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お前を好きで何が悪いっ!


 確か、初めてアイツから投げられたセリフはこうだった。

『おまえなんかっ、だいっきらいだ!!』

 幼いながらに何て理不尽な事だろうと思ったが、不思議とアイツを嫌いになることは無かった。


 ◇


 新生徒会が発足し、俺以外の役員が入れ替わった。少し前の一人で…いや、二人で仕事を回していた日々を懐かしく感じる。

 美形嫌いの三澤弥。

 嫌いだ嫌いだと言いながらも、何だかんだでお人好しだから俺の世話も細かくしてくれてたっけ。俺の舌の好みも完璧に把握していたようで、休憩時は良く癒された。
 アイツの手伝いが無くなったからって、接点がゼロになった訳ではない。家の繋がりがあるからパーティでも相変わらず会うし、俺が会長をやっている限りは新聞部からのインタビューも有るだろう。
 けど、あの二人で仕事をした時間は、矢張り特別なものだったと思う。

「会長、良かったら休憩を」

 新しく副会長へ就任した、中性的な容姿の少年が頬を染めながら珈琲を出した。

「ああ、悪いな」

 好意を無下にも出来ず、好みとはかけ離れた味の液体を無理矢理に喉へと流し込んだ。







「ちょっと、聞いてますか!?」

 俺の目の前で、普段よりも更に目を釣り上げた三澤が今にも噛み付きそうな顔をしている。インタビューを全く聞いていなかったから怒っているのだ。

「ん、何だっけ」
「もう! 今ので一体何回目だと思ってんですか!!」

 プリプリと言う表言がピッタリな怒り具合に、俺は思わず笑みをこぼした。

「何笑ってんですか!」
「いや、やっぱお前は可愛いなと思って」

 言うや否や、三澤の顔が真っ赤に染まる。

「なっ、なっ!? ななななっ、なッ」
「今お前、全国で一番【な】を使ってると思うぞ」

 ――バチン!!

 三澤が手に持っていたであろうレポート用紙で、俺は頭を殴られた。

「いい加減にして下さいっ! 俺は真面目に仕事やってんですよ!」
「いや、俺も真面目に言ってんの」
「はぁ!? うわっ!」

 ボールペンを握りしめている三澤の手を握りしめた。三澤の顔が更に赤くなる。このまま行けば爆発しそうだ。
 この、お世辞にも美しいとは言い難い容姿をした少年を可愛いと思い始めたのはいつからだったか。この素直とはかけ離れた、捻くれた性格を可愛いと思ったのは、いつからだっただろうか。
 アイツが俺を見る目をもっと違うものにしたくて、気付けばセフレなんか一人も居なくなっていて。

「“好みのタイプはどんな人ですか?”だったな。タイプは無いが、好きな奴なら居る」
「はっ、え?」
「自分の容姿にコンプレックス持ちまくりで、容姿の良いヤツを目の敵にしてて」
「え"っ、」
「その癖お人好しで、休憩の時には必ず俺に日本茶を淹れてくれる」
「ちょっ、」
「せっかく距離が近付いたと思ったのに、最近は碌に顔も見せないから中々会えなくて寂しい」
「ひぇっ!?」

 掴んでいた手首を思い切り引っ張れば、簡単に三澤は体勢を崩し、俺の腕の中に倒れこんだ。

「インタビューだけじゃなくて、もっと俺に会いに来いよ、三澤」
「へ!? へ、ちょっ、」
「俺から会いに行きたいが、岩佐と藤原が邪魔するからな」

 胸元に捕まえたままの三澤を見れば、どうやら酷く混乱しているようで酸欠の金魚みたいに口をパクパクと動かしていた。

「アンタ! 何言ってんですか!?」
「ん? 何が?」
「何がって! だって、意味が」
「分からないって?」

 近い距離で俺を見上げる顔を片手で固定して、三澤の頬に親指を滑らせる。

「ただ俺は、『三澤の事が好きだ』って言ってんの」

 三澤の前髪を掻き揚げて、丸出しになった額にキスをする。唇が離れた途端に三澤は額に手を当てて、口を戦慄かせた。

「なっ、なっ」
「俺はお前が好きなんだよ、何か悪いか?」

 もう一度今度は頬にキスを落とそうとすれば…

「わっ、悪いに決まってんだろぉ!?」

 生徒会室中に響く華麗な音を立てて、俺は右頬にビンタを喰らうことになった。





「か、会長様! その頬、どうなさったんですか!?」
「ん? あぁ、これな」

 爆発しそうな程に赤くなった三澤の顔を思い出せば。

「ま、愛のムチ…ってやつかな」

 ジンジンと響くその痛みにも、自然と口角は上がってしまうのだった。


おわり☆


番外編2



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