報は同じ二番隊の隊員の中でも殆どの者が存在すら知らない。他にも内部諜報員はいると聞いているが、私も誰か知らない。こういう時、二番隊は怖いな、と思う。自隊だけど。

「春原十二席」
「あっ、はい!」
「またぼけっとしてましたね?」
「あはは、ごめんなさい」
「もう…その書類、今日までですからね」
「大丈夫です!分かってます!」

いけないいけない。ちゃんと仕事しないと。二番隊の普段の仕事と内部諜報を両立させるのは結構きつい。でも、与えられた任は責任を持って全うしないと。そう思いながらも上位席官の言葉を受け流した。私は、少しおちゃらけているけど人に迷惑をかけず、嫌がられる仕事も率先して行う。人付き合いも良く、多くの人に慕われている。それが、私が“作り上げた”私だ。二番隊に入ったばかりの頃はもっと目立たない普通の隊士だった。二番隊はあまり目立ってはいけないのだけれど。しかし、諜報活動をするにあたって人脈ほど力になるものはない。その人脈も、私がスパイだと悟られてはいけない。気づかせてはならない上で、協力を得なくてはいけないのだ。






「あら、栞!今夜、分かってるわよね?」
「乱菊さん!分かってますよ、ちゃんと定時で上がりますって」
「ならよし!今日は色んなとこの色んな人が来るけど無礼講よ〜!」
「あはは、乱菊さんだけですって、そんな風に思ってるの」
「なによう」
「だって、復隊された方たちって錚々たる面々なんですよね?」
「まあね、でも気さくな人たちだから大丈夫よ」

お昼過ぎ、廷内を歩いていると乱菊さんと出くわした。今日、飲み会に誘ってくれたのは乱菊さんだ。誘ってくれた、というか誘って貰えるように仕向けた、が正しいのだけれど。

「アンタ、上に取り入るの得意なんだから頑張りなさい!」
「もう、なんの話ですか〜」
「うちの隊長もアンタのことお気に入りだからさ、今日の飲み会の話をしたら、春原に迷惑かけるなよって言われたし〜」
「あ、はは」

その言い方だと、日番谷隊長は来ないのか。なんだか夜が憂鬱になってきた。まず、大人数の飲み会では“対象”に近づけるかもわからない。まずはその人の懐に入らねばならない。それに、酔っ払った乱菊さんのお世話もある。長引きそうな任務に思いを馳せながら、乱菊さんに笑顔を向けた。


たしの仕事
それは、
護廷十三隊で一番罪深い仕事
 
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