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「#エロ」のBL小説を読む
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※モブの喘ぎあり



「は? “昨年の文化祭経費の資料をもとに、今年分の概算経費を求めよ”?」

『あっあっあっあぁあっ』

「つか、昨年の資料て何処にあんだよ」

『あぁんっ、あっあっ、』

「げ、もしかして資料庫じゃね? 資料庫って校舎別じゃ『ひぁあんっああぁあん!!』」

「…………………」


 信じられない話だが、新聞部であるはずの俺は今、生徒会室にいる。そして机には役員共の仕事が散乱しており、それを手に何故か俺が頭を抱えてるって訳だ。
 そんな中、先ほどから耳障りな雑音が仮眠室からガンガン漏れ出て、俺の仕事の邪魔をしてくれてる訳なのだが…。

『あっぁああっ! ぁんっ、あん!』
「っるせーーーッ!!」

 ――ドガンッ!!

 やっぱ、ここはキレるところでしょう。


 ◇


 ふぅ、と髪をかきあげながら、楢崎会長が俺の隣に腰を下ろした。
 好青年タイプの正統派美形が少しシャツを肌蹴させている姿ってのは、チャラ男やホスト系の美形よりも色気が有ると思うのは俺だけだろうか。
 確かにこの威力は凄い。ま、ノーマルで美形嫌いな俺には全く効果無しだけど。

「アンタさ、俺に言いましたよね? インタビューを受ける時間は無いって」

 それがどうなの?
 アンアンアンアン、盛りの付いた猫みたいに喘ぎやがって。腰振る時間は有って、インタビュー受ける時間は無いってか?

「喘いでるのは俺じゃ無いけどな」
「喘がせてんのはアンタだろ!」

 何そのドヤ顔! ウザい!!
 もう本当イヤ。
 何でこんな事になった訳…?

 先週末のパーティで会長に言われた通り、学園に戻るなり部長が「もう記事は書けそう?」と聞いてきた。
 ボケっとしてた俺が「いや、全然進んで無いっす」とさらりと言うと、次の瞬間部長からドス黒い何かが流れ出して来た。あれは本当にホラーだった。
 慌てて会長の密着取材を取り付けたと部長から言い逃れした事で、俺は会長から逃げられなくなったのだ…。

「へぇ、お前意外と仕事早いのな」
「ふん、アンタ達がアンアンしてる間に済ませたんですよっ」

 今日で手伝いを始めて四日目となるが、確かにこの人は大変そうだった。
 教室どころか寮へ戻る暇もなく、この生徒会室に住み込み状態で仕事をしている。その事に気付いたのは手伝いを始めた二日目の夜、忘れ物を取りに来た時だった。
 先に帰れと言われ、言葉通りに帰った俺は会長も後に帰っているものだと信じて疑っていなかった。日付もとっくに変わった寝る間際になって、漸く携帯を忘れたことに気付き取りに戻ると、生徒会室にはまだ煌々と電気が付いていたのだ。
 悔しいがその時、俺は少しだけ会長を尊敬した。の、だが…。

「頼むから俺の居ない時にやって下さいよぉ、人の性癖をとやかく言うつもりは有りませ…ぎゃっ!?」

 くどくどと説教をする俺の顔をじっと見ていたかと思うと、なぜか徐に会長が俺のアレをスラックスの上から撫でたのだ。

「ちょっと! どこ触ってんですか!?」
「いや、本当に反応して無いな…と思って」
「はぁあっ!?」

 何この人!! バカなんじゃないの!? 何で俺がここでおッ勃ててなきゃならんのさ!

「あれだけチワワを喘がせると、他の奴ならもうガッチガチに勃ててるからさ」

 他の奴って何だよ! あんた露出狂かよ! 俺は変な動きをする会長の手を払い睨みつけた。

「冗談も程々に。言いましたよね、俺は“ド”のつくノーマルだって。男の喘ぎ声聞いて勃つ訳無いでしょうが」

 どれだけ女顔で可愛くても俺と同じ物付けた男だし、大体がこの部屋を出てく時に必ず彼奴ら般若みたいな顔して俺を睨むんだ。可愛げなど有ったものじゃない。

「さっきなんか、また無駄に不細工って罵られたんですからね。いい加減にして欲しいっスよ」

 そうだよ、仕事さぼって転校生の尻を追いかけてる役員共の代わりに働いてるっつーのに。取り入っただの、鏡見て出直してこいだの言いたい放題言いやがって。

「不細工…ねぇ」
「自分の顔の出来には自覚あるから、別に改めて教えてくれなくて良いですよ」
「そうじゃなくて。俺は別に、お前のこと不細工とか思わねんだけどな」
「は?」

 そしたら急に会長が俺の顎を掴み上を向かせ、強制的に目を合わせられる。因みに、まだ会長のシャツは肌蹴たまま。情事後のせいでフェロモンもだだ漏れだ。

「シュッと筆を走らせた様な瞳に、丸い曲線を描いた鼻、小ぶりの唇がいつか見た日本の美人画の様で」

 イケメンお色気ボイスで誘うように囁く。が、

「……それ、単に糸目に団子っ鼻におちょぼ口ってバカにしてるだけじゃねぇか!!」

 俺が激怒すると、会長はまた声を上げて笑った。チッ、やっぱり揶揄ってやがったこのクソイケメンめ!!

「さてと、仕事するか」

 会長は肌蹴ていたシャツを直し立ち上がり、生徒会室の鍵を閉めた。はちゃめちゃな転校生と、その取り巻き達、そして親衛隊の侵入を防ぐ為だ。
 そして自身の机に戻り進行途中だったであろう書類を手に取ると、黒縁のシンプルな眼鏡をかけた。
 きっとその眼鏡姿は、この部屋で共に仕事をした者しか知らないものなのだろうなと思い、早速メモに走り書く。案外こんな小さな情報を求めている奴らは多い。
 それから二日後に漸く書き上げた『会長密着24時』の第一弾。楢崎会長の私物暴露コーナーと、新聞部初の袋とじは予想以上の反響を呼んだ。



「おい、何だこれ」
「え、何すか?」

 会長の手の中には、開封済みの袋とじが。
 つい最近朝早くに生徒会室に向かうと、風呂に入った直後の会長が疲れて眠っていた。
しかも、全裸で。
 これはチャンスとばかりに、少々シーツを被せたりあれやこれや手を加えて、眠ったままの水も滴るいい男を激写。今回の袋とじにしたのだ。

「すげぇ好評でした。初めてチワワ達に褒められたッス。痛ぁあっ!」

 会長渾身の一撃、チョップを頭部に思い切り受けたが、俺は後悔していない。

「油断も隙もねぇ奴だな」
「側にいて情報収集して良いって言ったのは、会長ですからね!」

 はぁ、と額に手を当てた会長を見て、俺はなんだかとてもいい気分だった。会長に一泡吹かせてやったぜ的な。
 よし、お仕事頑張ろーっと。

「いつかブチ犯す」
「え? なに?」
「……何でもねぇよ」
「ふーん?」


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