ここテンプルム国は、世界中で唯一魔道士が存在する国である。
魔道士にはそれぞれ属性となる三つの「色」があり、彼等は自分の属性にあった魔術を覚える。「赤」の『破壊』、「青」の『治癒』、そして「黄」の『創造』ーーこれら三つの属性は混ざり合うこともあり、魔道士には複合した属性を持つもの、更に複合した属性から新たに属性を生み出す者もいる。


そして、テンプルムの魔道士は数々の「フォール」と呼ばれる魔道士の組織に入っている。一人の魔道士を「フォールマスター」として集まった彼らは、魔物討伐などの大事から日常の小さな事などの依頼を「クエスト」としてこなし、報酬を得る。
基本的には、国から認定されないと「フォール」として機能はしないが、中には国から非公認の「フォール」も運営されている。実力はあっても世間に馴染めないような変わり者の集まるフォールは、公認されているフォールには目の敵にされている。


ーーそしてかくいうこのフォール「カセータ・デ・ペーロ」はその非公認フォールであるのだ。





+−+


「へえ……ここ、非公認フォールなんですか」

「そうだよ。結構功績があるから尚更、他のフォールには睨まれてる」

「でも、非公認なら国に消されたりとかしないんですか?」

「消されたりって……」


クロワの毒々しい物言いに苦笑いをしながら、ジャックはジェイドの方へ目を向ける。
瞳を閉じて壁に寄り掛かる長身の青年はかなり様になってはいるが、実は寝ているだけだとジャックは知っている。ジェイドはそういう男なのだ。



「ジェイドはね、国一番って言っていいくらいには強い魔道士なんだよ。このフォールには、他にも高い実力を持つ魔道士がいる」

「ジャックもですか?」

「はは、それはどうかなぁ。
まあ、強い魔道士が多いこのフォールは国に対して結構な利益をもたらしてる。だから、暗黙の了解ってところかな」

「じゃあ公認できるんじゃないんですか?」

「うーん……公認フォールはメリットもあるけど、色々規制ができるからわざとしてないんだよ」

「そうなんですか」


返答する度にとんでくるクロワからの質問もやっと止み、ジャックは溜息をつく。この少女は、さすが芸術家とでも言うべきか好奇心が旺盛のようだ。

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