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「#エロ」のBL小説を読む
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※男前美形×美形嫌い平凡



「会長っ! 今のお気持ちはどーですか!?」
「ぎゃーー! 何このブサイク!」
「会長様に近づくなぁー!!」

 折角あまり生徒会室から出てこない会長を発見したと言うのに、周りの護衛、そう、会長の親衛隊が煩くて取材が出来ない。

「もうっ、あんたらに用は無いんだよ! 会長、是非一言コメントをぉ〜!! って痛ぁあ!」

 俺は親衛隊から思い切り平手打ちを食らった。

「楢崎会長様は唯でさえ忙しいんだから、邪魔しないでよ! ブサイク!」
「そうだよっ、このブサイク!」

 不細工は今関係無いだろ、とか、不細工くらい漢字で言えよ、とか。言いたいことは山程あるのだが、いかんせん奴らの声は超音波並に耳に来る。
 耳を塞いでやり過ごすことに気を取られていれば、いつの間にか会長達は俺の前を通り過ぎていた。
 ちぇっ、と去りゆく集団の中で後ろ姿すら一際目立つ男を見つめていれば、その男が歩みを止めずに一瞬振り返る。そしてその目は明らかに俺を見据え、ふっと嘲笑したのだ。

「うっぜぇー!」

 俺はそのまま何事も無かった様に去っていく背中に、ペッ!と唾を吐く勢いで床を蹴った。


 ◇


 俺がこの『黄銅学園』何て言うふざけた名前の学園に通うことになったのは、今でも父のせいだと思っている。
 俺の父は気が弱い。
 アレでも大企業のトップではあるのだが、その功績は母の広い顔と敏腕サポートがあってこそなのだ。そんな母に父は頭が上がらず、家の中もかかあ天下。
 そんな中で育った姉、俺、妹は、残念ながら思い切り影響を受けてしまい…きょうだいの中でも男である俺の肩身は狭く、あの姉妹の言いなりだ。
 そんな姉妹は何時の間に道を逸れたのか、気づいたら腐っていた。

 そう、所謂腐女子だ。

 残念ながら俺の顔は誰もが認める平凡……いや、ちょっと不細工で。
 姉も妹も俺自身に萌えを求める事は諦めているようだった。だが、奴らの萌えへの執着は凄まじく、学園へ俺を送り込むことで生々しいBLとやらを覗き見することにしたらしいのだ。

 実家から遠すぎる上に全寮制と言うことも有り、さすがに両親が止めてくれるかとも思ったのだが…母は一切反対しなかった。何故ならこの学園は文句無しの名門校だから。
 父も反対しなかった。何故なら母が反対しなかったから。

 止めてくれよオヤジ!
 哀れんだ目で俺を見るんじゃねぇよ!!
 真っ白なハンカチで涙を拭うなよ!!!
 全部全部、元を正せばアンタが気弱なのが悪いんだぞッ!?

 まぁ、そんなこんなであっという間にホモの巣窟であるこの学園に放り込まれたのが一年程前のこと。
 俺はこんな容姿だが一応後ろ盾(実家)が大きいという事もあって、虐めに合うことなくホモに狙われる何てこともないまま、割と平和に過ごした一年間。だが、

「あ、おかえり三澤。会長の取材はどうだった?」
「どーもこーも無いですよ! あーうっざ。部長…お願いだから俺を会長担当から外して下さいよぉ」

 部室にある自分の席にどさりと腰を下ろすと、部長が苦笑しながらお茶を出してくれた。

「あざっス」

 それなりに平和だったこの学園に、数週間ほど前転校生がやってきた。
 その所謂“王道転校生”とやらのおかげで、あっという間に平和は崩れ、学園内が混沌と化した。
 通称『美形ホイホイ』と呼ばれる王道転校生は、当然生徒会の役員達も襲撃し、残念ながら会長以外がホイホイされた。
 そんなところから、「一人で頑張ってる会長様の特集を組んでくれー!」何て言う生徒たちからの要望が多数届いたことによって、今回のプロジェクト『会長密着24時〜楢崎会長様の素顔に迫る〜』なんてものが始動したのだった。
 チッ、くだらねー。

「そんな事言わないで一緒に頑張ろ? こんな時こその新聞部。そうでしょう?」

 疲れ切った俺の顔を覗き込む岩佐部長の微笑みに俺は溜め息をついた。
 この人も相当なイケメンで、姉達には影で『ゆるふわ王子』と呼ばれている。
 部長の凄いところは、黄銅(王道)学園に生息する『チワワ』という受け専門の生き物の他に、タチなる部類の輩からも絶大な支持を受けているということだ。
 新聞部が定期的に行うアンケートから発表されるおかしなランキングには、ダブルスコアで名を連ねる訳だ。
 彼がひとつ微笑めば、あの会長の周りに群がる煩い親衛隊どもだって簡単に頬を染める。なんつー節操の無い奴らだ、と想像しただけで不愉快になった。

「いやいや、部長が行けば一発でしょうよ、あのチワワ共も」

 それこそ会長もイケるんじゃね? 的な俺の言葉に、岩佐さんがふんわり笑った。

「僕が行って変な噂が立っても嫌でしょう? その分君なら何かある心配もないし、打ってつけだと思うんだけどな」
「………」

 そう、彼がゆるふわしてるのは見た目だけで、正直相当腹黒い(し、性格悪い)。
 まぁ確かに先輩が行って会長に襲われたらアレだし、俺が行くのが無難なのは分かっている。
 実際可愛らしめの部員たちは、すでに会長に食い散らかされているのだから。(そして色々煙に巻かれた…)

「先ずは取っ付きからだね。取り敢えず何でも良いから、会長の記事を書いてくれる?」
「ちぇーーっ!」

 分かりましたよっ、と頬をぷうっと膨らまして拗ねると、岩佐さんが俺の膨らんだ頬を突いて笑った。

「頼りにしてるよ? 三澤」





『迫る!! 楢崎会長の歪んで乱れた生徒会室事情!!』


「うん、却下」

 俺が腹いせに作った記事は、僅か数秒で部長にスクラップされた。


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