薄い煙を巻きながら渦巻く風が、辺りに血の臭いを蔓延させる。
床や壁、天井にまで塗りたくられた赤黒い血が、ぽたぽたと不規則に落ちる。


折れた刀が畳に散らばり、鈍い光を放つ。
血だまりに浮かぶのは、一本の腕。

無残にも広がったその光景は、残酷な静寂を映し出している。



生きるものは、誰もいない。















「ーーーー……ここ三月頃から、歴史修正主義者による新たな動き……『本丸襲撃事件』が増えています。いずれも狙いは審神者。
政府も警備の強化を実施しておりますが、審神者方も十分にお気をつけ下さい」





三月中旬に行われる審神者会議。
国ごと、各本丸の審神者が一挙に集まり、歴史修正主義者との戦いの現状や、刀剣男士の実装についてなど諸々の事を話し合う会議である。



通常であれば、会議は最後に連絡や最終確認をして終わりになる。
ーーーーしかし、今回会議で伝えられたのは歴史修正主義者による「本丸襲撃事件」。
一気にざわめく会場は、困惑や恐怖で沸き立つ。





その中、一人顎に手の先を当てて考え込んでいた審神者は、伏せた目をあげた。

鋭く輝く、金色の瞳。白い顔を縁取る黒髪は、横で緩く結われている。





「本丸襲撃事件……か」




「主、何か思うところでもあるの? 」





彼女の近侍であるらしい「加州清光」が、低く呟いた彼女に問いかける。周りの「加州清光」と一線を画すほど冷静な瞳は、深い赤を光らせた。





「私の方に、審神者としての調査依頼が来ていてな。おそらくこの襲撃事件のことだろう」



「……審神者に、調査依頼? 」




「ああ。襲撃事件で殺された審神者達にこぞって不自然な点があるらしい」




「不自然な点? 」









「殺された全ての審神者の身体のいずれか一部が、消失しているんだ」








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